トーキョーN◎VA THE AXLERATION サプリメント オルタナティヴサイト
- 出版社/メーカー: ファーイースト・アミューズメント・リサーチ
- 発売日: 2017/09/08
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログ (7件) を見る
今日もまた「コモン」の話である。すまないが、もう少々お付き合いいただきたい。
もう一度、メタな視点に戻って話をしよう。
トーキョーN◎VAというゲームにとって、このタイミングで「コモン」というスタイルを追加することに、いったいどういう意味があるのか。
トーキョーNOVAは初心者向けか
突然だが、トーキョーNOVAは初心者向けのタイトルだろうか。それともある程度慣れた人向けのタイトルだろうか。
どちらかといえば後者だろう。NOVAの熱狂的ファンを自認する私であっても、いくらなんでもNOVAを初心者向けだとまでは言えない。では、その理由は何か。それは、一昨日少し触れた内容に関係がある。
トーキョーNOVAの「キャスト」とはどういう存在か。ブレカナやダブルクロス、アルシャードのように、PCは「特定の存在」ではない。しかし、持っている能力からすると「その道のプロフェッショナル」ではありそうだ。
つまりNOVAでは、初心者*1であっても「プロ」であることを要求される(場面がある)のだ。プロとしての能力を持ち、プロとしてシナリオの導入を経ていれば、それも致し方ない。NOVAはレベル制のゲームではないから「駆け出しの冒険者」的な立場は存在せず、キャストとして作成した瞬間、既に一流の腕を持つ存在と見なされる。
しかし、NOVAという場所に踏み込むのが初めてのプレイヤーに、プロとして振る舞えというのはいかにも厳しい。しかも、タイトルとしてはそれなりに歴史があるため、蓄積された設定や「お約束」も多い。いきなりそれらを踏まえて行動しろというのは無理がある。
もし「NOVAは初心者には敷居が高い」と思われているのだとすれば、その辺りが理由だろう。
そういったプレイヤーに対して、熟練のルーラーはこれまで個々に対応してきた。例えば中村やにおさんは、日記に「初心者やNOVAに慣れていないプレイヤーが来ることを想定したコンベンションで、そういったプレイヤーをPC1として推奨スタイルをハイランダーにする」というテクニックを紹介している。ハイランダーは記憶喪失、かつ自分の持つ力に無自覚で良いため、無理にプロとして振る舞う必要のないスタイルだからだ。
とはいえ、それはあくまでも「今手持ちにあるもので何とかするとしたら」というテクニックだ。動かしやすいとはいえ、ハイランダーというスタイル自体には「軌道人である」という背景設定があり、それを前提に行動する必要があるのは変わらない。
ここまで言えばもうお分かりだろう。「コモン」はその高い敷居を、一気に低くすることができるスタイルなのだ。
プレイヤーが初心者? NOVAのことを何も知らない? OK、では「コモン」を選ぼう。
新たなスタイル「コモン」は何故見出されたのか
「コモン」は他の全てのスタイルと異なる視点を持つ。それは「NOVAのことをよく知らない普通の人」という、初心者プレイヤーと同じ視点である。
“隣を歩いているアブなそうな人が、いきなり呪文を唱えて悪魔を呼び出した?”“腕から生えた刀で、エレベーターを真っ二つにした?”
「なんてとんでもない連中なんだ!」──とは、今までのスタイルを持つキャストでは言えなかった。なぜなら、彼らはその筋のプロであり、表社会にも裏社会にも通じる存在だったからだ。彼らにとってそれは見慣れた光景、当たり前のことに過ぎない。
プレイヤーが「NOVAのキャストはこんな無茶苦茶なことができるのか!」と思ったとしても、その心情はキャストの心情とはリンクしなかった。これまでは。
「コモン」は違う。コモンは一般人だ。プレイヤーが「そんなことできるの!?」と思ったのなら、キャストの台詞として思う存分口にしていい。彼らは何も知らないからだ。
「そんなこと知るか! こっちは一介の善良な市民なんだぞ!」と、いくらでも言える。「コモン」なら。
つまり、「コモン」とは、NOVAのことを知らないプレイヤーとシンクロできるスタイル。初心者プレイヤーに自信を持ってお勧めできるスタイルである。
なぜなら、そんな「コモン」にも──いや「コモン」だからこそ活躍できるシーンが約束されているからだ。彼らもれっきとした「神業」を持った存在なのだ。だからルールブックで、わざわざ紙面を割いて「コモンでも活躍のチャンスは他のキャストと同等にある」と明記されているのである。
鈴吹社長はガイドブックで、今回のNOVAは歴代で一番売れたと言っていた。
だからこそ、初心者に向けて門戸を広げる必要性を感じたのだろう。その答えが「コモン」というわけだ。
世界の「闇」を知り、日常を打破するこれまでのスタイルと、「闇」を知らず、日常に回帰する新たなスタイル。極論してしまえば、「コモン」の追加によって、NOVAは2倍の広さに広がったのだ。
興奮のあまり、無粋なことまで書いてしまった。NOVAのデザイナーの方たちなら、革命の時と同じく、きっとこう言うだろう。
「実際にプレイしてみれば、わかるよ」と。
*1:なお、言うまでもないことですが、本エントリに「初心者」を否定的に捉える意図は全くありません。「たまたまNOVAに触れる機会が全くなかった人」と考えてください。