リナとナーガに見える


 この表紙だと、確かにリッキーとキングでありつつもリナとナーガに見えるな……。

闇のコロコロ少年(1)

 これまでこのコロコロ少年のエントリは、自分にとって懐かしさを感じたり、ちょっと切ない思い出だったり、どちらかというとポジティブな内容を書いてきたが、今回のこの「闇のコロコロ少年」のエントリは、自分にとってもできれば思い出したくない、辛い思い出がメインになる。もちろんそんな思い出がそういくつもあるわけではないけれども。

 第1回目は「シャドウラン」だ。



 最初に断っておくが、これは私がたまたまこのゲームとの巡り合わせが良くなかったというだけで、ゲームそのものに問題があると言っているわけではない。例えば私の好きなゲームでも、巡り合わせが悪ければ、今回私が書いたのと似たような印象を受けた人もいるだろう。タイトルの問題ではなく、あくまでも私自身の個人的な体験記である。
 しかし、念のため折り畳んでおく。シャドウランに関するネガティブな記事を読みたくない方はブラウザバックしてほしい。














 前にも書いたことがあるが、私は昔サイバーパンクRPGをコレクションしていたことがある。ただ、集めていたというだけでプレイ経験は不足していた。その後私は、仲間内であるいはコンベンションで、トーキョーNOVAとかを死ぬほどプレイていくことになるわけだけれども、当初はサイバーパンクRPGというものはどういうものか、当然わかっていなかった。
 そんな時、新宿のイエローサブマリンに置かれていたチラシに「とある大学の学園祭で新入生歓迎会コンベンションを行う」と書かれていた。しかもそこでシャドウランをやるという。私はその大学の学生ではなかったが、学外からのメンバーも歓迎と書かれていたので、是非一度プレイしてみたいと参加した。
 チラシには「必ずしもシャドウランができるとは限らない」と書かれていたものの、幸いシャドウランの卓に入ることができた。プレイヤーは他にあと二人、全員が初心者だった。当然ルールブックを持っているのはゲームマスターだけである。



 最初に気になったのは時間だ。学園祭なので、当然学園祭が終わるまでしかセッションができない。集合が午後だったから、午後1時から午後5時ぐらいまで、つまりキャラクター作成も合わせて4時間しかない。
 時間が限られることと、初心者でキャラクター作成の仕方がそもそも分からないというのもあり、3人のプレイヤーは全員サンプルキャラクターを使用した。一人がストリートサムライ、もう一人がフォーマー・カンパニーマン。そして私がバーンアウトメイジである。スタンダードであればストリートメイジを選ぶところだろうが、ちょっと捻ってみたかった。

 この組み合わせを見て、GMは開口一番に言った。
「本当にこれでいいんですか?」
 プレイヤーたちは全員、この発言の意図を掴みかねた。何しろ初めてやるゲームだったから、コンストラクションで一からキャラクターを作るのはハードルが高い。3人の選択のうち二つは(当時すでに発売済みだったかどうか覚えていないけれども)リプレイの組み合わせと同じ。つまりそれほど気をてらった組み合わせではないはずだった。
 GMはそれ以上説明をせず、セッションは開始された。このゲームでフィクサーにあたるミスタージョンソンが持ってきた依頼は「ヤクザのボスから依頼を受けろ、依頼内容はボスから説明がある」というものだった。プレイヤーの一人はヤクザからの依頼ということに難色を示したが、GMは「サイバーパンクRPGというものはそういうもので、悪人からの依頼を受けないなどというのはプロのランナーではない」という説明をしたから、納得して依頼を受けることになった。

