昨日の続き

 昨日に引き続き朝霧某氏の話。本当はファンタジーライフの話もしたいんだけど……。
 かなりきつい内容なので嫌な人は回れ右してください。














"日常" "水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話"見逃しちゃった人集まれ!


 前にこのブログでTRPG動画の話を取り上げた時、私は意図的にかなり抑えた表現を使った。勘のいい人はそれと気づかれたかもしれない。
 このブログのポリシーの一つに、よほど他人に迷惑をかけていない限り、アマチュアの、特にそれによって利益を得ていない活動については、できる限り「名指し」で糾弾のようなことはしない、というものがある。アマチュア活動を自粛させる方向に向かうのは私の本意ではないし、本人が対価をもらっていない以上、文句を言われるのは筋ではないと思うからだ。
 だが、この朝霧某氏は商業誌でデビューした。つまりまがりなりにもプロになったということなので、遠慮なく糾弾させてもらおう。昨日は怒りのあまり最小限のことしか書けなかったので、それに補足する形になる。


 まず、彼のTRPG動画と称する動画について。元々件の動画は「ゆっくり妖夢と本当は怖いクトゥルフTRPG」というタイトルだった。動画内でもTRPGであることを前提とする描写がある。最も顕著なのはメタ視点だろう。
 さて、彼がTRPGに関してどう考えているか。自作動画のタイトルから人知れず「TRPG」の文字を消したことからもわかるように、TRPGに対しては決して熱心ではなく、詳しくもない。*1もっと言えば、再生数を稼ぐためと物語内のギミックを機能させるためにTRPGという言葉を「借りた」と指摘されても仕方がない。
 まさか彼の動画を見て「実プレイを収録したもの」と考える人はいないだろうが、朝霧某氏が動画内で提示しているプレイングは、決して人に勧められたものではない──それどころか、某所の表現を借りれば完全なる「マナー違反プレイヤー」、いわゆる「困ったちゃん」、同じテーブルを囲んだらプレイを蹴られても文句は言えないレベルの悪質プレイヤーである。



 私はこの動画の総統閣下の主張の全てを肯定するわけではないが、少なくともここで指摘されているうちのいくつかは、憶測などではなく彼自身がネット上で公言している内容に基づいている。特に典型的なのがツイッターでの発言だ(以下、彼の発言は朝霧カフカ先生の発言集 より引用)。

 メモと思考を総動員して中盤で早々に黒幕を見抜き、理系知識を総動員して技能なし・戦闘なしで黒幕を殺したら、バランスブレイカーだと嫌われる。私が悪いのだろうが、何を反省すればいいのか今ひとつ分からない。分かるのは「懲りた」ということだけ。すげー楽しみにしていたのに。

 横山孔明先生にしても、竜崎にしてもそうだけど、「ダイスロールが必要な策を立てた時点で、その策は二流」っていう発想がある。実際頭ひねって策を考えるうp主の立場にもなってくれ。


 語るに落ちるとはこのことだ。これは彼のTRPGに対する姿勢を端的に表している。そもそも一つ目に挙げたツイートの「何を反省すればいいのかわからない」と言っている時点で、彼はTRPGにはまったく向いていないと言える。ルールもシナリオも相手の思惑も無視しておきながら、その心情を斟酌する能力がないと告白しているも同然だからだ。
 それと、ダイスロールとはシステムによる処理だ。彼はそれを拒絶するという。つまりいわゆる口プロレス上等、ルールを使わず口八丁で相手をやり込め、自分のやりたい行動を認めさせようというプレイングを「推奨」あるいは「必須」のものと主張している。


 ここではっきりさせておきたいが、クトゥルフTRPGは「旧式」のTRPGである(貶める意図は全くないので念のため)。TRPGのなかでもかなり古い部類に属し、しかもD&Dなどとは異なり版上げとともに大きな内容の改定がほとんど行われていない。
 現在発売されているTRPGの多くは、ルールブックに口プロレスに相当するものを禁じる記述がある。*2。昔はそれはプレイマナー、つまりプレイヤーの良識に任されていたため、わざわざルールブックに記載することは少なかった。朝霧某氏はそこを逆手に取っている。


 全てのTRPG動画がそうであるとまでは言わないが、少なくとも朝霧某氏の動画のプレイングは、実プレイには全く役に立たないどころか、徹頭徹尾真似してはいけないプレイングのオンパレードである。なぜなら、登場人物がそもそもTRPGの基本中の基本、前提中の大前提である「TRPGとは、セッションを通じてGMとプレイヤーの双方が楽しむゲームである」という原則を無視しているからである。口喧嘩でやり込められて楽しいと思う人間がどこにいる?
 しかも、作者はTRPGのことを熟知していて、あえて登場人物にそういった行動を取らせているのではない。かつて流出したとされるオンラインセッションのセッションログやツイッターでの発言を見る限り、作者自身に「参加者全員で楽しむ」という姿勢が皆無だ。少しでもその意識があったら、プレイヤーがGMに勝つだとかシステムを蔑ろにするような発言をするはずがない。

