またしても辛口


 悪いけど、言葉を商売にしている人への私の評価は辛いよ。

 2003年5月30日発売の週刊ファミ通に掲載された、FF11の記事。その1コラムでライターの一人、ででお氏が発言したのが以下の内容。


井手  今回の記事は、ででおがよろこんで語りそうな内容ですな。
ででお そんなことないですよ!いつもいいパーティーに恵まれて幸せですよ!
      批判なんてないっす!
太田  いつも俺にグチ言ってこないっけ?パーティー組ながら。
ででお 違うって!ただ、回復しない赤とかが多くて最悪って思うくらいですよ。
     赤だけかな最悪は。
太田  赤なめんな!赤はオールマイティなジョブなんだよ!
井手  でも、なんでもできるがゆえに、なにしていいかわからずに、見当違い
     の行動をし始める赤って、わりと多いよなぁ・・・。
ででお っていうか、そういう赤しか見たことないです。いままで。
太田  え?俺がいるじゃん。
ででお は!なに言ってんの?
太田  ・・・
井手  あと、ナイトなのに山串を食いまくる奴も多いね。ナイトはアタッカー
     じゃないっつーの。
太田  いますねぇ。このまえ組んだナイト、連携時にバーサクしてセラフブレ−ドですよ?
     盾役がなんで防御下げるの!しかも意味無いし。
ででお あと、カー君(カーバンクル)しか使えない召喚士多すぎ。召喚士育て
     たいなら、他の召喚獣もしっかり取っておけっつーの。
井手  でも、レベル30になったばかりで召喚士になった人に、他の召喚獣
     れっていうのは酷だよね?
太田  たしかにキツイですねぇ。
ででお そういう奴らは、サーチコメントに、「カー君しか使えないのでケアル
      タンクになります」とでも書け。

井手  うわひでえ。そこまで言うか。
ででお 俺は、ちゃんと使える召喚獣をサーチコメントに書いてますよ。
太田  ただの自慢野朗じゃんか。
ででお 違うって!
井手  いや、それはいいから、早く俺の経験値戻し手伝ってよ。
ででお えー。獣はソロが強くてパーティー組む気しないんですよ。
井手  そうじゃなくて!手伝うって言ったじゃん!あれウソか!
ででお ウソじゃないですよ!じゃあ付き合いますよシーフで!
太田  なに逆ギレしてんだ。ででお。
ででお あ、でもそのまえに、ウィンダスのミッション手伝ってもらっていい
     ですかね?それ終わったらレベル上げやりましょうよウヒヒ。
(*1)


 もう7年近く前の話になるんだけど、このコラム記事のたった一言のせいでファミ通FF11のプレイヤーたち(特にネットで情報収集をしているプレイヤー)からの信頼を失い、ライターへの評価や人気の面ではずっと電撃旅団の後塵を拝してきた。(*2)ヴァナディールで出会う人で、電撃旅団については親近感を持って話す人たちでも、ファミ通を褒める人は滅多にいない。


 で、先日発売された雑誌のででお氏へのインタビュー記事(抜粋)がこれだ。


──突然ですが、「赤だけかな最悪は」について
●あの原稿を書いたのは俺じゃなくて当時の担当ライターなんですよ。
マズイとは思ったんですが、チェックをスルーして記事にしちゃったので、
言い訳になりませんけどね。
ちなみにβテスト時代の「早くケアルしろよ」発言もほかの人が書いてます。
リアルで俺がボヤいてたのをそのまま原稿にしちゃったようです。

──話題に挙がった情報リークは?
●それができたら毎週記事作るのに苦労しません(笑)
情報リーク疑惑について、よく堀ブナが例に挙げられるけど、
当時最後に残ったクエストを消化したかっただけですよ。
太公望は手に入れたけど釣りスキル10台だし。
最近だと破軍を売ったこととかも挙げられてるみたいだけど、
LSで定期的に行ってたアットワENMの戦利品を分配するためです。
掲示板で一部の人たちがバージョンアップのたびに反応しまくるので、
とあるバージョンアップのときに石つぶてを買い占めまくったこともあります。
俺にとってたまたま都合のいい展開になったときだけを例に挙げて、
「またDedeoか」的なことを言われるのはなんだかな……という感じです。


 アンタ、仮にもIT業界のはしくれの雑誌ライターの癖に、舌禍とかフレーミングって言葉を知らんのか…?


 発言自体の真偽を置いておくとしても、この程度の言い訳してる時点で、雑誌ライターの資格はともかく才能はないと思う。
 ちなみに自分で言い訳にならないって書いてるけどホントにこれだけ言い訳になってない言い訳は生まれて初めて見た。チェック通してるんなら他の誰でもなくアンタの記事だよ。

 当時、私は赤魔道士からナイトに転職を考えていた頃だったので直接的な被害は(一番酷い人に比べれば)少なかったが、赤魔道士や召喚士を続けている友達にはことあるごとに愚痴られたものだ。


 「大手雑誌のライターが無責任なことを紙面で書いたせいで誘われない」と。


 「そんなつもりじゃなかったんです」という言葉すら言い訳にならないのに「リアルでボヤいてたのを記事にされた」って、言い訳どころか事実を追認してるに等しい。
 いや、愚痴の内容そのものは責めを負うべきではないと思う。ネットゲームをやってるならこれぐらいの愚痴は口にすることがあってもおかしくはない。(*3)
 だからといって、それを雑誌の紙面に載せるのは事情が違う。「お前達だってこれぐらい愚痴ることあるだろ?」という彼への擁護はまったくあたらない。

