端末の顛末

 先日「予備のPCが前触れなく吹っ飛んだ」と書いた。昨日までエントリが短めだったのは、その端末に悪戦苦闘していたからだ。
 そもそも「予備のPC」とは何かというと、サブマシンと違い、自宅で使っていないPC、実家に置いてあったPCのことだ。

 用途は二つ。
 まず、年末年始や夏休み、急な用事などで実家に泊まることになった時、携帯ではできない調べごとをしたり、ブログを更新する用途が一つ。
 もう一つは、今の自宅に何かが起きたとき(火事や盗難等)のために、貴重かつ復元不可能な必要最小限のデータのみ、マスターコピーやバックアップのある自宅から離れた場所に保管しておく用途が一つである。

 当然、手元に置かないPCなので、性能はファイルを扱える最低限でいい(動画すら見れなくていい)。ウェブサーフィンもテキストベースの最小限のものしかしない。というわけで、倉庫で眠っていたネットブックをそれに当てていた。AcerのAspireOne"ZG5"である。
 この機種名を見て「壊れたのは経年劣化では」と感じた人がいたら、相当ネットブックに詳しい人だと思う。確かに相当古い機種である。かつて「ネットブックFF11が動作する」というネット情報を見て衝動買いしたものだが、実際にはまともに使える性能ではなかったため、眠る羽目になったのだ。



 私自身、半分は「これはもう寿命かな」という思いもあった。
 ただ、エントリに書いたとおり、もう半分は「不運」「理不尽」という印象だった(だから「分不相応な幸運の反動かな」と書いたのだ)。というのも、前にHDDが吹っ飛んだ時の経験から、私はデータのバックアップとHDDの診断を定期的にしており、このPCはSMARTで診断する限り「数百時間」という稼働時間だったからである。PCの故障率は、初期不良があるので購入直後が高く、そこからしばらく使うにつれ安定し、またなだらかに上がっていくという。数百時間というのはその谷間、つまり「比較的安定している時期」に当たる(一日数時間使っていて数ヶ月程度である)。
 もちろん、使っていなくても劣化していく部品はあるから、それらが壊れた可能性もある。ただ、もう一つ納得いかなかったのが「壊れる十数分前まで普通に使えていた」ことだ。電源ランプの点滅や、反応が急に遅くなるだとか、異音がするなどの前兆は全くなかった。前兆なく壊れるPCがあることも重々承知はしているが……。

 「前兆」はなかったが「きっかけ」はあった。WindowsUpdateである。

Updateの悪夢

 当該PCは、昨年一部で話題になった「WindowsUpdateが終わらない」という不具合の余波をもろに食らったPCだった。元々実家に変えるタイミングでしかUpdateしないせいもあるが、一晩Updateしても全く終わらず、仕方なく色々調べて個別の更新プログラムを逐一当て、ようやく完了したという経緯がある。
 そのUpdateもようやく正常化して、先日も久しぶりに更新プログラムを適用し、再起動した瞬間、電源が入らなくなった。電源ランプは点灯するが、HDDのアクセスランプは点灯せず、画面に通電している様子もない。元よりバッテリは完全放電しているが、一応バッテリを外してしばらく待って再起動しても全く改善しない。BIOSの画面すら表示されないのでは、対処のしようもない。
 直感的に「これはマザーボードの電源関連では……?」という気がした。ブルーバック画面すら出なかったということは、不良箇所はメモリでもHDDでもなさそうだったからだ。ノートPCで電源関連といったら、素人お断りの領域である。

 データそのものは元々バックアップだから、消えても問題はない。問題はハードウェアそのものだ。Windows7ネットブックはもはや入手不能Windows7に今更こだわるつもりはないし、10に移行しても構わなかったのだが、予備用途なのでそれほど出費するつもりもなかった。

 で、量販店に赴いてため息をつく羽目になった。

かつての隆盛もいまや

 このマシンについては可搬性を重視していないので、重量や厚さは問題ない。しかし、自分の部屋など残っていない実家の、片隅に押し込んだ机の、さらに引き出しに突っ込んでいるのが常態なので、かさばるのは厄介だ。つまり、フットプリントが大きいのは困る。AspireOneは8.9型、ところが、今はもう10.1型のマシンすらあまり残っていないのだ。せいぜい11.6型である。センチに換算すると、ワイド型だと幅が5センチ以上大きくなる。
 また、今はそういった小型PCは可搬性を重視しているため、EMMCを搭載しているものが多い。ストレージで64GBとか128GBとか。それではバックアップ用として使った時、容量が足りない。しかしHDDを搭載しているものを探すと、普通のオールインワンになってしまう。自分の用途がニッチであることは承知しているが、ちょっと前まで世に溢れ、捨て値で買えるスペックだったわけで、そういう意味でも複雑な心境になった。

東奔西走の果てに

 ところが、この話は意外な顛末を迎えることになった。PCを自宅に引き上げてどう処分するか考えつつ、次のマシンを探そうと価格コムをうろうろしていた時、ふと思いついてAspireOneのページを訪れてみた。クチコミページには「突然電源が入らなくなった」という報告が複数あり「このマシンではよくある不具合なのかな」と頷きつつ読んでいたところ、ある掲示板で「特定の処置をしたらPCが直った」という報告があったのだ。
 「液晶に通電すらしなくなったマシンが復活するなんてあり得るのか?」と思ったが、捨てるつもりだったPCだし、ダメ元で調べてみた。どうも当該機は、あるきっかけでBIOSが飛ぶことがあるため、外部メディアから起動してBIOSを上書きすると復活することがあるという。しかも、トラブルシューティングのページによれば「この機種ではよくあること」なのだそうだ。
 「本当かよ……」半信半疑でそのとおりにしたところ、確かにページにあったように、数分で何事もなかったように再起動し、元通りになった。あっさりすぎて呆気に取られたくらいである。


 その後、現在に至るもウィルスチェックなど色々な処理を走らせているが、旧式のマシンだけに重くはあるものの、全く不具合は起きていない。故障も突然なら、直るのも突然である。もちろん、寿命が近づいていることは確かだろうが、慌てて代替を探す必要がなくなっただけでも僥倖だ。さすがに次は格安タブレット+キーボードしかないか……などと考えつつ、ショップのHPを眺めている次第である。