 私の動画は8割くらい(体内感覚)TRPGを知らない人たちが見てて、公知役としてけっこう重用な役回りだと思ってます。ただ言うまでもなく、仲間でTRPGやっても私の動画みたいには「絶対に」ならない。キャプ翼見てサッカー始めました、みたいなもんで、それはそれでいいと思うんだけど。

 クトゥルフTRPGはKPとPL全員で物語をつくっていく。だから例えば、KPは悲劇作家さん、PLが全員喜劇作家さんだと、物語性の綱引き争いになる。KPが勝てばPLがヘコむような鬱シナリオになるし、PLが勝てば「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」動画みたいになる。


 彼は自分の動画を「キャプテン翼」に例えている。それは普通の人間には真似のできないスーパープレイというニュアンスを含んでいるのだろうが、とんでもない。キャプテン翼は少なくとも、相手チームのプレイヤーを滅多打ちにしても反則を取られないような漫画ではない。
 例え話は物事の本質を見失わせる恐れがあるので気軽に使いたくないが、彼に倣ってTRPGを知らない方のためにサッカーに例えるとこんな感じだろうか。
 

 ある人物が「サッカーの動画作ったよー」といって公開したら、その中身はFWが相手チームのMFをスパナで殴って流血させたり、GKを銃で射殺したりする、サウスパークさながらの反則プレイを売りにする動画だった。旧来のサッカーファンが唖然としていると、当の作者やそのファンは「これで業界が活性化してサッカープレイヤー希望者が増えただろう、感謝しろ!」と嘯く。


 彼は気づいていない。件の動画のTRPGは「真似できない」のではなく「真似してはいけない」のだということに。


 TRPGを綱引きに例えていることからも明らかだ。綱引きは勝ち負けを決めるゲーム。だから続いて、あたかもGM(ツイート内ではKP(キーパー))かPLのどちらかが戦って勝ち、ストーリーを決めるかのようなコメントをしている。
 とんでもない。ここで「勝つ」という表現を使っている時点で、彼はTRPGが何なのかすら理解していない。先ほどのサッカーで言えば、オフサイドのルールを知らないとかでなくそもそもボールの蹴り方を知らないというレベルであり、綱引きに無理に例えるなら、双方が納得できる位置で──つまり“真ん中”で終わらなければセッションは成功とはいえない。
 TRPGに勝ち負けはない。あえて言うなら、全員が楽しめなければ全員が負け、全員が楽しめれば全員が勝つ。プレイヤーとGMの間に勝敗はない。このことも、近年のルールブックには口を酸っぱくして述べられている。彼はそれを知らないのだ。
 

 前にも書いたが、確かに、これをきっかけにTRPGに興味を持ってくれる人が出てくれば、それは望ましい。だが彼がやっているのはTRPGではない。そして、TRPGを「勘違い」した、いや、朝霧某氏によって意図的にTRPGを「勘違いさせられた」プレイヤーが実プレイで暴れた時、責任を取るのは彼ではない。*3セッションを仕切っているGMだ。彼が自認する「公知役」とやらからは、その視点がすっぽりと抜け落ちている。そう、彼は迷惑をかけられるGMのことなどまるで考えていないし、実セッションにおいても、相手プレイヤーのことをまったく考慮していない。「相手がどう感じるか想像できない」というのは、TRPGゲーマーとして一番大切なものが欠落している。
 しつこいようだが繰り返し何度も書く。TRPGはGMとプレイヤーが頭脳比べで勝負するゲームではない。ルールを無視して口論するゲームでもない。そこを勘違いしている人に、TRPGを遊ぶ資格はない。そこを勘違いさせる輩に、TRPGに関する著作を著す資格はない。


 さて、彼は件の動画が「これはTRPG動画ではない」という指摘を受けると、それに応えることなく動画のタイトルからTRPGの4文字を消し去った。

 あ、悪いこと考えた。私の動画もRPF(ロールプレイングフィクション)ですって名乗ってやろうか。勝手に。そうすれば「こんなのTRPGじゃねえ」というご意見も緩和されるに違いない。マルシーどうなっとんのかな……。


