マイナスナンバー


 某所でNOVAに関する話題を探していたところ、このような趣旨の言霊を見つけた。

「トーキョーNOVAは世界を22のタロットで表現するゲームではないのか。マイナスナンバーの存在がおかしい。マイナスナンバーいらない」


 うーん……。NOVAを知ったのが「R」以降だったりするとこういう感覚なのかなぁ……。
 実は、トーキョーNOVAにおけるノーマルナンバースタイルとマイナスナンバースタイルには、初出時には大きな違いがあった。マイナスナンバーは「(基本的に)NOVAには存在しないスタイル(生き様)」を表していたからである。


 ちょっとマニアックな話だが、ニューロデッキは千早グループの初代総帥、千早俊之が古本屋の片隅で見つけたものであり、それを見つけて以降、彼は世界最大の企業グループの総帥としてサクセスロードを歩むことになったのだという。ルールブックには「ニューロデッキはNOVAに集う人々の性質を22種類に大別したもの」とある。つまり、本来はこの22種類だけでNOVAに暮らす人々は分類可能なはずなのだ。
 マイナスナンバースタイルの初出は2nd時代の「オーサカMOON」である。この作品は、NOVAを世界設定を共有していながら単独でプレイできるゲームであり、トーキョーNOVAのサプリメントではない、完全な別のゲームである。この作品の中で「MOONには存在するがNOVAには存在しない生き様(スタイル)」として、ヒルコ、アラシが追加された。
 それぞれ、ヒルコは「オーサカMOONを襲った小災厄と呼ばれるバイオ災害によって誕生した新人種」、アラシは「セトロードで物資の運送の警護にあたるウォーカー乗り」であり、少なくともこの時点では、小災厄もセトロードもないNOVAには「(生き方として)存在しない」はずのスタイルだったのだ。
 この時、微妙な位置にあったのが「カゲムシャ」である。カゲムシャの存在自体は1stエディションの頃からあったものの、独立したスタイルとしての扱いをされていなかった。クロマクの「腹心の部下」を持っているという特技の説明の中に「スタイルの一枚を『カゲムシャ』とし、クロマク本人にそっくりであるという特徴をつけてもよい」という意味の記述があるだけで、何らかの能力を持っているわけでも特殊技能を習得できるわけでもない。当然この頃には「カゲムシャのニューロデッキ」もなかった。
 オーサカMOONで「カゲムシャ」が一つのスタイルとして独立し、独自の能力を与えられ、キャストとしてプレイ可能になった。*1ニューロデッキが別々になったのもこの時である。言い換えると、オーサカMOONまでカゲムシャはNOVAを生きる者としてのアイデンティティを与えられていなかったともいえる。


 これらと完全に扱いが異なるのがアヤカシだ。アヤカシは「R」以後の「グランドクロス」で追加された。グランドクロスはNOVA・Rのサプリメントであり、アヤカシも含めたこれら4つのマイナスナンバースタイルについて「NOVAにはいない」とは書かれていない。*2
 NOVAにおいては版上げと同時に作品内の時間が進行しており、「オーサカMOON」発売時点ではNOVAに存在しなかったはずの生き様(スタイル)の人間が、時間の流れとともにNOVAに流入してきた、とも言える。*3

 その成り立ちからいって、NOVAに元々いなかったヒルコとアラシ。棲んではいたがその存在を秘匿していたカゲムシャとアヤカシ。これら4つのスタイルは、他の22枚のスタイルとは扱いが違って当たり前のスタイルなのだ。


 ただ、システム上の整合性やシンメトリカルな美しさを重視したいプレイヤー(私もそういう一面がないとはいえない)からすると「22のスタイルのうち4つだけにマイナスナンバーがあり、他の18枚に存在しないのは何故なのか?」と感じてしまうのもまた事実だ。そして、一時期私家ルールでオリジナルのマイナスナンバーを考えるのが流行ったりもした(オーサカMOONの記述が自作を推奨するかのような文章だったためもある)。


 今の私自身は、この4つのマイナスナンバーを削除して欲しいとは考えていない。特にアヤカシは私の大好きなスタイルであり、NOVAという世界の表現の幅を広げた素晴らしいスタイルだ。他には、あえていうならカゼとアラシは統合してもいいんじゃないかと思うくらいである(両方ともゲーム内で扱いづらく、別々のスタイルに分けることで神業の効果も分けなければならない。しかもその効果はどちらも微妙)。
 逆に考えて、もし10年の時間が経過した新しいNOVAということで新しいスタイルを増やすとするなら、ぜひ増やしてほしいのがニューロのマイナスナンバーでA.I.を表すスタイルである。*4
 というのも、版上げで既存のユーザーに対するキャッチーな要素を入れるのであれば、*5凡庸な私が思いつくのはスタイルの追加くらいしかないからなのだが……。


 なお、同じようにタロットカードでキャラクタークラス(アルカナ)を表現するゲームであるブレイドオブアルカナの場合、設定上「22人の使徒(≒神)」がタロットカードになっており、失われた神様が見つかったとか言わない限り今後新しいアルカナが増える可能性は低い。

*1:1stの時点ではカゲムシャでプレイするのは不可能だった。ヒルコやアラシ同様、キャストとして使うためのルールがなかったからだ。

*2:実際にはアヤカシ以外の3つは「カムイSTAR」で2nd用のルールが追加されているので、NOVAでプレイ可能になったのはグランドクロスが初めてではない。

*3:逆にアヤカシについては「遥か昔からNOVAにいたが今まで光が当たらなかっただけ」とコラムに書かれている。

*4:「D」ではA.I.はライフパスになっていて、特別な扱いにしなかったために表現の幅が増えたのも確かなのだが。

*5:ダブルクロスは版上げのたびにシンドロームが「発見」されることで増えていっている。バロール、モルフェウス、オルクス、そしてウロボロスはすべて追加シンドロームだ。