ブレイドオブアルカナのシナリオの話(5)


 間が空いてしまったが、ブレイド・オブ・アルカナのシナリオ作成についてのエントリが中途半端なところで終わってしまっていたので、続きを書く。
 まずブレイド・オブ・アルカナは「特定のシナリオの作り方をするGMと、非常に相性のいいシステム」である。
 これまでTRPGをやってきて色々なGMに出会ったことがあるが、そのシナリオの作り方はいくつかのパターンに分かれると思っている。

EX.キャンペーンの2話目以降

 まずは特殊な例から。それは「キャンペーンの2話目以降」というシナリオだ。特に何話も続くロングキャンペーンの続きだと、GMの頭の中に新しいアイデアがほとんどなくても、前のシナリオの設定の続きを考えることで、必然的にシナリオができていくことがある。例えば、無印天羅などはそれが顕著なゲームである。
 もちろん天羅に限らずとも、連続キャンペーンであれば、例えばライバルキャラが出てきたり、依頼人の家族が出てきたり、敵の組織が出てきたりと、特に意識していなくても既存の設定が伏線となり、それらを使ってシナリオを作ることができるので、単発のシナリオやキャンペーンの1話目を作るよりはハードルは低いことが多い。
 なので、これから述べる事項は、基本的にはキャンペーンの第1話、あるいは単発シナリオの作り方ということになる。

1.再現したいシーンから着想するシナリオ

 1つ目は、再現したいシーンや物語の核となる部分から着想するシナリオだ。例えば、シナリオヒロインと街外れの橋の上で涙の別れをするシーンが頭の中にあって、このシーンに行き着くために逆算してシナリオを作っていくというやり方だ。
 中村やにおさんのサイトで「記憶喪失のハイランダーが、サンタの格好をして袋を持って倒れている」ところから始まるシナリオの紹介をしていたけれども、これもシーンから着想しているタイプだと思う。

2.使ってみたいルールから着想するシナリオ

 次に、システムから着想するパターンだ。トーキョーN◎VAで、カゲの「無面目」という特殊技能を使うゲストを出したい、というアイデアからシナリオを組んだり、ダンジョンズ&ドラゴンズでいえば、幻術を使う魚のモンスターである「アボレス」という敵を出したい、というアイデアから状況を逆算して組んでいったり、などだ。

3.登場させたいNPCから着想するシナリオ

 そして、最後に紹介するパターン。それが「シナリオ中に登場させるNPCブレカナなら殺戮者)からシナリオを作っていくタイプである。話の筋や個々のシーンを作るより前に「どのようなNPCを登場させるか」というアイデアが先にあり、それに合わせて筋立てやシナリオを作成していく。
 このシナリオ作成手法と、ブレカナというゲームは非常に相性が良い。なぜなら、セッション進行のための全てのシステムが「対決フェイズにおける殺戮者との戦闘」に収束するように作られているからだ。ブレカナは敵となる殺戮者を作成してしまえば、シナリオ作成は8割型終わっていると言っていい。

イデアが浮かばないそんな時

 例えば、もしあなたが週末にブレイドオブアルカナのセッションをやろうとしており、しかし不運にも前々日まで何の準備もできていなかったとする。そしてたまたま、やりたいシナリオのアイデアも思いつかない。
 そんな時は、ルールブックに添付されているアルカナカードを無作為に4枚引いてみる。そして1枚を残し、3枚を順番に表にしていく。
 実際に引いてみよう──クレアータ、イグニス、エルス。これが、今回のシナリオの殺戮者のアルカナだ。
 あとは、アルカナのイメージから三題噺のように物語を作っていく。過去がクレアータなので、何者かによって作られたホムンクルス、そして現在が狙撃手ということは、暴走して無辜の人々を狩る殺戮者になっているのだろう。しかもその隣には、彼もしくは彼女に味方する強力な動物がいる。それは乗騎かもしれないし、あるいは空から犠牲者たちを見定める鷹かもしれない。
 依頼主は誰だろうか。そのクレアータを作り出したデクストラ(錬金術師)が、自分の被造物が暴走したことを嘆いてPC達に依頼を持ってくるのか、あるいは逆に、この錬金術師こそがクレアータを背後から操り、殺戮を仕掛けた張本人なのかもしれない。そうなったら次のシナリオの敵はその錬金術師だ……と、アイデアを繋いでいくこともできる。
 もちろん、引いた組み合わせで何も思いつかなかった場合は、いくらでも引き直せばいい。カードはあくまでも「きっかけ」だ。
 ちなみに最後に引いたカードは何かというと、クライマックスの舞台となる場所である。今回はコロナのカード、つまり王宮や領主の館など、支配者のいる場所が、殺戮者と戦いを繰り広げることになる場所である。依頼人が領主で、彼が狙われるまさにその瞬間にPC達が駆けつけたという状況か、それとも領主が錬金術師と裏で手を組んでおり、領主の館において今回の殺戮者と対決した後、PC達は無実の罪を着せられて領地から追放され、次のシナリオへ繋がっていくなどという展開も考えられる。
 
 タロットカードを4枚引き、そこから連想を繋げるだけで、これだけのシナリオの筋書きが作れる。同じFEARのトーキョーN◎VAなどの場合には、さすがにこれだけではシナリオを作ることは難しい。敵ゲストも一人では済まないことが多いし、シナリオの筋書きなどもう少し工夫しないと形にならないのだが、ブレカナはシナリオのステロタイプがあらかじめかっちりと定められているため、殺戮者のアイデアさえ出してしまえば、シナリオ作成の大半がカバーできてしまう。
 もちろん、例で引いたこの4枚のカードのアイデアもストレートに使わず、このイグニスの殺戮者は最初姿を隠しており、別の人間が殺戮者だとPCたちが疑うように仕向けたり、あるいは全く違う事件を追っていくとたまたまこの殺戮者に行き当たるような筋書きを書いたりすることもできる。殺戮が行われる場所が町なのか、森なのか、村なのか、その辺りを考えていっても様々なバリエーションが考えられる。
 最初のアイデアさえ浮かんでしまえば、そこからアイデアにアレンジを加えるのも自由だ。殺戮者の存在はシナリオの中核であり、またシナリオの展開を考えるきっかけになる。最低限そこだけできていれば、シナリオが形になるし、そこから発展させていくこともまた自由にできる。これがブレカナのシナリオが作りやすい最大の理由である。