ルナーになれなかったトルアドネス?

 ガープスルナルのルールブックを最初読んだ時の印象は「面白そうだな、いろいろなシナリオが作れそうだ」だった。
 PCたちは全員様々な神殿に属する入信者で、神殿を依頼主にすれば導入はできそう、ダンジョンシナリオをやろうと思えば、空に龍の残骸が浮かんでいて体内が迷宮となっているという、既存のファンタジーRPGとは一風変わった設定が魅力的…。

 しかし、実際にシナリオを組む段階ではたと困った。ルナルの神殿同士は、敵対関係、いや対立関係にない。シナリオ上は「悪魔」と呼ばれる黒の月の信者や闇タマット神殿などが敵になるが、PCたちには彼らと戦う理由がない。PCたちの立場は「入信者」なのだ。
 また、迷宮に潜る理由も同じだ。PCたちは何故龍の遺跡に潜るのか? そこに迷宮があるから、という理由だけでは通用しない。PC間対立を起こさないために対立構造そのものを消してしまったせいで、PCの動機付けがなくなってしまったのだ。

 PCは何のために冒険に出るのか? ルナルのPCは神に仕える身で、神殿から与えられた役割がそれぞれにある。日常のなかで果たさなければならない仕事がある。それを差し置いても出かける理由は?
 「冒険者だから」でいいじゃない。という人もいるかもしれない。確かにその通りだ。PCが自発的に冒険に出るというのであれば。しかし、必ずしもそうとは限らないだろう。PCが受け身に回って、依頼を待つ姿勢になったらどうするか。(*1)
 トルアドネスがルナーのように冒険者の敵となる悪の帝国ならば、PCをレジスタンスにすることでシナリオが成り立つだろうが、そうではない。また同様に、ルナルの神殿はグローランサの神殿の役割を果たせない。対立しあっていないせいで、何かの事件が起きた時、積極的に解決に回るのは唯一ガヤン神の神官(法の番人、警察)だけしかないのだ。

 いったいどんなシナリオを組めば、教義もバラバラ、目的もさまざまなPC達を同じ舞台に立たせることができるのか…。
 何と次回へ続く。


(*1)断っておくと、この時代のゲームではこれが普通だった。ただ、神官は冒険者と違い、問答無用でダンジョンに立っているという導入が使いにくかったのだ。