半年前の補足

スタイルを貫く/依頼を断る話


 これを読んで。
 前に「依頼を必ず受けなければならないか」の話を書いた時に、項目を一つ完全に挙げるのを忘れていたことに気づいた。
 それこそまさにやにおさんが挙げている「条件や報酬や背後関係が問題ではなく、PCの内面的理由(女は殺さない、男からの依頼は受けない、など)によって依頼を受けない場合」の話。


 この話をする前に、一つだけ言い訳をさせてほしい。私は恐らく、TRPGに関しては運がよく恵まれた人間で、鳥取でもコンベンションでもこの手の「PCのポリシーに従って依頼を受けない」プレイヤーに出会った回数が少なかった(皆無、ではない)。加えて、私が安心してコンベンション巡りをするようになったのはブレカナ以降、つまりハンドアウト制が浸透してきてからだったため、GMとして悩まされることはほとんどなかった。逆に自分がプレイヤーをする場合、前にブレカナの100の質問の時にも書いたように、私はほとんど依頼を断ることがない。


 皆無ではない、と書いたとおり、この手の「シナリオに関係なく自分のポリシーを貫く」PCに悩まされたことは、数少ないがないわけではない。*1なかでも記憶に残っているのは、とある大学のコンベンションに行った時のことである。
 その頃の私は、半端に経験を積んで半端に自信を持っていたために、事前に手を打った──つもりが、とんでもない落とし穴に嵌まってしまった。


 そのコンベンションは、互いに顔見知りの参加者が多いなか、私の知り合いは数人という、いわばアウェーグラウンドだった。私がルーラーを務めるテーブルで、とあるプレイヤーが「持ち込みキャストを使いたい」と言い出した。今の私なら恐らく断る*2だろうが、なぜか当時の私は上手く捌けるという自信に満ちていて、持込を許可した。ただ、さすがに何かが囁いたのだろう。事前に一つだけ確認をした。*3
「そのキャストには何かポリシーのようなものはありますか?」そのプレイヤーは答えた。「俺のキャストは男性からの依頼は受けません」私は内心安堵しつつ、依頼人の性別を男性ゲストの予定から女性ゲストに変更し、これで対処は終わったものと安心しきっていた。

 ところが、始まってみたらそれどころではなかった。そのキャストのポリシーは正確に言えば「女性からの依頼しか引き受けず、しかも依頼人のことを100%信用し決して疑うことなく、たとえ他のキャストを敵に回してでも庇おうとする」というものだったのだ。
 もうオチが読めたかもしれないが、そのシナリオは「依頼人が実は真犯人」というシナリオだった。私としては何とかして真犯人への手がかりを見つけてもらい真相に迫ってもらいたかったのだが、他のプレイヤーが依頼人を疑おうとするとこのキャストが神業を含め全能力を使って妨害。しかも悪いことに、このキャスト自身が探偵(フェイト)という、真相に迫るために必要不可欠な能力の持ち主だった。
 必然、他のメンバーだけではシナリオの全容を暴くことはできず、シナリオはバッドエンド。ただ断っておくと、これはプレイヤーが悪いのではなく、対処を間違えたルーラーである私の責任である。なので、結末も悲劇的なものにはしなかった。


 そんな経験をしていたためか、前のエントリを読み返すと、依頼を断ろうとするプレイヤーに対して警戒心の露わな内容になっているな、と自分でも思う。とはいえ、実はハンドアウトのないゲームで「PCのポリシー」を理由にされると、有効な対応手段があまりない。逆に言えばそれに対処するためというのも、ハンドアウトが導入された理由の一つだろうと私は思っているのだが。

*1:ただし、前にも書いたが「プレイヤーがGMに対して悪意を持っていない」ことを大前提とする。

*2:持ち込まれるキャストの背後関係が分からないから。

*3:当時はまだ「開始前にPCの自己紹介をせよ」とルールブックには書かれていない時代だった。