昨日と一昨日の続きの話

トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント オルタナティヴサイト

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 今日もまた「コモン」の話である。すまないが、もう少々お付き合いいただきたい。


 もう一度、メタな視点に戻って話をしよう。
 トーキョーN◎VAというゲームにとって、このタイミングで「コモン」というスタイルを追加することに、いったいどういう意味があるのか。

トーキョーNOVAは初心者向けか

 突然だが、トーキョーNOVAは初心者向けのタイトルだろうか。それともある程度慣れた人向けのタイトルだろうか。

 どちらかといえば後者だろう。NOVAの熱狂的ファンを自認する私であっても、いくらなんでもNOVAを初心者向けだとまでは言えない。では、その理由は何か。それは、一昨日少し触れた内容に関係がある。
 トーキョーNOVAの「キャスト」とはどういう存在か。ブレカナダブルクロスアルシャードのように、PCは「特定の存在」ではない。しかし、持っている能力からすると「その道のプロフェッショナル」ではありそうだ。
 つまりNOVAでは、初心者*1であっても「プロ」であることを要求される(場面がある)のだ。プロとしての能力を持ち、プロとしてシナリオの導入を経ていれば、それも致し方ない。NOVAはレベル制のゲームではないから「駆け出しの冒険者」的な立場は存在せず、キャストとして作成した瞬間、既に一流の腕を持つ存在と見なされる。
 しかし、NOVAという場所に踏み込むのが初めてのプレイヤーに、プロとして振る舞えというのはいかにも厳しい。しかも、タイトルとしてはそれなりに歴史があるため、蓄積された設定や「お約束」も多い。いきなりそれらを踏まえて行動しろというのは無理がある。
 もし「NOVAは初心者には敷居が高い」と思われているのだとすれば、その辺りが理由だろう。

 そういったプレイヤーに対して、熟練のルーラーはこれまで個々に対応してきた。例えば中村やにおさんは、日記に「初心者やNOVAに慣れていないプレイヤーが来ることを想定したコンベンションで、そういったプレイヤーをPC1として推奨スタイルをハイランダーにする」というテクニックを紹介しているハイランダーは記憶喪失、かつ自分の持つ力に無自覚で良いため、無理にプロとして振る舞う必要のないスタイルだからだ。
 とはいえ、それはあくまでも「今手持ちにあるもので何とかするとしたら」というテクニックだ。動かしやすいとはいえ、ハイランダーというスタイル自体には「軌道人である」という背景設定があり、それを前提に行動する必要があるのは変わらない。


 ここまで言えばもうお分かりだろう。「コモン」はその高い敷居を、一気に低くすることができるスタイルなのだ。
 プレイヤーが初心者? NOVAのことを何も知らない? OK、では「コモン」を選ぼう。

新たなスタイル「コモン」は何故見出されたのか

 「コモン」は他の全てのスタイルと異なる視点を持つ。それは「NOVAのことをよく知らない普通の人」という、初心者プレイヤーと同じ視点である。
 “隣を歩いているアブなそうな人が、いきなり呪文を唱えて悪魔を呼び出した?”“腕から生えた刀で、エレベーターを真っ二つにした?”
 「なんてとんでもない連中なんだ!」──とは、今までのスタイルを持つキャストでは言えなかった。なぜなら、彼らはその筋のプロであり、表社会にも裏社会にも通じる存在だったからだ。彼らにとってそれは見慣れた光景、当たり前のことに過ぎない。
 プレイヤーが「NOVAのキャストはこんな無茶苦茶なことができるのか!」と思ったとしても、その心情はキャストの心情とはリンクしなかった。これまでは。


 「コモン」は違う。コモンは一般人だ。プレイヤーが「そんなことできるの!?」と思ったのなら、キャストの台詞として思う存分口にしていい。彼らは何も知らないからだ。
 「そんなこと知るか! こっちは一介の善良な市民なんだぞ!」と、いくらでも言える。「コモン」なら。


 つまり、「コモン」とは、NOVAのことを知らないプレイヤーとシンクロできるスタイル。初心者プレイヤーに自信を持ってお勧めできるスタイルである。
 なぜなら、そんな「コモン」にも──いや「コモン」だからこそ活躍できるシーンが約束されているからだ。彼らもれっきとした「神業」を持った存在なのだ。だからルールブックで、わざわざ紙面を割いて「コモンでも活躍のチャンスは他のキャストと同等にある」と明記されているのである。


 鈴吹社長はガイドブックで、今回のNOVAは歴代で一番売れたと言っていた。
 だからこそ、初心者に向けて門戸を広げる必要性を感じたのだろう。その答えが「コモン」というわけだ。 
 世界の「闇」を知り、日常を打破するこれまでのスタイルと、「闇」を知らず、日常に回帰する新たなスタイル。極論してしまえば、「コモン」の追加によって、NOVAは2倍の広さに広がったのだ。


 興奮のあまり、無粋なことまで書いてしまった。NOVAのデザイナーの方たちなら、革命の時と同じく、きっとこう言うだろう。
「実際にプレイしてみれば、わかるよ」と。

*1:なお、言うまでもないことですが、本エントリに「初心者」を否定的に捉える意図は全くありません。「たまたまNOVAに触れる機会が全くなかった人」と考えてください。