“汚職警官”レンズの「革命」


 トーキョーNOVAは自由と背徳の街なんかではない。ブラックハウンドは日本の機関としてずっと前からNOVAにあった──そう、NOVAは最初から日本に支配されていたのだ。ただ──その支配が巧妙に隠されていたというだけで。
 トーキョーNOVAの「革命」が凄かったのは、これが単に背景世界の設定のみならず、ゲームシステムまでもが同じ思想に貫かれているところだ。
 登場判定、フェイズプロセッションルールなど、レヴォリューションから追加された新ルールの数々は、それまで影も形もなかったルールではなく、熟練者や上手いGMは無意識に使っていたテクニックだった。それをルールという目に見える形にしたのが革命だった。

 本質的に変わっていないなら同じ?
 ……そうではない。

 形にすること、目に見えることに意味があるのだ。現に日本の支配が表に見える形になったことで、誰もがそれを意識し、シナリオが作りやすくなったというのは、前に「帝国」を題材にしたエントリで述べた通りである。ルールの革命も同じことだ。それまで暗黙の了解だった部分を暗でも黙でもないルールとして明示した結果、プレイヤーが皆それを意識するようになった。効果は絶大だったのである。

 閑話休題。支離滅裂で意味不明なことをしたレンズはどうなったか? クーデターを起こして失敗したのだ、普通なら闇に葬られたと思うだろう。ところがなんと、彼はNOVAの最高支配者、つまり司政官として戻ってきたのだ!
 今回の記事の中で九条政次が「正直、爆笑した」といっているが、それはプレイヤーも同じだ。正直爆笑した。結局、レンズもまた本質的には何かが変わったわけではないのだろう。彼はツクダ版の頃から権勢欲や権力欲の強い欲望の権化で、ただそれを隠していたにすぎなかったのだ。

 実際、プレイしてみるとわかるのだが、稲垣光平を「胸に秘められた目的を持つ孤高の人」としてシナリオをハンドリングするより「いぎたなくて権力欲の強い、わかりやすい悪漢」としてハンドリングする方が遥かに面白いシナリオができる。つまり、稲垣光平に秘密の目的があってもプレイヤーもルーラーも誰も得をしないのだ。稲垣光平という悪漢は実に便利で動かしやすくて、ルーラーから見るとロールプレイのしやすい素材だ。隠された真の目的なんてどこにもないからこそ、この面白さが成立する。

 ついつい昔話が長くなってしまったが、私のこのわかりにくいエントリなどより、今回の記事はもっとずっと簡潔に、そして中立的な立場からレンズこと稲垣光平という人物について解説を加えている。トーキョーNOVAの司政官に興味がある人には必見の記事である。


 ……そりゃカゲムシャいるよな、クロマクだもの!