シティ・コレクション―ファンタジーRPGの街〈下〉 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)
- 作者: 安田均,グループSNE
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 1993/04
- メディア: 文庫
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昨日の続きである。
さて、シティコレクションの公衆浴場の項目には、公衆浴場をシナリオの舞台にする場合の注意点も書かれている。それは「武器も防具も持って入れない、無防備な場所」であるという点である。これは、プレイヤーにとってかなりストレスフルな状況である。同項目には参考文献としてソードワールドリプレイの「魔境の支配者」、ファイティングファンタジーリプレイ「タイタン再び」、同じくシナリオ集「謎かけ盗賊」が挙げられていたので全て再読してみた。
魔境の支配者とタイタン再びは両方山本氏の作品だ。やはり……(笑)。しかも前者では女性(PCとNPC)が入浴しているところを襲撃している。が、幸か不幸か、当該PC以外は入浴していない状況だったため、助けに入って難を逃れたというシーンだ。ちなみにこの前後を読む限り、アレクラストでは入浴の習慣があるどころか個人宅にすら入浴施設が備えてあってもおかしくなさそうだ。後者ではメタで「魔境の支配者で入浴中の女性を襲撃するシーンをやったから男風呂を襲った」的な述壊がある。ファイティングファンタジーは素手のハンディが比較的少ないゲームと記憶していたが、それでも素手かつ防具がないことで被ダメージの上昇、技術点の低下というペナルティを受け、PCの一人はボロボロにされている。
一番酷いのは「謎かけ盗賊」。海外物にありがちなデスイベントで、PCがシナリオの手がかりを求めて浴場に入ると、常連客たちが電気ウナギをけしかけてきて見世物にされるという内容である。要は闘技場の公衆浴場版だ。勝っても賞賛が得られるわけでもなく、ウナギがさらに追加されるだけ(逃げ出すか殺されるまで続く)という酷いイベントである(笑)。道理でシティコレクションにも「描写は参考になる」とは書かれているが内容が参考になるとは書かれていないわけだ。
上記のイベントはいずれも「無防備な風呂場で襲われる」というパターンだ。しかしこればっかりやってると、GMが風呂のシーンを演出しようとしただけでPLは警戒するだろうし、ゆっくり雰囲気を楽しむどころではない。
アリアンロッドリプレイ・レジェンドの4巻ではフレアとセレネの姉妹が風呂で水入らずで話すシーンがある(これを見る限りやっぱりエリンディルでも普通に入浴の習慣があるようだ)。この場合は、風呂は「部外者が入ってこず、安心して腹を割って話せる場所」というニュアンスで使われている。これも一つの演出だろう。また、アンサンブルにも似たようなシーンがある。こちらは混浴だが、意図するところは同じだ。ただ、いずれにしてもこれは商業リプレイゆえのサービス的な意味合いもあるだろうし、そういったシーンを嫌がるプレイヤーがいる可能性も考慮に入れ、合意が取れなければ避けるなどの配慮は必要だろう。
シティコレクションにも「公衆浴場は酒場に次ぐ情報交換の場」とまで記述されていながらほとんどプレイ中の実例がないのは、やはり「混浴にするか、男女片方がシーンに登場できないか」どちらかを強制されることになるからだろう。マンネリ化した描写にスパイスを加えるという意味ではよいが、取り扱いに気を使う要素でもある。
アリアンロッド・リプレイ・レジェンド(4) 貧乏姉妹の伝説 (富士見ドラゴン・ブック)
- 作者: 丹藤 武敏,F.E.A.R.,菊池 たけし,ヤトアキラ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
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アリアンロッド・リプレイ・アンサンブル (富士見ドラゴン・ブック)
- 作者: F.E.A.R.,久保田悠羅,丹藤武敏,菊池たけし,ヤトアキラ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/04/20
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またしても天羅の話
私自身の経験でいうと、風呂のシーンを描写した記憶があるゲームというと……またしても無印天羅になるわけだが(笑)。
前述の通り、公衆浴場は情報交換の場としては「酒場に次ぐ」位置であって、あえて公衆浴場を選ぶ理由がなければ酒場でいいじゃない、という話になる。逆に言えば、天羅には「風呂でなければならない」理由があったということだ。
天羅の花形アーキタイプ「サムライ」。このアーキタイプは自分の身体に陰陽師による「術式」を憑依させることで肉体能力を強化するという特徴を持っている。この時、珠(オウジュ)と呼ばれるアイテム(SWでいう魔晶石、アルシャードでいうシャードのようなもの)を体に埋め込むことで、発動時の消費霊力を減らすことができる。つまり、珠を埋めていればいるほど、より強力な式を仕込んでいる証になる。
誰かと酒場で会席する時に(酔った上での余興でもない限り)諸肌を晒す武人はいない。しかし、風呂なら双方が問答無用で裸になる。必然、珠のお披露目をするには絶好の機会だ。つまり、天羅で浴場でNPCと邂逅する場面は「こいつは強いサムライでPCのライバルキャラですよ、でもこのシーンではお互い丸腰だから襲ってきませんよ、思う存分台詞の応酬をしてくださいね」というシーンなわけだ。「花の慶次」で武人同士が風呂に入る場面があったが似たようなものかもしれない。ただ、天羅の場合は珠の数で露骨に「こいつ強いです」アピールができるので、単に体の傷や筋肉のつき方を見せるのとは違う、ゲーム的なヤバさをプレイヤーに感じ取ってもらえる。
なお、どちらのサムライも、相手が丸腰だからといって武器を隠し持って入り風呂場で襲い掛かったりはしない。そんなことをしてもカッコ悪いだけだからだ。天羅では、カッコ悪いことは命を失うことよりもあってはならないことなのだ。しかし風呂場が絶対安全というわけでもない。風呂場で丸腰の相手を闇に葬り去ることが様になるキャラも──例えばシノビのような──また、存在するからである。