結成シーンは……


 先日、カモシダパレスの導入部分をかなりポジティブに評価したが、同じ先斗寧による、この怪盗団結成の場面で覚えている違和感は、これまたプレイヤーとして真っ当な感想だと思う。
 この場面はペルソナ5のストーリーの中でも割とツッコミどころのあるシーンだ。カモシダパレスの流れが掴みとしてほぼ完璧だっただけに、続くこの場面の脇の甘さが目立った。


(以下、一応ストーリーのネタバレがあるため折り畳み)




 ここまでのストーリーが鴨志田という存在にひたすら抑圧され続けるストーリーだったのが、急に解放されて、主人公たちが自由に行動し始める。それまでは自分を、仲間を守るために仕方なく戦ってきたのが、自ら獲物を探すようになるという流れがかなり唐突なのだ。
 中でもここは特に賛否分かれるところで、無印の時散々言われたように、竜司の株を下げてしまった場面でもあると思う。露骨に調子に乗っているように見えるからだ。


 そもそも、何故この流れで、ホテルのビュッフェで打ち上げなのか。次のパレスの打ち上げは自宅で鍋だったし、その次は自宅で宿題だった。何故それより前のストーリーで、より豪勢な打ち上げをしているのか。1つには、あそこで大人の醜さを見せて怪盗団を結成するための引きを作るためであるし、もう1つメタな意味でいうと、獅童と顔合わせさせる必要があったからだろう。
 個人的には、この場面はちょっと早かったんじゃないかという気もする。怪盗団を結成するというのは必然だったとしても、狙う対象がいない状態で結成するというのは不自然に感じる人がいてもおかしくない。ただ怪盗団が結成されていないと、班目を狙う流れが途切れる。むしろ班目が個人的に鴨志田と親交が何かあるかして、豹変した鴨志田を不審に思い、怪盗団のメンバーを疑い出して、反撃のために怪盗団を結成するとか、そういうフックの方がまだ自然だったかもしれない(カモシダからカネシロに繋げた方がスムーズだったんじゃないかという意見もあるだろう)。


 ただ、この怪盗団結成の場面をここに持ってきた理由もわからなくはない。実はストーリー全編を通し、怪盗団が(一応)自ら選んだ標的というのは、次の斑目と1つ飛ばしてその次の奥村だけだ。あとは外部の存在によって、否応なく次の標的を選ばされる局面が多い。カネシロ、フタバ、そしてニイジマパレスと、いずれも正体を暴かれそうになるのを止めるため、というのがモチベーションになっているので、マダラメで同じことをやると繰り返しになりすぎるし、プレイヤーたちが自由に動けると感じる場面があまりにも少ない。だから、多少強引であることは承知の上でも、マダラメの冒頭だけは怪盗団に自由意志があるように演出したかったんじゃないだろうか、というのが私の推測である。