汎用システムとはうごごご

汎用RPGシステム 日本での歴史


 日本の「汎用システム」っていうのは「基本のルールシステムを共通にして、判定方法や用語など覚えるルールなどを減らそう」という発想からきてるように思う。海外のだとBRPはそれっぽい。

ガープスの場合

 GURPSは「GURPSのルールシステムであらゆるTRPGのあらゆる事象を表現するのが目標」だとルールブックに書かれている(直訳ではないがガープスベーシック完訳版P7の記述などから)。ただ、その割には判定システムとかが割とファジィっていうか適当で、その意味でぶっ飛んだのは判定システムに数学の思想(「対数システム」)を持ち込んで「目標値は対数表示、石ころを投げる判定から地球を割る判定まで全て数学的に導き出せる」と謳ったTORG。実際、TORGでは「距離や質量など判定の基準が10倍になると判定値が+5」というルールがあるため、地球質量を計算すれば地球も割れる(理論上は)。
 また、GURPSは上記のような目標のためのシステムで、覚えることを減らそうという発想から来ていないのでシステムそのものは決して単純ではない。目を攻撃する時の攻撃オプションが存在したり、有利な特徴によって技能習得の必要CPそのものを変更したりなんていうルールは、日本人の汎用システムの発想では出てこないだろう。

アップルベーシックの場合

 日本独自の汎用システムでいうと、昔どこかで読んだのが冒険企画局の「アップルベーシック」(今冒険企画局の主流である「サイコロフィクション」とは別物)の特異性の話。例えばアップルベーシックの作品「光と闇のレジェンド」を見てみると、得意分野のスキル値はせいぜい6である。そしてこのゲームの判定は「ファクターもしくはスキルと同じ回数ダイスを振ってゾロ目が出たら判定に成功」である。この時点でスキル値6の判定の期待値が暗算で出せた人はかなり数学が得意な人だろう。1回振ってゾロ目が出る確率は6分の1、6回振って1回でもゾロ目が出る確率は、1−(5の6乗/6の6乗)=約67%である。
 得意ジャンルでも3回に1回は必ず判定に失敗するシステムなのだ。しかもこの成功確率は「GMが感覚的に捉える」ことが難しい。なので、私が読んだ記事には「アップルベーシックはプレイヤーがGMに積極的に成功をアピールするシステムなのだ」と書かれていた記憶がある。

マギウスの場合

 実際には一番シンプルな判定システムを持つのは富士見書房の「マギウスシステム」だろう。これはSWからレーティング表とクラススキル制を取っ払ったようなシステムで、極めてシンプルな作りだった。はっきり言って、初心者が蓬莱学園をやるなら公式の蓬莱学園TRPGよりマギウス蓬莱学園をやったほうがいい、と言われていたほどである。


 いずれにしても、いろいろな汎用TRPGシステムに触れてきて思うことは「一つの会社/デザイナー集団/グループ」で管理できる汎用TRPGシステムは一つが限界だ、ということである。グループSNEはGURPS2D6システム両方に手を出してどっちも中途半端だった印象があるし、FEARもNOVA・Dを汎用部分の「コアシステム」とそれ以外に分けて記述していたが、コアシステムを利用したNOVA以外のゲームは結局出なかった(個人的には熱望していたのだが……)。冒険企画局がサイコロフィクションにシフトした時、アップルベーシックをすっぱり切ったのも賢明というか、必然だったのだろう。