やるなら最後まで貫くべき


 プロジェクトフェアリーのgdgdな顛末を知っている身としては「やるなら裏切った(?)キャラも最後まで悪役に徹するべき」という印象かなぁ。「おにぎりで裏切った」「いつの間にか765プロに所属してた」とかホント何がしたかったのって感じだったし。今の貴音と響も嫌いじゃないけど、二人は敵だった時が一番輝いてた……と、今も思っている。
 しかし、部と同好会が対立するなんて、究極超人あーる(写真部と光画部だけど)の頃からある使い古されたネタをよく使ったな……。

ロートルの独り言の続き

・「ナイトメア」では情報項目の目標値は一つだが、「NOVA」では段階的に設定されている。


 実は、今回一番思うところがあったのがこれ。これについては、具体例なしではわかりにくいので、架空のセッションの例を上げつつ説明したい。

【最近ストリートで、中毒性、依存性、致死率の高い、強い幻覚症状を持つ『Awekening』というドラッグが流行している。このドラッグの流通を仕切っているのが、カーライル・シンジケートのハインリッヒというレッガー(ヤクザ)らしい。】


 という状況を設定してみる。キャスト②(推奨スタイル:レッガー)にシナリオコネクション『ハインリッヒ』が与えられているとする。

 リサーチ第1シーン、キャスト②はハインリッヒを調べようとする。ルーラーは、このように説明する。

「情報項目『ハインリッヒ』は、<社会:ストリート>、<社会:N◎VA>、<社会:警察>、<コネ:ハインリッヒ>で目標値10、制御値、21、あと『何か』です」。


 ルーラーとしての私の意図をメタ視点から説明すると以下のようになる。


目標値10・これは、ルーラーとしては「プレイヤーがまともに成功させようと思うなら、簡単にわかる目標値」として設定している。トーキョーN◎VAのキャストの能力値は、スタイル1枚につき7、3枚で21、ボーナスが1で合計22、能力値4つの平均は4.5である。もちろん、技能のスート(マーク)が合っている必要はあるが、3つの社会技能とコネのスートを分散してあれば、どれかのスートで6以上のカードを持っていれば成功できる。カードを捨てようという意図でない限り、成功は難しくないはずだ。
 ここでわかるのは、事前情報のとおり「『Awekening』の流通をハインリッヒが仕切っていること」と「ハインリッヒは、かつてドラッグの売買を毛嫌いしていた」という情報である。


制御値・これがいくつの数値になるかは、キャストが出すカードのスートによって異なる。ゲストの制御値はスートごとに異なるからだ。私のプレイグループでは、この目標値は「プレイヤーが目の色を変える」目標値だった。なぜなら「目標値=制御値」は、ハウスレギュレーションで「敵対する可能性のあるゲストの2枚目のスタイルのヒントとなる情報」だったからである。これは、次のようなルール解釈に基づく。
 敵ゲストのスタイルの情報を、事前にどれだけプレイヤーに開示するかはルーラーのレギュレーションによって異なるだろうが、ルールの記述に基づけばはっきりしていることが二つある。「表に出ている『ペルソナ』を偽装するには特殊技能(Xの「特技」)が必要」「すべてのスタイルを見破るには特殊技能が必要」である。
 前者はカゲの<無面目>やアヤカシの<人化>がそれにあたる。偽装するには特殊技能が必要、ということは、ルールの優位性(神業→特殊技能→一般技能)に基づけば、一般技能ではペルソナを隠せない、ということだ。つまり普通に情報収集をすればペルソナのスタイルは判明するということである。
 逆に、後者はフェイトに<スタイル感知>という、ゲストのスタイルを見破る特殊技能が存在する。ということは、最低でも特殊技能なしでは3枚のスタイル全てを見破ることは不可能だ、ということを意味する。
 この二つに基づき、私は「リサーチフェイズの情報収集で2枚目のスタイルのヒントまでは出してよい」と解釈した。
 ハインリッヒはペルソナがレッガー。2枚目のスタイルのヒント、つまり制御値を抜いてわかるのは「ハインリッヒはカーライル・シンジケートのマーダー・インクに所属しており、銃の名手として知られている(カブトワリ)」という情報である。*1


目標値21・ここは賛否あると思う。初心者キャストの場合、A以外ではほぼ成功せず、目標値として高すぎるという意見もあるだろう。
 実は、ここでわかるのは「ハインリッヒには難病に罹ったロザリンドという養女がいる」という情報である。*2このロザリンドはフェイト(探偵)であるキャスト①のシナリオコネクションである。なので、このシーンで無理に調べなくても、キャスト①と情報を共有していけば、ロザリンド絡みでいずれ開示される情報だ(キャスト①とキャスト②もシナリオコネクションを持っている)。
 ルーラー視点でいうと、この「目標値21」は、半端にリサーチの中盤で調べる項目に設定すると、プレイヤーに「何が何でも抜かないとシナリオが解決しない」と思われる可能性が高い。むしろ開幕に設定してしまえば「そのうち情報収集の得意なキャストと合流したら改めて調べ直そう」と思ってもらえる。


