これこそ彼女の歌


 先日のデレステの曲ランキングを見ていて、一番気になっていたのが、1位のアンドロメダじゃなくこの曲だった。その前から、このCDが店頭にあるのは知ってたんだけど、パッケージに文香もいなかったし、特に気に留めていなかった。動画のコメントでこの曲を高く評価している人がいなかったら、そのまま気付かないままだったかもしれない。



 買って改めてフルで聞いてみたら、この曲、深い……。そして、この曲こそ彼女の曲だと思った。


(以下、「銀河図書館」の歌詞に関するネタバレあり)


 このサイトが私の言いたいことをほぼ言ってくれているので、改めて全部は書かないが、彼女のキャラソングにして初のソロ曲「Bright Blue」は、彼女の曲っぽくない。少なくとも、彼女のことを歌った曲には聞こえない。


ykks.hatenablog.com


 Bright Blueの歌詞を読むと分かるが、この歌を彼女に投影すると“アイドルデビュー前の文香は「偽り」であり、アイドルデビューすることでファンタジー(ここでは「フィクション」的な意味だろう)の世界に逃げていた文香が本当の居場所を見つける”という物語になってしまう。しかし、これは様々なメディアで見られる彼女の姿と異なるように思える。


 アイドルデビューすることで過去の自分を乗り越え、新たな自分を見つけ出す、というのは、346プロでいうと上条春菜とか北条加蓮の立ち位置である。


「昔、性格が暗くて、地味な女の子がいました。でも、眼鏡をかけるとあら不思議、明るい世界が待っていたんです!実話です!」(上条春菜
「昔のアタシはいいの!ねぇ、一緒にいこ?もっともっと先へさ」(北条加蓮


 もちろん、彼女たちはステージを降りたら病弱に戻ったり、メガネを外してしまう訳ではない。


 これに対し、文香はアイドルデビューしても本を読むことを辞めてはいない。むしろ自分のことを書き記すようになっている。立ち位置としては星輝子のそれに似ている。輝子も特訓後(デレステであればSSR)にデスメタラーとしての一面を見せても、ステージを降りればこれまで通りキノコを育てている。


 それを考えると、今回の「銀河図書館」はよく考えられた名曲だ。作詞、作曲したのは熱心な文香Pだというが、それも納得である。この曲に出てくる「銀河図書館の女の子」は、過去を否定しない。女の子は「嵐にあって、図書館の銀河から逆さまに落ちてしまった」のをきっかけに「一人で本を読むのではなく、たくさんの人に本を読み聞かせること」にしただけだ。本を読むという行動の本質は変化していない。
 また、この歌詞が非常にあざといというか、「やってきた一人の人」は「君の物語を聞かせて」と言いながら「本を手渡している」あたりも考えさせられる。


 何せこの曲、冒頭から「三行と四文字の空を見上げてる」である。サジェスト検索でもいきなり「考察」が出てくるくらいだ。


kamocho.hateblo.jp


文香担当じゃない奏Pによる「銀河図書館 / 鷺沢文香」の考察レポート | とある奏Pの独白

 
 私自身は「背表紙と分類記号」に一票を投じたい気分。原稿用紙説も面白いけど、それだと「三行“に”四文字」のような気がする。
 そして、ラストに朗読が入るあたりも、いかにも文香の歌っぽい。