巨星墜つ

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 長くはないだろうと言われていたが、こんなに早いとは。

 今まで私のエントリを追ってきた人はご存知かもしれないが、私は「アップル薄氷の500日」というギル・アメリオの著作を読んでから、スティーブ・ジョブスの人柄ややり方を積極的に肯定はしてこなかった。彼はワンマンで強引で、アップルという会社のためなら何でもする人物だったと私は思っている。

 しかし、ジョブスは天才だった。常人にはないセンスがあった。
 ジョブスの才能は唯一無二のもの。一度どん底を見たアップルを復活させたのは、間違いなく彼の功績だ。
 トーマス・アルバ・エジソンのように「発明」を売ったのではなく、ジョブスは彼の「作品」を売ったのだ。iPod、iPhone、iPad、いやMacも含めて全てが彼の「作品」であり、一人の人間が生み出したこれだけ沢山の作品を、世界中の人間が使い続けるという例は他に思い当たらない。

 私は、アップルの価値が真に問われるのは「ジョブスが引退した後」だろうと思っていた。しかし彼はゲイツのように引退して自分の生み出したものを見守る機会に恵まれることなく去ってしまった。引退するのが遅すぎたのか、それとも亡くなるのが早すぎたのか。おそらく後者なのだろう。
 ジョブスはアップルそのものだった。これからのアップルがどうなるのか──それは、誰にもわからない。

 ただ、世界は今日、偉大な才能を一つ失った。そのことだけは、間違いない。