忠実移植ではなかったヴァンパイア

 昨日のエントリの微妙に続きっぽい話。

 昔から格闘ゲームのヴァンパイアシリーズは、いい意味でも悪い意味でも、アーケード版に忠実な移植は少なかった。アニメーション枚数が減らされてるとかそういうのはハードウェア的な限界からだろうし、自分の力量ではあまり意識することも少なかったので、むしろポジティブな意味での改変点を意識することが多かった。それも、作品ごとに、ハードウェアごとに違うのである。Wikipediaには結構詳細に書かれているのだが……。



 まず、初代ヴァンパイア。これは元々2D表現が苦手なプレイステーションへの移植だったので、見る人が見たら見劣りしたのかもしれないが、私が驚いたのはオープニングを矢沢永吉さんが歌っていたことだ。もちろんアーケード版にはそんな要素は欠片もない。ゲーム内容には特に変更はなく、使用キャラもステージもBGMも特に減らされてはいなかった。
 実はこの作品の最大の問題は発売時期で、次に述べるサターン版のハンターよりも遅く発売されている。



 セガサターン版のヴァンパイアハンター。元々サターンはプレステに比べて2D表現は得意と言われており、プレステ版の初代と同じく使用キャラも、ステージも、BGMも特に減らされていない。実はアーケード版にほぼ忠実な単独移植というのは、この作品だけである。



 プレイステーション版のヴァンパイアセイヴァー。ハンターですら移植困難とされたプレステでセイヴァーの移植なんて本当にできるのかと思われたが、これが出色の出来。アーケード版のヴァンパイアセイヴァーで削除されたドノヴァン、パイロン、フォボスが使用できる。しかも、ちゃんと3キャラともストーリーモードがついている。この3キャラの「セイヴァー」時点でのエンディングが見れるのは、実はこれと、これのセガサターン版だけで、その後の各種移植作品には一切収録されていない。



 ドリームキャスト版のヴァンパイア総集編。作りとしてはハイパースト2Xに似ており、参戦キャラの性能を過去作から選べる。つまり無印のザベルとハンターのアナカリスで対戦、みたいなことができる。あと、確か無印やハンター、セイヴァーにそれぞれいなかったキャラも、それぞれの時点の性能が再設定されて選択できた記憶がある。ただし、ストーリーモードはEXエディションより劣る。



 プレイステーション2版のヴァンパイア総集編。各タイトルが(ハンター2やセイヴァー2を含め)ほぼ忠実に移植され、それぞれ収録されている。しかし、ドリームキャスト版のようにタイトルを超えた対戦はできない。
 本作の一番の見所は、それぞれのタイトルのマイナーチェンジバージョンであるアレンジバージョンが収録されていること。そして、ヴァンパイアセイヴァーのアレンジバージョンに、恐らく本作唯一で再録されていない追加キャラ「Dee」が追加されていることだ。
 この「Dee」は、はっきり何者であるか言及はされないが、三つ編みらしき髪型、魔剣ダイレクを携えていながらアニタがおらず、技がドノヴァンとデミトリのコンパチであることから、恐らくハンターのエンディング後、魔性の血統に飲み込まれて自我を失ったドノヴァン自身ではないかと推察される。



 CPUモードの最後は、成長したアニタらしき少女とステージが表示され、対戦開始のコールが鳴った直後にブラックアウトして、悲しげなアニタだけが佇むシーンが表示される、悲しいエンディングである。
 ただし、このエンディングは前述のドノヴァンのセイヴァーエンディングとは少々矛盾する。EXエディションのドノヴァンのエンディングでは、セイヴァー時点でのドノヴァンの身に起きていることは、何者かがアニタに見せている悪夢であるという設定になっている。魔剣ダイレクの力を借りてアニタを悪夢から解放するのがセイヴァーのドノヴァンの物語なので、つまりハンターのエンディングより時系列としては前の話のはずなのだ。

 いずれにしても、ドノヴァンというキャラクターの物語を最初から最後まで追おうと思うと、PS1版のセイヴァーEXエディションと、PS2版のダークストーカーコレクションを買わないといけない(どちらも再録なし)のである。


 これ以降のヴァンパイアリザレクション、そしてファイティングコレクションについては家庭用独自の追加要素はないため、ここでは省く。

どんな判断だったのか


 結局、上の動画でも言われてるけど、ヴァンパイアシリーズの一番の失敗というか、大きな謎は、セイヴァー2とハンター2だったと思う。当時アーケードで、セイヴァーにそっくりで使用キャラだけが微妙にズレており、ロクにストーリーの存在しない2つのタイトルを同時にリリースした理由はよくわからなかった。マーケット的な理由か、あるいは新作が作れないという開発リソース的な理由か。
 技術的な理由とは思えなかった。上述のとおり、PS版やセガサターン版に全キャラを収録したセイヴァーが存在するのだ。それをアーケード用に調整したものをセイヴァーのいわば完全版として発売すれば、また印象は良かったのではないかと思う。それにDeeが収録されていればなおいい。
 実際に世に出たアーケード版でいうと、フォボス使いとオルバス使いで対戦しようとしたらハンター2でしかできない。サスカッチ使いとリリス使いが対戦しようとしたらセイヴァー1でしかできない。キュービー使いとパイロン使いが対戦しようとしたらセイヴァー2でしかできない。中身は似たようなゲームなのに、実質3タイトル揃っていないと、全ての組み合わせでの対戦ができないという、非常に不自由なゲームになってしまった。
 先日買ったハイスコアガールDASHでも、日高が使用キャラをフォボスからビシャモンに変更するあたりでその辺の経緯に触れられていた(なお、セイヴァー2とハンター2の存在には全く触れられていない)。



 あの不可解な展開がヴァンパイアというIPのアーケードにおける最後の作品になってしまったのは残念だし、家庭用移植版がまるでその埋め合わせのように各種要素を追加して発売されたのは、興味深いことだと思う。