新旧ペア対決


 昭和メドレー4のダーティペアOP単品である。先日メドレーのエントリの時に触れたように、今回はダーティペアについてちょっと書きたいと思う。


ダーティペア(Wikipedia)


 実は、かなり前にダーティペアの項目を見た時にはFLASHについてほとんど触れられていなかった。それがダーティペアについて書こうと思った動機の一つだったのだが、今回エントリを書くに当たって再確認したところ、現時点のバージョンではかなり詳しく説明されている。ざっと読んだ限り説明としてはこれで十分な気もするが、一点だけ事実誤認がある。重箱の隅つつきであることは十分承知の上だが訂正しておこう。
 

・ユリは「ノーランディアの謎」以外でもブラッディカードを使用している(「謀略の005便」で敵の人工衛星に侵入するシーン)。


 まとめると、いわゆるダーティペアはTV版、劇場版、OVA版があり、恐らく挙げた順に知名度が高い。ただ「謀略の005便」までの作品は、基本的な設定は同じである。
 その後、1994年に設定を一新して作られたのがダーティペアFLASHだ。キャラクターデザインが変更され、キャストも頓宮さんと島津さんから松本さんと国府田さんに変更されている。他にビジュアル的な違いでいうと、無印ペアは普段からあのコスチュームを着ているのだが、FLASHペアはいつもはあくまでも普段着で、戦闘などの非常時に専用のコスチュームに「変身」する点、ユリの武器が剣に変わっている点などが異なっている。


 左が無印ペア、右がFLASHペア。


    


 しかし、最大の違いはユリとケイの関係だろう。昔ログアウト誌のアニメコラムでもFLASHについて書かれたことがあり、そこでは「無印とFLASHの一番の違いはユリとケイがお互いを信頼しあっているかどうかだ」と述べられていた。これはまさにその通りで、恐らく無印を見た人が初めてFLASHを見ると二人のドライさに驚くはずだ。
 これは、高千穂氏が小説版FLASHの後書きに書いていたことを要約すると「無印ダーティペアの設定はもう古いから絵も設定も現代風に翻案した」ということになる。FLASHペアの関係は「あくまでも仕事上の付き合い」であって、無印ペアにある友情のようなものは(少なくとも表立っては)感じられない。
 さらにOVAの第1シリーズにはもう一つ仕掛けがしてある。ウィキペディアの記述を引用しよう。

シリーズ1作目、『FLASH』において「先代のラブリーエンジェル(モーリ、アイリス)」が登場。名前こそ異なるものの、前作のダーティペアを彷彿とさせるデザインとなっている。


 モーリはトラコン「ラブリーエンゼル」の1人だったが、捜査の途中で相棒を失いダークサイドに堕ち、犯罪結社「ルーシファ」に雇われたという設定だ。だから私も最初OVAを見た時「もしかしてこの“モーリ”と名乗ってるのが無印の“ユリ”か?」*1と思った(ちなみに声優は土井さんで島津さんではない)。
 しかし、最終的には「デザインを彷彿とさせる」レベルに過ぎず、モーリはあっさり味方に寝返る上に特段何の設定も明かされない。第1シリーズ最終エピソードの拍子抜け感は相当なものだ。無関係なら無関係で最初から全然違うデザインにされていたらそんな期待もしなかったのだが……。*2
 その後、第2シリーズと第3シリーズは先代ペアのエピソードはまったく出てこないままに終わる。もっとも第2シリーズは別の見所があり、「スペースオペラ作品でありながら舞台が現代日本を再現したテーマパーク」という設定で、どう見ても現代日本ダーティペアが暴れているようにしか見えないという、色々な意味で凄い作品だった。

 そしてご存知の方も多いと思うが、高千穂氏は「ダーティペアの大復活」で無印ペアを復活させる。残念なことにこの時点でFLASHペアは「公式で黒歴史」になることがほぼ確定してしまったのだ。設定を現代風に一新したシリーズの続きでなく、古い設定のシリーズの続きを書いたということは、とりもなおさず「設定を一新したのは失敗だった」と認めたということになるからだ。
 実際、冒頭の「ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット」を見ても、FLASHに言及するコメントはほとんど見られない。ファンからも原作者自身からもなかったことにされてしまったシリーズ、それがFLASHだ。
 私自身は、もう一工夫、あるいはもうちょっと(旧作ファンの論議を呼ぶという)覚悟があれば面白い作品になっただろうと思うだけに、黒歴史扱いは惜しいというか、残念な気持ちだ。ダーティペアは私のアニメ好きの原点に近い作品だし、「ソルビアンカ」や「バブルガムクライシス」のように、リメイク作品で旧作品の伏線を解決したり、物語を広げたりしてくれた例もあっただけになおさらである。*3

*1:ケイではなくユリだと思った理由は、外見が銀のロングへアだったから。しかし銃の名手という設定なのでその点はケイに近い。

*2:逆に言えば、これでもし無印ペアの片方が死に、1人が犯罪結社に身を投じていたことが確定する展開だったら、FLASHはある意味で神作品になれたはずだ。ナデシコのTV版と劇場版の関係のように。

*3:しかし、ウィキペディアを見るとわかるが「本当の黒歴史」は堀江さんがユリ、皆川さんがケイを演じたラジオドラマシリーズだろう。どうして映像化しなかったのだろう?