簡易戦闘ルールの追加……だと……

ソード・ワールド2.0 ルールブックI 改訂版 (富士見ドラゴンブック)

ソード・ワールド2.0 ルールブックI 改訂版 (富士見ドラゴンブック)


ソードワールドで簡易戦闘ルール」というキーワードを耳にし、嫌な予感がしたのは私だけではあるまい。旧版の簡易戦闘は全然簡易でもなんでもなく、誤射のルールなど整理されたとは思えない状態で詰めこまれていた印象があったからだ。

 で、2.0のそれはどうかというと、旧版とは違ってそれほど悪くないルールだった。ただし、使用に際しては条件をつけた上で、だが。

 大前提として、ルールブックには「簡易戦闘に慣れたら標準戦闘ルールで」という意味合いのことが書かれているが、これは絶対にやめた方がよい。SW2.0にはリビルドルールがないので、習得した特技が不要になったり、逆に不要だった特技がいきなり必須になったりする可能性があるからだ。
 特に、簡易戦闘では乱戦エリアが一つしか存在しないため、脇をすり抜けたり背後から不意をつかれたりする可能性がない(挟み討ちも起こり得ないルールである)。標準戦闘ルールでもイニシアティブば重要だが、簡易戦闘ではその重要度はさらに高くなる。先攻側が敵味方の乱戦エリアに何人を置くかが設定可能であるためだ。つまり後攻にされると、敵の人数配置によっては後衛が前衛位置にきてしまう可能性がある(分かりやすい例でいえば、ボガード1、コボルト9という敵がいた場合、先手を取られると最悪5人のPCが前衛に引きずり出される)。
 しかし、一端後衛に配置されてしまえば、前衛が壊滅しない限り敵の飛び道具か魔法(それも「鷹の目」がほぼ必須)以外では攻撃されることがないため、標準ルールに比べると「後衛が攻撃を受ける可能性が低い」といえる。
 また、ざっと見た限り、簡易戦闘ルールを使う限りファイターやシューターが有利で、フェンサーやグラップラーが比較的不利になるように見えた。どういうことかというと、旧ルールや標準戦闘ルールであれば、例えばボス+雑魚という組み合わせで敵が出てきた場合、位置によっては乱戦エリアを複数とすることで「装甲の薄い前衛」でも「雑魚を掃討する」という役割を担うことができた。しかし簡易戦闘ルールでは乱戦エリアが一つしか形成されないため、前衛で乱戦エリアにいる以上必ずボスの攻撃を被弾する可能性があるということになる。これは位置取りなどで頭を捻る余地がなくなるということでもある。
 そして、いったんエリアが形成されてしまうと、相手の前衛が残っている限り遠距離攻撃以外では後衛に攻撃ができないため、シューターが重要になる。恐らくパーティに最低1人はいないと、後衛に蛮族の魔術師とかを配置されると詰む可能性がある。


 いずれにしても、簡易戦闘ルールと標準戦闘ルールでは戦闘における優先順位やバランスがまったく異なる。それは、どっちが初心者向けとかどっちが上級者向けとか、そういうレベルの問題ではない。そのため、同じキャラクターを使用する同じキャンペーンであれば、簡易戦闘を使うか標準戦闘を使うかは最初に決め、終了まで変更するべきではないと私は思う。