 これほど三田誠さんに失礼な発言もないだろう。レッドドラゴンのメインクリエイターである三田さんは、熟練のTRPGプレイヤーであり、デザイナーである。*4彼は当代一流のTRPGデザイナーと親交があり、当然最新のTRPGについても熟知している。熟知しているからこそ「自分の作品はTRPGではない」と判断しているのだ。
 TRPGのなんたるかも知らず「よくわかんねえけどこんなのTRPGじゃねえって言われるから違う用語(しかも、これまた他人の作った用語だ!)使っとけばいいんだろ? あ?」なんて人間とは、悪いが器がまるで違う。そしてもちろん、彼の動画はRPFの定義にも該当しない。そもそも朝霧某氏はRPFの定義を読んですらいないとしか思えない。
 レッドドラゴンは創作者たちの才能のぶつかり合いであり、真剣勝負だ。他人のキャラクターを盗用することによってしか作品を作れない人間などとは次元が違う。


 とはいえ、彼の今までの対応はどう考えても誠意ある対応ではないものの、今まではそれはあくまでもTRPGゲーマーに対してのみの話だった。
 ところが、今回「他人の著作物を勝手に自分の著作物と称して商業作品に使用する」という暴挙を働き論議を呼んでいる。

 東方、ボカロ何でもそうだが、「売れてるジャンルだからってにわかが参入しやがって」という罵倒の本質は、「お前は先達が耕した市場の恩恵を受けるだけ受けて還元してない」(=ただ乗り)と解釈すべきである。パクったうえで市場をさらに活性化させられれば、それは「善なる二番煎じ」である。

 ああ、ええいもう言ってしまえ。私にとって話を面白くする技術とは、パクる技術とほぼ同義だ!

 KAT-TUNパクり騒動http://p.tl/_Z_6 著作権法違反だから、これは怒っていいし訴えていい。でも翻って考えると、著作権が創作を促進する為にあるってのはウソだと分かった。著作権は、パクられた側のイラッとする気持ちを手当てする為にできた。イラッなくして著作権法なし。


 これらの発言を見る限り、今回の騒動は起きるべくして起きたとしか言いようがない。彼には、二番煎じと盗用の区別すらついていないのだから。


 ともあれ、彼はTRPGに対してだけでなく、全ての創作に対して誠意のない人物であることがこれで明らかとなった。これに関しては、私より詳しい人があちこちで論じてくれることだろうから私はここで詳述はしない。ただ彼の著作が大失敗し、彼が二度とTRPGと名のつくものに関わらないでくれることを切に願うのみである。

そしてまたお前か

 さて、話はここで終わらない。朝霧某氏がこのような人物であることは、前々から、それこそ商業デビューする前からわかりきっていたことだった。にも拘らず、彼を商業デビューさせ、あまつさえオリジナル作品ではなく他人の作品からキャラクターを盗用した作品を出版社を介して発表するとはどういうことだろうか。集英社や扶桑社、講談社に何と申し開きするつもりなのだろう。友達から指摘されて思い出したが、角川は以前にも「とらぶるうぃんどうず」で騒動を起こした過去がある。経験から何も学んでいないのか? 元々企業全体のリテラシーが低いのか?
 他社の著作物を軽んじる企業に、自社の著作権をどうこう言う資格はない。角川は自社の著作物が他者にどんな扱いをされようが、商業作品として発表されようが、一切文句を言わないのか?


「まさかのハルヒを使ったラノベが登場!スニーカーだからこそできる画期的な新作」 


 これも、別に角川である必然性はないということになる。講談社集英社が同タイトルのライトノベルを出版したとしても、角川書店は反論しようがないだろう。

終わりに

 最後に付け加えておく。私は二次創作を否定するつもりは毛頭ない。なぜなら、二次創作者の多くは一次創作に敬意を払い、それを愛するがゆえに二次創作を行っている人たちだからだ。私はそういった作品が好きだ。そして、それを許容してくれている一次創作者にも感謝している。
 今回の騒動で最も腹立たしいのは、渦中の人物は問題となっている作品やジャンルを愛しているわけでもなく、ただ利用しているだけであり、そういったごく一部の人間の身勝手極まりない行動によって、他の一次、二次創作者が多大なる迷惑を蒙ることだ。そんな状況が一番許せないし、悲しくもあり、情けない。しかもそんな騒動にTRPGも関わってしまっているのがなんともやるせない。

*1:東方にも孤独のグルメにもデスノートにもブラックラグーンにも詳しいとは思えないが。

*2:FEAR系TRPGのルールブックにある「ゴールデンルール」もその一つ。それ以外で言えば、例えばSW2.0のルールブック1の8ページ下段には口がうまい人が勝たないようにするためにルールがあると書かれている。9ページにはTRPGには勝ち負けはないことも書かれているし、海外のゲームでいえばD&D3rdのDMGの13ページにはメタゲーム的思考の禁止が明記されている。

*3:実際、そういう報告は複数ある。恐らく氷山の一角だろうが。

*4:かつてSNEに所属してゲーム制作に関わり、トーキョーNOVAの製作にも関わったことがある、れっきとしたプロの作家。加えて、ダブルクロスリプレイ・ストライクの「モルガン」のプレイヤーでもある。