続編ではなくPSP版の話

AKIBA'S TRIP PLUS - PSP

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 一時期話題になっていたのが記憶に残っていたので、自分が知っている秋葉原(最近あんまり行ってないけど)の情景と比べてみようと思い、アクワイアの名前で一瞬不安になったものの買ってみた。


 結論からいうと“アイデアは良いけど佳作”という感じ。


 最初ゲーム開始時に歩ける範囲を見て「マップこれだけかよ!」と思ったけれどそんなことはなく、ストーリー進行とともに見覚えのある場所に足が伸ばせるようになっていった。それは良いのだが……。

閑散とする秋葉原

 まず最初に、売りである秋葉原の街並み。確かに実際の店舗を再現してはいるけど……これ、秋葉原じゃないよ(笑)。いや、どこぞのゲハなんとかみたいにポリゴンガーとかFPSガーとか訳のわからないことを言うつもりはない。そうじゃなくて“秋葉原の中央通南を端から端まで走ってすれ違った通行人がたった5人”とかどう考えても私が知ってる秋葉原じゃない。
 いや、わかるよ。本当の秋葉原の人波を全部ポリゴンで再現なんてしたらとんでもないことになるということは。でも背景の書割でもいいからもっと人がいないと、これじゃ秋葉原というより“ゾンビが来襲して廃墟になった元・秋葉原”だ。
 これなら杜王町だとか稲羽市だとかバイスシティだとか、架空の地方都市にした方がまだよかったんじゃないだろうか。でなければシナリオ上で“秋葉原なのに人通りが少ない”必然性を持たせておくとか。

車泥棒から下着泥棒

 で、遊んでて思ったのは、このゲーム、もしかして「日本版・グランドセフトオート」がやりたかったんだろうか。関係ない一般人を攻撃できたり、それによってドロップアイテムは手に入るけど評判が悪くなって人がこっち見ると逃げるようになったり、なんかそんな雰囲気を感じる。
 確かに日本を舞台にGTAをやろうとしたら、ショットガンでバンバン通行人を撃ちまくったり、乗り物を奪って逃げたりとかってのは不自然だし、需要にも合わないだろう。その点このゲームの「吸血鬼は日光に当たると消滅する、だから脱がして直射日光に当てる」っていう発想は斜め上で面白い。

 ただ、そのための細部が詰められているかというと……。

 例えば、繰り返しになるけど、このゲームは一般人に紛れ込んだ吸血鬼がターゲットで、脱がすことで日光に当てて倒すのが目的だ。でも脱がすというアクション自体は一般人相手だろうがなんだろうが、関係なくできるようになっている。
 この脱がすアクションの前段階で、まず一般人に戦闘を挑もうとすると、当然相手は逃げる。ところが、この逃走スピードが自分が移動するスピードとまったく同じなので、相手を地形や通行人で引っ掛けるなどのテクニックを駆使しない限り、絶対追いつくことができず、相手が逃げ始めた時点で追いつけないことが確定してしまう。GTAをやってないんでよくわからないが、あっちは乗り物に乗ったり銃で撃ったりして逃走を阻止するのだと思われる。そういう手段がこのゲームには見当たらない(しかしアイテム集めするためには一般人を殴らないといけないという……)。
 ゲーム内で一般人と吸血鬼を識別する方法(写真を撮ると判別できる)が提示されている以上、一般人を殴れるシステムは不要だった気がする。

 それに拍車を掛けるのが、一般人のバリエーションが少ないこと。例えば若い女性のパターンは、裏通りを歩いていても、UDを歩いていても、基本的に2〜3パターンしかない。しかも道をスタスタ歩いていってエリアチェンジすると、しばらく待っていると反対側からまた同じ人がスタスタ歩いてくる。これが簡易とはいえAIが設定されていて、NPCが独自の行動を取っているならGTAっぽいオープンワールドゲームといえるんだろうけど、そういう訳でもない。エウリアンが絵を売ってきたり占い師が手相見てたり、メイドが客引きしてたり、細かいところは面白いんだけど。

いくら秋葉原の道は狭いといっても

 あと、戦闘が辛い。基本的に一対一でバランスが取られてるとしか思えない。多数の敵に囲まれると、殴られるたびにノックバックしてしまい、こちらがまったく行動できなくなる。装備で何とかなるかと防御力や攻撃力を上げてみても、結局カスダメでもノックバックするので“倒されることはないのに身動きだけが取れない”状況が続く。RPGでHPが1000あるのに麻痺で行動不能で2〜3ダメージをずっと食らい続ける感じ。
 こういうゲームって敵をまとめて倒すんだろうな、と思い、無双やスパイクアウト、スラッシュアウトみたいに回り込んで敵を一方向にまとめようとしても、敵のAIが意味不明で「距離を取っても追いかけてこず、その場で立ちすくむ」ためにまとめることができない。
 また、基本的にどこのエリアも通路が狭く、当たり判定のつき方がおかしい。敵の後ろに回り込もうと思っても、グラフィック上は余裕があるはずなのに横をすり抜けるどころか自分が方向転換することすらできなかったりする。カメラの追従が悪いことも手伝って、これまたやっててイラっとくるポイントだ。


 ロード時間中、秋葉原の実在する店舗等のCMが表示されるところとか、先述の吸血鬼の扱いとか、アイデアには光るものがあるんだけど、各所で細かいところ(女性キャラの歩行モーションがドリフターズのヒゲダンスにしか見えないところとか)の詰めが甘く、結果的に評価が低くなってしまうのが残念だ。


 ところで、地味に驚いたんだけど、このゲームの主題歌ってまどマギカップリングソングなんだよね。