『何か』・実はこれが最大の問題である。段階式目標値を設定しない場合、これをどのようにプレイヤーに知らせるかが大きな課題になる。『何か』とはすなわち『神業』だ。
 先程のルールの優位性の記述に基づくと、神業は神業以外では対抗できない。このため「神業で隠匿されている情報」は「神業でしか開示できない」。
 しかし、プレイヤー視点だと「神業が使われていることすら知らされない」状況では、これを無効化するために神業を使おうという発想にすら至らない。当然だが、神業はそれくらい重要なリソースなのだ。ルーラー視点で「神業はすべてのルールに優先するので、対抗する神業が使われない限り一切ヒントも出さない」としてしまうと、高確率でリサーチが詰む。その意味では「リサーチを妨害する神業」つまり<完全偽装(アンダカヴァ)>や<天罰(ネメシス)><M&A><不可触(アンタッチャブル)>などの神業の扱いは、使われたことがすぐわかり、打ち消し系神業さえあれば無効化できる即死系神業より厄介かもしれない。情報そのものは神業が使われない限り開示できないが、それが神業を使って隠されていることは何らかの形でプレイヤーに知らせる必要がある。
 このため、Rを始めた初期の頃は、ゲストが無理やり登場してルーラーシーンで神業を使うシーンだけを演出したりしていたが、名前も知らない、何物かもわからないゲストがオープニングに出てきて神業だけ使って退場、はやはり無理があるし、大きく取り扱いの変わる神業も出てきてしまう。カブキの神業<チャイ>である。
 <チャイ>は目の前で使用された神業の効果を無効化できる。このため、ルーラーシーンのつもりで演出したのを無理やり登場して神業を無効化しようとしたりされると、展開が非常に苦しくなる。これに対抗してその場で即死系神業を……などとやっていくと進行がグダグダになりかねない。なので、こういった妨害系の神業は「アクト開始前にいつの間にか使用されている」ことにすることが多くなった。となるとやはり、ヒントが必要だ。
 情報収集項目に対する『何か』とは、すなわち『神業が使われている』ことのヒントである。もちろん、それを知ったからといってリサーチの早い段階でこれを破ろうとする必要は(ルーラーから見れば)ない。むしろこれを破るとクライマックスフェイズのトリガーが入るシナリオが多いので、他のプレイヤーと合流し、情報交換するまで待ってほしいところである。


 例示したシナリオの場合、仮にキャスト②が万能系神業など妨害系神業を破る能力を持っていて、使おうとした場合はこう言う。「この『何か』は他の情報収集項目の特定の情報が手に入るまでは破れません」。具体的には情報収集項目『Awekening』の目標値21・「ドラッグ『Awekening』は、特定の適性を持つ人間が使用すると、幻覚作用が発症したまま肉体能力が異常強化された『人造兵士』を生み出すという特殊な作用を持つ」である。
 この項目を開示した上で、シナリオ上の黒幕が使用した<完全偽装(アンダカヴァ)>に対し、ハインリッヒに<真実(トゥルース)>などを使用して無効化すると「『Awekening』はイワサキの軍需部門が開発した『人造兵器製造計画』の一環で生み出されたドラッグであり、市場で適性を持つ者を発見するための実験を行っている。ハインリッヒは養女ロザリンドを難病の治療の名目で人質に取られ、協力させられている」という情報が開示されるという流れである。*3*4


 話が長くなったが、もし情報収集項目に多段階の目標値を設定しない/できないとすると、どうやって神業のヒントを出すのかが非常に悩ましい。そしてその他の項目についても「ハインリッヒの能力」とか「ハインリッヒと『Awekening』の関係」とか、項目を細分化していかないと情報収集ができなくなる。これらの情報は、提示しないことにはシナリオが成立しないからだ。
 これらを解決する手段が見つからない限り、私は多段階目標値はやめないだろうな、というのが正直なところである。

*1:なお、ここで制御値と21をコールする順番を逆にすると、プレイヤーの阿鼻叫喚が見れる。敵ゲストの制御値が21を超えている──クライマックスでAを出しても敵に攻撃が通らないことを意味するからだ。

*2:余談だが、もしキャスト①が女性フェイトだった場合、ロザリンドがレッガーで、難病に罹っているのはハインリッヒという少年になり、スタイルや年齢や設定が逆転する。

*3:この神業を無効化しないままハインリッヒに手を出すとカーライル・シンジケートが敵に回り、キースやクーゲルが襲ってくるという展開になる。もちろん(勝ったとしても)バッドエンドである。逆にいえば、ヒントを出さないとバッドエンドがプレイヤーではなくルーラーの責任になる。

*4:プレイヤー人数が少ない場合はロザリンドは神業のみを使うエキストラ扱いで、キャストの神業を<ファイト!>で増やしてくれる。プレイヤー人数が多い場合はロザリンドは『Awekening』の適正者のひとりであり、“洗脳”されてハインリッヒと同様敵ゲストとして登場する。ただし、ロザリンドを治癒する神業があれば二人とも敵ゲストととしては無力化できるという設定。