 ヤクザ・ボスの屋敷で依頼を受けるようにと言われたため、屋敷に直接向かったが、そこで依頼人であるボスに話を聞きに行こうとしたところでGMはこう言った。
「裏を取らなくていいんですか?」
 ちなみにこの時、ミスタージョンソンのところで依頼を受けてから、ヤクザ・ボスの屋敷に向かうまでの間には一切インターバルがない。つまり、屋敷へ向かう前に情報収集というのは不可能だった。GMが聞いてきたのが「屋敷に入った時点」だというのが重要なポイントだ。
 プレイヤーたちは全員初心者だったので「なるほど、こういう場面では裏を取るものなのか」と思い、3人の中で一番そういった作業に慣れていそうなフォーマー・カンパニーマンが、ボスのところに行かず別行動を取り、情報を収集しようとした。ストリートサムライとバーンナウトメイジの二人は、ボスの所へ向かって依頼を受ける……と、そういう流れになった(なお、GMはこの間、特に何もサジェスチョンしていない)。
 ヤクザ・ボスとストリートサムライが依頼に関する話をしようとしたところで、邸内を探っていたフォーマー・カンパニーマンが仕掛けられていたトラップに引っかかり、隠密行動を取っていたのがバレてしまった。すると、ヤクザ・ボスと部下たちが一斉に銃を構え「勝手に邸内を探るとはどういうことだ、お前らは敵だな」と、彼らとの銃撃戦になった。
 このヤクザ・ボスは、ルールブックにデータが記載されたそれなりに強いNPCだったというのと、シャドウランのシステム上、トーキョーNOVAのようにトループの概念があるわけでもなく、純粋に数の暴力に晒されると対抗手段がない。ということで、3人は銃撃戦に負けて捕らえられ、薬漬けにされてヤクザの手駒にされてしまいました、というエンディングである。

 この展開には、正直プレイヤー全員が呆気に取られた。「サイバーパンクRPGってこういうものなのか」と。セッションの途中で、GMが通りがかった常連のプレイヤーらしき人と「今回もまた、依頼を受けるまで行かなかったよ」と笑い話をしていたのが、強く印象に残った。
 ここまでの流れを見れば分かると思うが、GMからの提案が全てミスディレクションになっていて、助言に従うとシナリオがバッドエンドになるセッションだった。
 ちなみに、GMがサンプルキャラクターを選んだ最初の時点で「これでいいのか」といっていたのは、主に私、つまりバーンナウトメイジに対してだった。どういうことかというと、サンプルキャラクターのバーンナウトメイジは行動スピードが遅すぎるのだ。「生来の魔力を犠牲にしてでもサイバーウェアをインプラントした」という設定にも関わらず、入れているサイバーウェアはそれほど有効なものではないから、実際の戦闘になると全然行動ができない。
 ヤクザと撃ち合いになった時も、1回も行動できないままだった。セッション後に、GMが「バーンアウトメイジをサンプルキャラクターのデータのまま使うなどあり得ない」と力説していた──繰り返すが、プレイヤーは全員初心者で、一からデータを作る時間も説明もなかったのだが。

後日談

 これだけでもインパクトがあるけれども、実はこの話には続きがある。

 ずっと後になって、全く別のコンベンションで仲良くなったプレイヤーと飲み会で雑談をしていたら、たまたまこのシナリオの話になった。驚いたことに、そのプレイヤーもこのシナリオをプレイしたことがあるという。
 その人は私よりも社交的な人で、GMと話してこのシナリオの裏話なども聞き出したらしい。するとなんと、このシナリオには「依頼を受けた後の展開がそもそも存在しない」というのだ。つまりこのシナリオは「依頼人からの依頼をわざと受けさせず、依頼人と戦闘させ、 PCを打ち負かして終わる」というのが想定通り、ということだ。
 依頼を受けた後が存在しないため、PCたちが戦闘で勝ったり、素直に依頼を受けてその先へ行く、という展開になるのはGMとしては困る。GMの誘導でバッドエンドになったように見えていたが、それは錯覚でもなんでもなかったわけだ。
 これを聞いて、私は二重の意味で驚愕した。このシナリオで楽しめるプレイヤーというのはなかなかいないだろう。実際、私と一緒にプレイした他のプレイヤー二人とは、帰り道に「全く楽しめなかった」という話をしたし、二度とそのサークルには顔を出さなかった。このシナリオをやって「サイバーパンクRPGって楽しいな」という感想を抱く人間はまずいないのではなかろうか。
 そしてもう一つ驚いたのが、そのプレイヤーがこのシナリオに参加したのが、私が参加した大学のサークルとは違う場所だったということだ。つまりこのシナリオは、何らかのコミュニティで共有されていたことになる。これはGMから見て「出来が良いから知り合いと共有して、また是非遊んでみたい」という類のシナリオにはどうしても思えなかったけれど……。

 不幸にして、これが私とシャドウランというゲームのファーストインプレッションということになる。ただこの後二度と遊ばなかったというわけではなく、この後にもプレイしたことがあるのだが──その時のことはまた日を改めたい。