どこ見てたんだ

マッチョと巨乳の無能集団


 ちょっと前にも取り上げたけど、今度は逆にダメな方の批評。
 いや、アベンジャーズが仲間割れしてる脳筋の集団だ、というのは同意できなくもないんだけど(笑)。

とくにひどいのがリーダーのキャプテン・アメリカで、はっきりいってこいつはリーダーとしては一番不適切だ。なにしろチーム一のねぼすけだけあって、全く成長が見られない。


 この人「最初からマーベル・シネマティック・ユニバースを追いかけている」とか言ってるが、とてもそうとは信じられない。マーベル・シネマティック・ユニバースを最初から見ているなら、リーダーはキャップ以外あり得ないことは一目瞭然だからだ。
 戦闘中に理性を失って暴走するハルク、人間を守るモチベーションが微塵もないソー、元敵国出身のブラックウィドウ、元裏切り者のホークアイ。辛うじて社長はリーダーに向いてなくもないが、お調子者で精神的に脆い点があって不適格。リーダーはキャプテンアメリカしかいない。それを全員が認めているからアベンジャーズは(辛うじて)成り立っている。

一番首をひねるのが、いったいなぜこの星条旗コスプレイヤーは、これほどの人材を能力によって適切な職場へ割り振らないのかという点である。

スティーブ・ロジャースの生きていた時代には適材適所という言葉がなかったのか、このリーダーときたらホークアイだのブラック・ウィドウを毎回攻撃の最前線にたてている。一番弱い生身の人間を前面に出してどうするのか。彼らは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の血液袋か。


 ウルトロンとの初戦でも前に立っていたのはアイアンマン、ソー、キャップの三人。ハルクとの戦闘ではアイアンマンが先頭に立っていたし、中盤の市街戦で二人が活躍していたのは他のメンバーが不在だったからだ。他のメンバーがホークアイブラックウィドウを前に立てて戦うシーンなんてない。まさか終盤の戦場での市民の避難誘導をハルクやロキにやらせろとでもいうのだろうか?
 あと、細かいことがキャプテンアメリカ自身も超人血清を使っているだけで「生身の人間」だ。撃たれれば傷も負うし、水に入れば溺れる。アイアンマン、ハルク、ソーが規格外すぎるだけで、ブラックウィドウホークアイも一般人に比べれば十分超人である。

 せめて制空権はアイアンマン、遠距離狙撃はホークアイ、ハルクはにぎやかし、ってな具合に役割分担と連携をさせてはどうなのか。


 開始後三分で居眠りでもしない限り見ているはずだが、冒頭のヒドラの本拠地に乗り込むシーンはまさにそういうシーンだった。ホークアイの武器は「弓矢」だから、いわゆるスナイパー的な遠距離狙撃には向かない。前作でも正気に戻った後はビルの上から弓矢無双してたのであって、敵に気づかれないような遠距離からの狙撃はしていない/できない。そういうアイデンティティのキャラクターである。

これだけ戦力を生かさない、戦略も戦術もない脳味噌筋肉集団が、団結団結言っているんだからずっこける。おまえら団結なんていったって、いつも身勝手に戦ってるだけじゃねーかと、誰もがつっこむ瞬間である。


 そもそも何か勘違いしていると思うのだが、アベンジャーズは軍人ではないし、キャップの指揮命令系統の下にいるわけでもない。だからこそ利害を超えて協力することが作品のテーマになり得るのだ。普通の人間は、ドラえもんに向かってわざわざ「何でもかんでも秘密道具で解決してんじゃねーよ」などと無粋な指摘をしたりはしない。


 そして一番の突っ込みどころがここ。

もっとも、そんな大味なところもアメリカンでいいやと思えればいいわけだが、なにしろ傑作の誉れ高い前作のせいで期待値があがっている熱心なファンには厳しいところ。


 前作が傑作!? あの「マイティ・ソー」を見てないとわからないストーリーや、唐突に出てくる宇宙人(チタウリ)、「エイジ・オブ・ウルトロン」に輪をかけて仲間割れしまくり(何しろそのせいで味方に犠牲が出るくらいだ)、ホークアイが弓で敵を殴りつけ脳筋のキャップが暴れまくる前作が傑作で、エイジ・オブ・ウルトロンを駄作だと断じる根拠が上のこれ?


 ちなみに私自身も今作より前作の方が好きだが、こんなに中身のない話を長々と書き連ねるほど大仰な理由はない。「今作の方が雰囲気が暗いから」それだけである。


 しかし、エイジ・オブ・ウルトロンを批判するのにまず日本の配給会社のあのアホなキャッチコピーに一言も触れないとか、何か「大人の事情」でもあるんだろうか?