コロコロ少年の思い出(1)

 さて、前のエントリで「アナログゲームについてもそのうちに」と書いた。もう一人のピコピコ少年のエントリとは時期が随分前後してしまうが、アナログゲームとの出会いからつらつらと書いていきたいと思う。むしろこちらの方がこのブログを見る人にとってはメインかもしれない(笑)。

世界最古のTRPG


ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版スターター・セット

ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版スターター・セット


 といっても、私とTRPGの出会いについては「初めて作ったキャラ」についてのエントリで軽く触れたことがある。


 「もう一人の〜」で書いたとおり、ゲームを求めて彷徨うゲームゾンビだった子供の頃の私。ある日同級生たちが「マジックミサイル」だの「アーマークラス」だのという用語を使って会話しているのを耳聡く聞きつけ「それって、何のゲームの話? コンピュータゲーム?」と話しかけたのが、全ての始まりだった。
 当時はまだリプレイもなかった*1ので“ダンジョンズアンドドラゴンズ”がどんなゲームかもわからず、人が集まってやっているらしいという以上の情報も得られず、遊んでいる仲間たちに仲間に入れてもらおうとしたものの渋られ*2、ひたすら悶々とする日々が続いたが、ある日突然掌を返されて参加を快諾され、一回プレイしたところで「じゃあ、DMよろしく」と言われた……というのは既に書いたとおりだ。


 DMをやるからにはルールを持っていなくては。ということで近所の玩具屋を(本屋ではない!)探し回って赤箱を購入。しかしこの時点で、当時の私はDMが何をやっていたのかよくわかっていなかった。シナリオを自分で作っていたのだ、という発想がなかったからだ。
 きっとこのルールブックにゲームの進め方が書いてあるんだろう、と思った私はプレイヤー用ルールブックを頭から読み始めた。そして当時赤箱を読んだ他のプレイヤーたちと同様、女クレリックのアレーナと魔法使いバーグルとのやり取りを経て……あれ? 終わっちゃったぞ?
 そのゲームブック形式の記述は「君の最初の冒険だ」とルールブックに書かれているが、では「次の冒険」をどうしたらいいのかはさっぱりわからないままだった。まして私が知りたいのはプレイヤーではなくダンジョンマスターのやり方なのだ。経験点表やアイテムの一覧を読み飛ばし、一冊目のルールブックを読み終えてもまだ腑に落ちなかった私は、そのまま2冊目のルールブックへと進んだが、それでも謎は解けなかった。その時点での私は「順番に読み上げればダンジョンマスターができるような何か」がルールブックに書かれているのだと思っていたのだ。確かにサンプルシナリオはある。しかし描写はほとんどないし、私のTRPG初体験の時のそれとは物語も違っている。「ずいぶん薄い本だし、このペースだと数回やったらこのゲームは終わってしまうのでは?」というのが、私の最初の印象だった。


 まさか、そこに書かれている「素材」の向こうに、無限の可能性を秘めた世界が広がっているのだ、などとは夢にも思わなかった。
 

 最後まで読んだところで、私はこのままではダンジョンマスターができないことに(ようやく)気づき、プレイヤーの一人、私にDMを依頼してきた友人に助けを求めた。
「なんか、このゲームどうやってやったらいいかわからないんだけど。この間のホワイトドラゴンが出てくる闘技場とかこの本のどこに書いてあるの?」
 答えは当然ながら「どこにも書かれていない」だった。「あれはDMをやったMくんが一から考えたんだよ」。
 「一から考えた!?」私はぶっ飛び、そしてなぜ他のプレイヤーたちがDMをやりたがらなかったか理解した。これは大変な作業だ! しかも、TRPG初心者にありがちな話だが、私は「ルールブックに書かれているシナリオと同じ体裁で、同じ分量で書かなければならないのだ」と思い込んでいた。

 とにかく筋立てを考えなければ。
 依頼人を王様にしよう、というのだけは、なぜか最初から決めていた。それまでに私が触れたことのあるコンピュータゲームやゲームブックの慣例から、私には「ファンタジー世界で村長や町人Aが依頼を持ってくる」という視点がまったく欠けていたからだ。*3
 王様なら軍隊を持っているはずなのに、なぜPCに依頼を持ってくるのか? きっと、秘密にしなければならない依頼だからだ。では、王様が秘密にしないといけない依頼とはどんな依頼か? 無くしてはいけない物を無くした、盗られたというのはどうだろう。何を無くしたのか? それじゃあ王冠にしよう。*4
 先祖代々伝わる王家の冠を盗まれ、その奪還をPCに依頼してくる王様。導入はできた。あとはダンジョンを作ればいい。


 そして、1回目のセッションの日がやってきた……。(続く)

*1:辛うじてロードスの連載が始まった頃。

*2:今考えてみればそのグループには既に、ダンジョンマスター一人に対してプレイヤーが7人程度いたから渋られたのも当たり前なのだが。

*3:TRPGでそれが一般的になったのは国産TRPGがいろいろ出てからの話。

*4:思えばソーサリーが頭にあったのかもしれない。