今月のツッコミタイム

Role&Roll Vol.113

Role&Roll Vol.113


 さぁ、今月も「戦槌傭兵団」の時間がやってきたヨ!

 相変わらず参考文献からツッコミどころ満載なんだが……「図説不潔の歴史」って、そんなネタ実プレイに反映させて参加者が楽しめると思ってんの……?
 というわけで、今回は風呂の話題。という時点でもう世界史を知ってる人なら「あー」と思うだろうけど、ほぼその予想通りの内容。公衆浴場に言及してる前半はともかく、後半で「中世ヨーロッパで風呂に入る習慣がなくなった理由はペストとキリスト教」という結論に持っていくんだったら「ペストもキリスト教も存在しないファンタジー世界の住人は普通に風呂に入ってておかしくない」って理屈にならないか?
 グランクレストのルールブック2のプレイガイドにもあったけど、我々はTRPGのプレイヤーとしてあくまでも現代人であって、リアリティ()のためにわざわざ今の感覚で不愉快だったり倫理的に問題のある描写を採用する必要はない。「今回のキャンペーンはPCが普段風呂に入っていないことが重要な要素なんだ」というGM以外は、実プレイに無理に歴史上の事実を反映させない方がいいだろう。


 なお、今回の記事も両開き2ページで何百字も費やしている本文より、イラストレーターさんが半ページのスペースで描いているコラムの方が実プレイの役に立つ。

※ただし史実がどうあれ現在のゲーム内で混浴や裸でうろつく描写をされると不快感を覚える人も当然います。みんなが楽しめるよう充分に配慮しましょう

 この注意書きは明らかに本文に書かれるべきだろ!

あるのかないのか

 さて、実際にTRPGのワールドガイドの類で、風呂があるとかないとか言及されているゲームはあるのだろうか?
 手元にあった初代ブレカナRofGの「旅の心得」、混沌の渦の「旅」の章には、風呂の有無については言及されていない。これらのゲームは中世ヨーロッパにかなり近い世界観なので、風呂がない世界でもおかしくないかもしれない。ただ、病気や薬草に関する記述が詳細で恐らくペストも存在する混沌の渦の世界と、ペストらしき疫病の存在には一言も触れられたことのないブレカナとでは少々事情が異なるが。
 続けてソードワールド1stのワールドガイドを期待もなく(前にも書いたが食事の記述すらほとんどなかったので)パラパラとめくっていたら、なんと西部諸国ワールドガイドのザーンの設定のページに公衆浴場に関する記述があった。もちろんサービスカット付き。さすが山本氏、抜け目ない(笑)。ちなみに、この公衆浴場は男女別である。この項には入浴の習慣が特に風変わりな風習だとは書かれていないので、他の地域でも入浴の習慣そのものはある、とするのが自然だろう。逆に、同じフォーセリアでもクリスタニアだとなんとなく入浴の習慣はなさそうだが……(そもそも都市がほとんどない)。
 同じくSNEが出版した「シティコレクション」にも「公衆浴場」の章がある。これを先に読めばよかったと後悔したが、これには先述のザーンについてと、ファイティングファンタジーのポートブラックサンドにサウナが、ウォーハンマーにも温泉街がある旨の記述がある。加えて、先ほど書いたような「ファンタジーRPGは中世のシミュレーションではないからPCは風呂に入ってるという設定にしてなんら問題ない」という注意書きもある。この辺りはさすがというしかない。ただしこの浴場のシーンのイラストにはなぜかマンティコアが。ふざけるなーーー!(笑) なお、実プレイでの注意点も書かれているが、これについては後述する。
 また、アリアンロッドには「温泉の町」ルネスが登場し、その記述の中に「ヒューリンは綺麗好きであり体を洗うことを欠かさない」とある。ただし、その後には「湯を沸かすのは重労働なので主に水を使う」ともある。だから温泉が栄えているのだろう。

 古い本になるが、訳書である「RPGシティブック」という本にも、街の施設として「沐浴館」が紹介されている。シティコレクションにあるようにウォーハンマーファイティングファンタジーでも公衆浴場が存在するというのなら、洋の東西を問わず、(あえてそれを外した設定のPCを除き)自分のPCについては清潔であってほしいというのがプレイヤーの心情であり、また世界設定も史実と異なってよいのだ、と言えるだろう。