今巷を騒がせている、角川グループへのサイバー攻撃の話。なかなかコメントするのが難しい話題なので、何度もあれこれ書くことはないと思うけれど「角川グループのサイバー攻撃への備えが十分でなかった」とか糾弾する意見と「いや、角川グループはハッカーに攻撃された被害者なのだから、責めるのはおかしい」という意見の両方が見受けられる。
角川グループのサイバー攻撃への防御が十分であったかどうかは、時間をかけて検証されるべきことだと思う。今のサイバー犯罪の手口が相当に巧妙化していて「攻撃対象となった時に防げる日本企業がどれだけあるか」ということを考えると、少なくとも「出入り口のドアを、鍵をかけずに開けっぱなしにしていた」というレベルではなさそうだ。
ハッカーの手口を今後解析し、これを他山の石として他の企業のセキュリティ対策に活かしていくというのが、月並みだけれども今回の騒動から得られる教訓だろう。現時点で、角川のサイバー攻撃対策をあんまりあれこれ言っても仕方がない気がする。
ただ、それでは角川グループが一方的な被害者か、と言われると賛成できない部分がある。事実関係の裏が取り切れていないが、最初に攻撃を受けた時、顧客に対して「その情報は破棄しているから流出しない」と言っていた情報が漏れていたという話がある。これはサイバー攻撃への対策とかそういったのとは全く別次元の話で「破棄されるべきものが適切に破棄されていなかった」、そして「顧客に虚偽の説明をした」ということになるので、もし本当なら責められるべき点だ。
また、現時点での顧客への説明が十分かと言われると、実際に流出が確認できた情報からしか、流出可能性のある情報を認めていないというのが気になる。「ハッキングされた場所に置かれていたであろう情報は何なのか」というのを、角川グループは把握していないのか? これもまた、サイバー攻撃への対策とは別の次元で「侵入された可能性のある場所に置かれていた情報は流出の可能性がある」という前提で、顧客に説明する責任があるんじゃないだろうか。その説明責任を十分に果たしているかと言われると疑問がある、という感じだ。あくまでも個人的な見解だけれど。
これも個人的な見解です
こちらもデリケートな話題。またしても個人的な見解を述べさせてもらうと、発売中止の署名はやりすぎだと思う。製作者がどのような思想を持っていようが、それが公序良俗に反したり、特定の個人の名誉を毀損するなど、法律に違反するものでない限り、製作者はそれを販売する権利がある。消費者としてできるのはそれを買わないということだけだ。ここで署名することによって対象製品を発売中止に追い込むというような行動が成功してしまうと、今後、特定の思想の持ち主によってその刃を恣意的に振り翳される前例となる可能性を否定できない。
ただし、こちらも製作元が完全に無謬かというとそうでもない。著作権を無視して無断でネット上にあるデータを使用するのは論外として、今論議を呼んでいる史実問題。「製作者はちゃんと作品の冒頭で「これはフィクションだ」と出している」という意見もあるが、製作者はこれを(原文で確認できる限りでも)「史実を元にしたフィクション」とは言っていて、その元になっている「史実」に誤りがあるのではないかという疑問はある。
元となる事実の裏を十分に取らない状態で「これは史実を元にしたフィクションだ」と主張するのは、これを史実だと主張するほどひどくはないが、誤りは誤りだ。謝った事実認識にさらにフィクションを載せているので、日本人から見るとあまりにも違和感がある作品になっているのではないか。しかし、それも「この作品はフィクションであり、歴史的事実には一切基づかない、日本っぽい雰囲気の完全なファンタジー作品です。主人公の設定はマーケットを考慮して設定したもので、史実とは一切関係ありません。架空の人物です」と銘打ってしまえば、それで終わる話だと思う。