これは途方に暮れるわ


 え、セリナ姫を助けた後ってこんな放置だったのか。ヴァイデスの存在すら匂わされないとは。
 これは私だったら、(エンディング後も動かせる)バグか何かかと思ってここで終了してしまうかも。

スタイルは実像を凌駕するか

jp.ign.com


 さて、昨日の続きである。何故私は、サイバーパンク2020ではなくトーキョーNOVAを遊んでいたのか。直接的にはキャラクタークラスの数は関係ない。前にも書いたように、ナイトシティが血生臭くて好みに合わなかったというのもあるが、一番大きかったのは「システムと世界観が合っていなかったから」だ。

 スタイル・オーバー・サブスタンス。「スタイルが実像を凌駕する」。記事にあるように、これがサイバーパンク2020のスローガンであり、その世界観はルールブックの随所に現れていた──世界設定のページには。しかし、ルールそのものには必ずしも反映されていなかった。

 今井、本間氏、レフリーは行動順を決めるダイスを振る。今井はソロの特殊技能もあって最初に行動する権利を得た。今井は攻撃判定のダイスを振り、パンチを命中させることに成功する


 ソロ(殺し屋、戦闘のプロ)には「コンバット・センス」という特殊技能がある。戦闘において行動順を決める際にボーナスがつく技能で、これがあることでソロは相手の機先を制して動ける。──逆にいえば、ソロには他のロールに対してこれ以外のアドバンテージがない。こういうと、「戦闘で先に動けるのは重要だろ!」と指摘を受けそうだ。確かに先に動けるのは重要だが、一つの条件が付く。それは「双方が同程度の武装をしていれば」という条件だ。
 もし、先日紹介したモーガン・ブラックハンドのセリフ──「肩にでっかいアサルトライフルを背負って歩いているヤツを見るたび思う。「バカが」とな。「私はソロ*1です、どうか撃って下さい」とネオンのホロサインを掲げているも同然ではないか」──のように、防弾チョッキとサブマシンガン武装してビズに向かったソロの前に、重アーマージャケットの上からメタルギアを着込み、サイバースキンを埋め込んだサイバーサイコが立ちはだかった場合、先手を取ったところでどうしようもない。一番ダメージの高い重サブマシンガンのダメージで最大値が出ても、メタルギアを貫通できない。ダメージを与えることはおろか、貫通効果すら与えられない。全弾叩き込んでもノーダメージである(通常弾の場合)。
 「そんなバランスの悪いシナリオ作らないだろう」……実はこれ、たかまぁ亭(JGCの前身)というイベントで、ゲームの紹介を兼ねた公式翻訳チームのセッションで実際に起きたことである。翻訳チームの一人(記事に登場しているのとは別人)がレフェリー、私はプレイヤーの一人だった。しかもルールブックに記載された(レフェリーズハンドブック71ページ)シナリオフックを使ったセッションである。
 ルール通りである以上、レフェリーの責任ではない。もちろん翻訳ミスでもないから翻訳チームのせいでもない。これがサイバーパンク2020というTRPGだ、ということだ。昔のリアル志向系ゲームにありがちな、リアリティを追求した結果、ルールブックのデータと目指したいセッションの方向性が著しく乖離するという現象である。GURPSで銃器が強すぎたり、シャドウランが「カッコいいセリフをしゃべった後、車のドアの陰に隠れないと死ぬ」ゲームだったのと同じだ。
 そして、この現象はこのシナリオだけの問題ではなく、ソロのデータだけの問題でもない。セッションをやっていると幾度も同じ問題にぶつかるのだ。

 スタイル・オーバー・サブスタンス──世界観はそう語るが、ルールブックのデータは「サブスタンス・オーバー・スタイル」──どんなにカッコつけても、クールなセリフを決めても、超音速で飛来する20ミリの劣化ウラン弾頭の前には無力だった。

 誤解のないように大事なことを付け加えておくと、恐らく、サイバーパンク2020がなければトーキョーN◎VAは存在しなかった。N◎VAの最初の公式リプレイ「振り向けば死」が、雑誌掲載時は2020のリプレイだったのは有名な話である。
 ただ、N◎VAは「スタイル・オーバー・サブスタンス」という2020と同じ理想を、より分かりやすく簡単に再現することを目指していた。その分かりやすさが、たまたま私の好みに合ったというだけだ。


 さて。いよいよ2077の発売が来週に迫った。現代のコンピュータRPGとなったサイバーパンク2077は一体どんなゲームになっているのか。他のプレイヤーが見ている訳でもないのに「スタイル・オーバー・サブスタンス」も何もないだろう。その逆もまた然り。ゲーム内での自分の遊び方、選んだデータが「スタイル」だ。すなわち「スタイル・アズ・サブスタンス」である。