 後段のコメントもひどい。ででお氏は「李下に冠を正さず」という言葉を知らないのだろうか? 仮にも雑誌編集者として、仕事でゲームをやっているにもかかわらず、疑いを招くような行為をしたことに後ろめたさはないのだろうか?(*4)

 報道被害、という言葉がある。実例を挙げるまでもなく、言葉を武器とするものは、それ相応のリスクを負う。

 私のように日のアクセス数が100にも行かない程度の零細ブログを細々と書いていたって、自分の記事に対してドギツイ反論を食らってコメント欄を閉じざるを得なくなるのだ。ましてやででお氏は何万部も売れる、ゲーム業界では一番売れている大手雑誌のライターだ。記事を書いて…つまり言葉を商売にしている人間だ。そういう立場の人間が口にしていいことと悪いことがある。

 人の命が関わるわけじゃなし、お金が関わるわけじゃなし、目くじら立てるほどのことじゃない。
 確かにそうだ。これがオフラインゲームの記事ならそれで終わりだろう。
 しかしFF11はオンラインゲームだ。オンラインで他者と繋がっているゲームであり、雑誌編集者の一言で何千人という人間が、ゲーム内での行動を変えてしまう。それは「とばっちり」を受ける人間が少なからずいることを意味するのだ。

 たかが趣味、されど趣味。

 彼の不用意な発言(このコラム記事は文責記事じゃないし、名前を出している人間が責任を負うのが相応だろう。原稿料もらってるんでしょ?)のせいで、少なくとも数百人の人間が、ゲーム内で数十時間、あるいはそれに倍する時間を無為に過ごす羽目になったのは間違いない。

 その記事に対する、7年後の言い訳がこれ? 自分の言葉を数万数十万の人間が読んでいる、目にしている、影響力を持っているのだという自覚はないのか?

 覆水盆に返らず。口にした言葉は決して消えない。だから私は、彼が謝罪するべきであるとは思わない。また、記事を見る限り、彼が謝罪なんぞする気がこれっぽっちも、微塵も、欠片もないことは一目瞭然だ。(*5)

 彼がやるべきことは、一切その話題には触れないこと。もちろん反論や言い訳もしないこと。
 フレーミングへの対応としては、初歩も初歩だ。

 それをせず、7年越しで鎮火しかけた(*6)話題にガソリンをぶっ掛けるわけ?

 また、これを記事として掲載する編集部も編集部だ。これはあれか、エンターブレインとしては、ででお氏にはFF14のライターをやらせるつもりは微塵もない、という意思表示なんだろうか?


 それなら万々歳だが。


 これが富野氏や押井氏のようなクリエイターであれば、多少癖のある性格でも素晴らしい作品を作ってくれればそれでいいのだが…性格の悪いライターの書いた記事は読んでいて辛い。人格というのは書いた文章から滲み出る。正直、彼は14の記事は手がけて欲しくないライターだと改めて思った次第である。


(*1)、(*3)
 (*3)では「このくらいの愚痴はしょうがない」と書いたけど、実際よく考えるとこれもひどい。「見当違いのこと始める赤って多いよなあ」を始め、プレイヤーの戦術に関する文句が当該記事内に散見されるが、一日中FF11ばっかりやっている雑誌ライターと違って、普通のプレイヤーはまだ動き方や戦術を試行錯誤している最中だったのだ。そこで「回復しない赤は見当違い」「ナイトは攻撃するな」とバッサリ切り捨てるようなやり方が、後々FF11での「効率一辺倒、非効率的なプレイスタイルやロールプレイ重視のプレイスタイルは一切排除」という寒い風潮に繋がっていったのだと私は考えている。14はそうなって欲しくない。なお、本文中の強調は私が入れたもの。後で問題になったのはこの2箇所のフレーズであった。


(*2)電撃旅団のいるサーバとファミ通編集部の攻略メンバーがいるサーバの在籍人数を比べてみればよくわかる。電撃がいるからオーディンに行く、というプレイヤーは相当数いた。ファミ通については聞いたことがない。


(*4)ちなみに、彼の行動は疑いを招くというレベルを越えた、限りなく黒に近いグレーである。ネットの情報収集力を甘く見てはいけない。


(*5)あえて抜粋はしていないが、彼を弾劾する少なからぬ数のプレイヤーが接触を試みてきた時、敵にやられるのを見て嘲笑っていたと読み取れるインタビューのやり取りがある。むしろ彼のこれまでの行動を見る限り、接触を図ってきたプレイヤーを意図的に敵に攻撃させて排除した可能性も捨てきれない。また、抜粋文中の「反応する人たちがいるので」「石つぶてを買った」というのも、明らかに相手への嫌がらせであることが読み取れ、彼の性格をよく表していると言える。また、自分が大手雑誌紙面上で赤魔道士を取り上げて叩いておきながら、自分が叩かれたら「なんだかなぁ」と書けるその神経も凄い。


(*6)7年も鎮火しなかったのは、彼がその後も疑いを招くような行動を定期的に取り続けたからである。