あんまり引っ張っても仕方がないので

docomo Sony Tablet P 3G+Wi-Fi 4GB SGPT211JP/S

docomo Sony Tablet P 3G+Wi-Fi 4GB SGPT211JP/S


 先日来、ずっと「Android端末」と書いてきた端末の正体がこれ「Sony Tablet P」だ。
 結論からいうと、ここ何年か買ったなかでも屈指の「残念ガジェット」だった。


 実はこれを買ったのはちょっと前のことになる。昔このブログで何度か触れたこともあるし、店頭にあるのを見かけて買いたいと思ったのも一度や二度ではない。入手できないまましばらく忘れていたものの、ある場所で定価からは考えられないほど値引きしていたのが気になっていたところに「キャプテンアメリカ2・ウィンターソルジャー」でブラックウィドウがスレート式のタッチパネル端末を操作するシーンを観て「お、なんかカッコいいじゃん」と触発されて衝動買い。
 私はこのマシンを買うにあたり、3つの用途を想定していた。以下、1つ1つ述べていく。

テキストエディタとして

 まず、真っ先に脱落したのがこの用途だ。ぶっちゃけ、タッチパネル式キーボードは打ちにくいなんてもんじゃない。私たちがキーボードを打つとき、それだけ無意識に「指先の触覚」に頼っているということなのだろう。タッチパネル式キーボードは触れても指先が得る情報が何もないので、隣のキーを押してしまうミスが多発する。私は訓練された完全なブラインドタッチではないが、恐らくブラインドタッチに近い人ほど苦労すると思う。これから自分が押そうとするキーをわざわざ視認する習慣がないからだ。
 最初は慣れの問題かと思い、1週間、このブログも含めて(仕事以外の)長文を全てSonyTabletPで打つことで習熟しようとしてみたものの、誤入力が全く減らなかったので諦めた。まぁ、巷でタブレットBluetoothキーボードを合わせて使う人が多いのを考えると、お察しということなのだろう。タブレットのソフトウェアキーボードに比べれば角度が付く分打ちやすいのでは、と実際に使うまでは想像していたが──多すぎる誤タイプを一々修正するストレスを考えると、角度のあるなしを問題にする遥か手前のハードルを既に越えられていないという印象だ。とはいえ、これは店頭で試し打ちした時に既にある程度予期していた。

折り畳めるタブレットとして

 次に想定していたのがこの用途だ。私にとって、タブレットの最大の欠点の一つは「運ぶ時かさばる」ことだ。折り畳むこともできず、端末のフットプリントすべてが運搬する際のフットプリントにもなってしまう。折り畳んで運べればいいのに、とずっと思っていた。ベゼルのところが邪魔だというが、それくらいは甘受すべきだろう、と。
 ところが、こちらは前述の用途と違い、店頭では全く確認できなかった事態が発生した。

 画面が半分にしか表示されないのだ。



(反射を防ぐため照明を消して撮影していますが、下のインジケータでわかるとおり右側半分も「画面」です。表示されているのはグランブルーファンタジーのスタート画面です)


 SonyTabletPは、テキストエディタやゲームなど一部のアプリにおいて、二つある画面のうちの片方を入力機構として使うことが想定されている。対応したアプリの場合、片方が画面、片方がキーボードやゲームパッドになるわけだ。そして、ブラウザなどのアプリの場合は両方の画面を使い、広い画面で表示する。
 ところが「普通のアプリ」はそのほとんどが非対応である。するとどうなるか。片方にしか画面が表示されない。ここで両方の画面に表示するための「全画面」ボタン(わかりにくいが上の画面で時刻の4つ左にあるボタン)を押すと、多くのアプリが不正終了する。グランブルー、白猫を始め、基本無料系のゲームを7つほど試してみたが、まともに全画面表示で進行できたアプリは一つもない。エラーで落ちるか、そもそも起動しないかのどちらかである。
 これは完全に想定外であり、また店頭で試してみるわけにもいかなかった要素だ。このマシンのレビューをしているサイトはいくつかあるが、ソニー系を除くゲームアプリをまともに遊んでいるレビューは見つけられなかった。これが一昨日書いた「想定外の挙動」である。仮にデレステを無理矢理動作させたとしても、画面半分を使って遊ぶことしかできないのであれば、折り畳めるメリットは失われ、そもそも半分のサイズのスマホでいいじゃないかという話になる。

ブックリーダとして

 最後に想定していた用途は、ブックリーダとしてである。折角本と同じように開けるのだから、電子書籍を読むのに向いているのでは、という発想だ。これは公式に推奨されており、私自身もかなり期待していた用途である。が、店頭で試してみるわけにはいかなかったものの、実機でやってみたら起動した瞬間「あ、だめだ」とわかった。こちらも百聞は一見に如かず。



(アプリはPerfectViewer、書籍はアリアンロッドルールブック1の改訂版です)

 
 照明を落として撮影したためベゼル部分はわかりにくいが、ディスプレイ部分との境目ははっきりとわかるはず。画面の上下にかなり広いデッドスペースがあるのがご覧いただけると思う。つまり、ブックリーダを売りの一つにしながら、実際の本の版型とディスプレイ解像度がまったく合っていないのだ。結果、2画面使えるにも関わらず、解像度は狭い横幅に合わされてしまうため、表示が全く拡大されなくて字が読みづらい。

最後に

 SonyTabletPは、当時のソニーのダメな部分が前面に出ているマシンだと思う。スマホで世界市場に食い込めなかったことに焦り、他にないアイデアで主導権を握ろうとするもアイデア負けするというパターンだ。Windowsマシンで生かせていた独自設計部分が全部裏目に出ている。Pの名を冠したのはVaioPを意識したのかもしれないが、それならハードウェアキーボードを具備すべきだったし、アプリが全画面にできない件については事後にフォローすべきだった。*1ブックリーダ部分に至っては、コンセプトモデルをそのまま製品にしてしまったような歪ささえ感じる。
 価格コムのレビューにも「後継機さえ出れば」という意見が散見されるし、私もそう思うが、初代機がこれでは後に続いていかなかったのもむべなるかな。繰り返しになるが、アイデアは悪くなかったと思うだけに、もうちょっと練ってから出してほしかった。文句よりも残念だとしか言いようがないマシンである。

*1:表示変更ボタンを押さない限りエラーは発生しないので、初期表示を片画面じゃなく両画面表示に設定してあればそれで済む話な気がする。