ブレイドオブアルカナのシナリオの話(1)

 さて、一昨日のエントリに関連して、ブレイドオブアルカナのシナリオの話の続きである。もし、あの記事を読んでブレイドオブアルカナを新たに遊びたいと思った人がいた時に、少しでも役に立てればと思うが、シナリオの作り方のコツというほど私は経験を積んでいるわけではないし、素晴らしいシナリオを作れる自負があるわけでもない。私自身がブレイドオブアルカナというゲームのシナリオを作る時に気にしていること、ぐらいの温度感で読んでいただけると幸いである。



 まず最初に、今回のロールアンドロールの記事の冒頭にも用語集はあるが、一応このエントリでもブレカナの基本用語の解説を入れておこう。基本的に、他のTRPGでも使われている用語については省略する。

刻まれし者(エングレイヴド)

 全てのPCは刻まれし者(エングレイヴド)である。聖痕(スティグマ)を刻まれた者、という意味だ。PC達は過去・現在・未来の3つの運命を持ち、それぞれについて対応する聖痕が体のどこかに刻まれている。そして聖痕1つにつき、1回のセッションで1回の“奇跡”を起こすことができる。この特別な力を振るうことができる者が「刻まれし者」だ。PCだけに限らず、登場するNPCの中にも「刻まれし者」は存在する。

殺戮者(マローダー)

 セッションにおけるヴィラン(悪役)が殺戮者である。殺戮者もその体に過去・現在・未来の3つの運命を持つが、自らの3つの運命を超えた聖痕をその身に宿した存在である。指輪物語でいうところの指輪に魅入られたサルーマンのような存在で、聖痕を集めるためには手段を選ばず、それを宿す刻まれし者を殺戮して、その聖痕を奪おうとする。
 また、その身に宿した聖痕から、刻まれし者を超える数の奇跡を大量に操ることができる。説得などが効かない、PC達の宿敵だ。

聖痕者(スティグマータ)

 ロールアンドロールの用語集にはないが、上記の刻まれし者と殺戮者を合わせて聖痕者(スティグマータ)と呼ぶこともある。

アルカナ

 「刻まれし者」の現在・過去・未来を表す「運命」がアルカナだ。他のゲームでいうところのキャラクタークラスである。全てのPCは3つのアルカナを持つ。同じアルカナを重ねて取っても問題はない。
 私自身、最初にプレイした時は勘違いしていたのだが、殺戮者はアルカナを4つ以上持っているわけではなく、聖痕を4つ以上持っているというだけだ。奇跡をいくつも使うことはできるが、アルカナはPC同様3つしかなく、アルカナ専用の技能(特技と呼ばれる)はあくまでも3つのアルカナの技能リストからしか選択することができない。
 元々は唯一神アーに仕える22柱の使徒のことを指す。つまり、このゲームの舞台であるハイデルランドの人々は、自分自身の過去・現在・未来のそれぞれを、世界を作り上げた22柱の使徒のいずれかになぞらえているのだ。ちなみに、彼らアルカナは「神々」と表記されることはない。

聖痕(聖痕)

 22柱の使徒(アルカナ)が、闇の鎖との戦いにおいてバラバラに砕けた破片、とされている。聖痕者の身に宿り、奇跡の力をもたらす。それぞれのアルカナに対応した聖痕の形は、ルールブック添付のタロットカードに記載されている。
 

奇跡

 ここでいうところの「奇跡」は、いわゆる一般用語としての奇跡とは異なる。メタ的にいえば、聖痕を持つ者だけが使用できる、ゲーム上極めて強力な効果を発揮する能力である。ただし、その力はトーキョーN◎VAにおける“神業”ほどには強力ではない。特に戦闘中に使用するバトル効果については、ダイスロールが必要で効果がランダムであったり、通常の特技によって阻まれることもある。しかし極めて強力であることに変わりはない。

DP(尊厳値、ディグニティ・ポイント)

 生命力(ヒットポイント)や筋力といった、他のゲームにも存在するステータスについては説明は特に必要ないと思うが、この尊厳値(DP)に関しては説明が必要だろう。
 位置付けとしては、他のRPGでいうところのMPであり、ダブルクロスにおける侵食率、そしてクトゥルフの呼び声RPGSAN値にも似ている。このゲームにおいては正気の度合いというよりは「PCがどれだけ闇に近いか」というのを表す数字である。
 アルカナ固有の特技の中には、代償としてこのDPを消費しなければならないものがある上に、殺戮者の悪徳や、“奇跡”の発動という強力な力の行使を目の当たりにした時に減少する可能性がある。
 DPがマイナスの状態のままシナリオを終了すると、そのPCは「刻まれし者」から「殺戮者」となり、最後に倒した殺戮者の聖痕を奪い取って我が物とし、闇の中へと消えていくことになる。ダブルクロスをご存知の方であれば、ジャーム化するといえば分かりやすいだろう。ただし、このゲームにおいてはDPが減少することによって判定で使うダイスが増えたり、クリティカル値が有利になったりしないので、侵食率と違い低く保つことに特に意味はない。
 またMPではないので、休息を取ったり、宿屋に泊まることで回復することはない。基本的には、殺戮者を倒し、聖痕の解放が起こった時以外に回復することがない。その意味では非常に貴重なリソースである。

 ちなみに、プレイヤーからすると「最後にどれくらいのDPが回復するかわからないから、セッション中にどれくらいDPを使っていいものか判断がつかない」と思われるかもしれない。例えば、今回のロールアンドロールに記載されたシナリオには、DPの回復量が非常に分かりやすく明記されている。シナリオのネタバレとなるため、実際の数値は下記の折り畳み部分以降をご覧いただきたい。他のシナリオでも参考になるはずだ。
 ただ1D10は1D6に比べて結果に揺らぎが生じやすいので、不安になるのであればもうちょっと高めに保っておくといいと思う。もちろん一番確実なのは、聖痕の解放前にDPをプラスに保っておくことなのだが、DMの戦闘バランスにもよるものの、それだと戦闘時にかなり厳しい戦闘を迫られることが多いだろう。
 ちなみに、この点は非常に重要なのでここで強調しておくけれども、得られる経験点を減らして回復するDPを増やす「魂の救済」のルールは、通常のDP回復のためのダイスを“振った後”に追加でダイスを振るかどうかを決定できる。通常のDPの回復を行った後、足りなければ追加する、ということができる点に注意である。

因縁

 天羅万象にも同名のルールがあるが、このゲームにおいては「対象となるキャラクターとの関係性を示すコネクション」のことである。これによって対象となるPC、あるいはNPCとの関係性が規定される。このゲームはPC全員が常に同行しているわけではないため、特にPC同士がどのような因縁を持っているかは、シナリオの展開に大きな影響を与える。



(以下、ロールアンドロール掲載シナリオのストーリーに関係しないネタバレあり)









添付シナリオにおけるDP回復値

 全ての悪徳を目撃していると仮定すると、回復するDPは10D10。魂の救済を選べば最大20D10。期待値を計算すると110である。つまりDPが-110まで減っても、一応期待値を振ればシナリオ終了時に殺戮者にならずに済む。もちろん、魂の救済を選ぶとシナリオ終了時に得られる経験点が減算されるので、それを考慮せず通常の回復であればその半分。つまり-55まで減らしても期待値で生還が可能だ。
 もっとも、普通のセッションでDPがここまで減ることはまずないと思う。例えばグラディウス(剣士)でダメージを+5する特技の代償は3だ。ただし、代償R(1d10)の特技は使いすぎないように注意が必要だ。生還したいのであれば……。