蘇生の話(前編)

 蘇生の話といっても、心肺蘇生法のような実用的な話ではない(ググって来た人がいたらごめんなさい)。ファンタジー世界の蘇生呪文の話である。ずっと前に、ソードワールドの蘇生呪文についてはチラッと触れたことがあるが、先日ダンジョン飯の最新巻を読んで、違うゲームの話もしたくなった次第である。

 他の要素が往々にしてそうであるように、これに関してもデファクトスタンダードはRPGの元祖、ダンジョンズアンドドラゴンズであると思われる。それより前の、指輪物語などの小説や他のジャンルの作品では、死人にホイホイ生き返られるとむしろ困ることの方が多い。事故で死んだキャラクターを取り戻したいというのは、ゲームならではの事情と言える。


ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)

ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)


 クラシックダンジョンズアンドドラゴンズには、蘇生呪文が複数存在する。レイズデッド、レイズデッドフリー、ウィッシュがそれだ。それぞれ、蘇生に必要な物や蘇生可能な(死んでからの)日数、さらには呪文の系統(僧侶系か魔法使い系か)などに違いがある。なお、D&D3rdにはレイズデッドフリーの代わりにリザレクションという呪文(効果はほぼ同じ)があり、さらにその上にトゥルー・リザレクションという呪文が追加されている。ウィッシュにも下位バージョンのリミテッド・ウィッシュという呪文が増えている。
 最上級のウィッシュはその名のとおり「願いを叶える」呪文なので、必ずしも死者の蘇生に使うとは限らないが、死者の蘇生に使われた場合は文字どおり制限なし、死体の破片すら残っていなくても、何年経っていても、HP全快の状態で即座に復活することも不可能ではない。ダンジョン飯でいえば、主人公たちの奮闘が失敗に終わってもウィッシュの呪文なら生き返れるということになる。とはいえ、ウィッシュの効果をどこまで認めるかはDMの裁量次第であり(もっと言うとレイズ系の呪文全てがDMの裁量次第なのだが)、世界設定によって何らかの制限が加わる可能性もなくはない。例えばドラゴンランス(AD&D)の騎士スタームなどは、生き返らせる可能性の言及すらされなかった。


 なお、ウィズフリークの方はお気づきかもしれないが、このCD&Dの3つの呪文が、それぞれウィザードリィのディ、カドルト、マハマンに対応している。呪文の系統まで同じなので、D&Dをかなり忠実に再現していると言える。
 ちなみに、ドラクエとFFは、ウィザードリィのディとカドルトの関係を、それぞれ違う形でリスペクトしている。ディはカドルトに比べ蘇生確率が低く、また衰弱した状態で蘇生するが、このうち「確率が低いか高いか」の部分を反映したのがドラクエザオリクザオラルの関係、「衰弱か全快か」を反映したのがFFのレイズ・アレイズの関係である。


 明日以降に続きます。