コロコロ少年の思い出(28)「謎多き銃弾」


 この動画を見て、ずっと昔のことを思い出した。

 私は、銃器のことを勉強していたことがある。……いや、勉強というほど大袈裟なものではないか。情報収集していたことがある、といった方がいいかもしれない。多分、現在では考えられないような理由で、である。

 前にコロコロ少年のエントリで、自分のプレイグループにガンダム好きでミリタリー好きのプレイヤーがいた、と書いた。彼の意見を汲んで、現代兵器が登場するTRPGを遊ぼうとすると、一つ困ることがあった。ルールブックに掲載された装備のリストを見ても、それがどんなものだか、さっぱりわからないのだ。

 特に、あの頃酷いと思っていたのが、ガープス(基本ルール)とシャドウランである。どちらも装備リストに銃器の一覧があるが、チャートに1行載っているだけで、イラストはもちろん説明すら一文字もない。銃が身近にある(?)アメリカ人ならともかく、日本人が「エンフィールド」や「ファーガソン」と言われて実銃を思い浮かべられるだろうか? シャドウランは銃器の種別を記載してくれているところはよかったが、アレス・プレデターなどという架空の銃器と実在の延長線上にある銃器が混ざって登場するので、そこは辛かった。
 その点、メタルヘッドはイラストがふんだんに使われていたり、サイバーパンク2020は登場する兵器がカタログ式になっていたり、真・女神転生RPGは銃ごとにイラストや説明文があったりして、イメージを掴みやすくするような工夫がされていた。

資料はどこに?

 定番のセリフになってしまうが、当時はまだインターネットが存在しない。リアルな現代兵器が登場する、今でいうFPSのようなゲームもない。「ゲームで使う銃器を体系的に記述した初心者向けの本」なんて、あるはずもない。今それに近い書籍が存在するのは、FPSというジャンルのゲームが流行したからであって、その頃はミリタリー系の雑誌などを見ても、時事的な記事ばかりだった。
 当の友人に「ライトマシンガンってサブマシンガンの上位版?」などと聞いて、鼻で笑われたこともある。今なら笑った理由も理解できるが。
 私自身はどうしてもファンタジーRPGの感覚が抜けず「レベルが上がったらショートソードをロングソードに持ち替え、さらに威力を求めるなら盾を捨ててトゥハンドソード(グレートソード)に持ち替える」みたいな位置づけが、現代兵器にもあるのだろうと思い込んでいたのだ。

 色々な資料を調べたものの、元々銃が好きだったり思い入れがあったりしたわけではないので、なかなか頭に入らず、結局印象に残ったのは「マンガ」の資料だった。中でも影響を受けたのが「ガンスミス・キャッツ」と「ミスター・クリス」と「アップルシード・データブック」である。ただ、ガンスミス・キャッツは作品の性質上、ハンドガン以外の銃器がほぼ登場せず(あとはショットガン、対戦車ライフルとアサルトライフルがちょっと出たくらい?)、ミスター・クリスは作者の好みが色濃く出ていたので、一番参考になったのはアップルシード・データブックだった。


 
Mr.Clice 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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 そして出た結論は……冒頭の動画を見ればわかるとおり「現代兵器はその種類ごとに使われるシチュエーションが最適化されており、そこに優劣はない」というものだった。ハンドガンならハンドガン、アサルトライフルならアサルトライフルが最も適した状況、というのがある。つまり、RPG的な「レベルが上がるとより強い武器に持ち替えていく」という要素とは非常に相性が悪い。

 この辺りの問題があったためか、後発のTRPG(N◎VAなど)においては、武器を持ち替えることによって強くなるという要素はほぼ排除され、代わりに技能を習得していくことによって強くなっていくという形をとっている。同じ9mm弾の拳銃であっても、ただ撃つのと「貫きの矢」「必殺の矢」「黒羽の矢」の技能を使って撃つのとでは効果が違う、という扱いにするわけだ。リアリティはないが、ゲーム的には非常にわかりやすく明快で、ややこしい銃器の種類や名前を調べて覚える必要もなくなった。


 そんなわけで、私が銃器のことを調べる機会もなくなったが、ある時Youtubeのサジェスト検索に、冒頭の配信者の動画を見かけ、ふと気になって色々再生してみた。





 興味深かったのはこの辺。私が色々調べていた頃は「ハンドガンは既に完成されていてこれ以上進化の余地はない。アサルトライフルは今後ドイツ軍のG11のような“ケースレス&ブルバップ式”が主流になり、M16は時代遅れ」なんていう意見を目にしたが、蓋を開けてみれば正反対。ハンドガンは新しくなっていったのに、Ⅿ16はいまだ現役ときた。


 ちなみに、ずっと前にエンジェルビーツの銃器の描写についてボコボコに書いたことがあるが、それは上記のような経緯で銃器のことを調べたことがあったからだ。もっとも、それがなくても「拳銃とマシンガンが横一列に並んで、遮蔽も取らずに装弾数も反動も無視して弾を乱射」なんてシーンがあったら、あまりにも絵面がアホすぎてツッコんだかもしれないが……。

「私はソロです、どうか撃って下さい」

 私が好きな、サイバーパンク2020のルールブックに記載されたクオート(台詞)がある。

肩にでっかいアサルトライフルを背負って歩いているヤツを見るたび思う
バカが とな
私はソロ*1です どうか撃って下さいと
ネオンのホロサインを掲げているも同然ではないか
     ──モーガン・ブラックハンド


 これを目にして以来、私のキャスト(PC)の多くが、この言葉を座右の銘の一つにしている。メタルヘッドのように荒野でクリーチャーを撃ちまくるゲームならともかく、都市を舞台にしたサイバーパンク作品で、隠し持つこともできないような銃をこれ見よがしに持ち歩くのは、クールともスタイリッシュとは思えない。
 中でも私が使うことが多いのが、サブマシンガンである。ハンドガンではなくサブマシンガンを選ぶことが多いのは、こちらはいささか散文的な理由による。フルオート射撃はルール処理が難しく、リスクの割に強力に設定されているゲームが多いためだ(笑)。


【PS4】サイバーパンク2077

【PS4】サイバーパンク2077

  • 発売日: 2020/11/19
  • メディア: Video Game


 そして、いよいよ発売まで、あと一カ月か……。

*1:殺し屋のこと。