前回のエントリで、領主を遊ぶTRPGには「大規模戦闘ルール」か「領地経営ルール」かどちらかがあると書いたが、一つ失念していた。それは「PCは領主だが、ゲーム中は領主でないPCと同じことしかしないTRPG」つまり、領主がプレイできるというだけで、それ用のルールが一切ないゲームである。
当然、今回挙げた3つ目のゲームが、タイトル数としては一番多い。深淵、まじかるプリンセスRPGなどなど……貴族だけでなく領地を持つ騎士まで含んでしまったら、挙げるのも大変なほどのタイトルが該当してしまう。が、これらのほとんどは、領主であるという名目だがゲーム中に領主としての行動をルール処理する部分はほぼなく、ロールプレイ上のフレーバーに過ぎないか、シナリオソースとして扱われるか、程度である。もちろん、ゲームとして負担を減らし破綻をなくすためには、この取り扱いが一番楽だ。
大規模戦闘ルールがあるゲーム
先日も挙げたとおり、CD&Dには大規模戦闘のためのルールがある。元々TRPGの源流が戦争を扱ったシミュレーションゲームであるためか、昔のタイトルには大規模戦闘のルールがあるものがそれなりにある。記憶にある範囲でも、T&T(ただしハイパー、それも社会思想社版)、ロードス島戦記(コンパニオン3)、ローズ・トゥ・ロード(「大旗戦争」)、ブルーフォレスト戦乱など。T&Tなどはシステムそれ自体が大規模戦闘に向いたシステムである。
とはいえ、ロードス島戦記には(英雄戦争や魔神戦争を題材とするゲームでありながら)、物語の本筋とは全く関係ないサンプルシナリオ以外の大規模戦闘用のデータがまるでないし、HT&Tに至っては大規模戦闘用のルールそのもの以外は何もないので、GMとしてはそのルールをどの場面でいったいどうやって使えばいいか困惑するだろう。
逆に、RTOLは大旗戦争というかなり後期の時代を扱うサプリであるため、敵味方を含め指揮官から何からデータは豊富に揃っている。むしろ、ストラディウム選抜近衛第3軍団や敵方の黒龍騎兵団、そしてそれらの指揮官があまりにも強力かつ伝説的すぎて、PCの活躍の余地があるのか不安になるほどだ。
一方、最近のゲームでいうと、今風のゲームデザイン、戦争処理をセッションに組み込んで無理なく進行できるタイトルが増えてきた。アリアンロッド、ブレイド・オブ・アルカナ、グランクレストなどがそれにあたる。これらは世界設定や戦争に対するアプローチは違うが、それぞれのやり方で大規模戦闘をシステム化している。
- 作者: 菊池たけし
- 出版社/メーカー: ゲームフィールド
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: おもちゃ&ホビー
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領地運営ルールがあるゲーム
前項と違い、こちらはタイトルとしては非常に限られる。理由はもちろん先日も書いたとおり、領地運営をセッション中に行うと、セッション進行に大きな制約がかかるからだろう。元祖CD&Dから、ずーっと時代を下るまでその後継は現れなかった。
- 出版社/メーカー: 冒険企画局
- 発売日: 2010/07/11
- メディア: おもちゃ&ホビー
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転換点になったのが「迷宮キングダム」である。このゲームは領地運営にボードゲーム的な要素を導入することで、プレイヤー全員が参加できる領地運営ルールを作り上げた。世界観に合わせてルールを作るのではなく、ボードゲーム的な処理で領地運営を行うことを前提に、ルールありきで世界設定を作り上げるという発想の転換でセッションの破綻をなくしたゲームである。後発のグランクレストも、迷宮キングダムほど顕著ではないが、似たような手法で領地運営をセッションに取り込んでいる。
このうちグランクレストなどは、リプレイを見れば分かるとおり、明らかになろうなどのムーブメントを意識して出てきた作品でもある。
グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業1 (富士見ドラゴンブック)
- 作者: 中村やにお
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 富士見書房
- 発売日: 2015/05/22
- メディア: Kindle版
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これらのルールの辿ってきた変遷を考えると、まるで「先祖返り」のようにも見えて、なかなか面白い。*1