世界樹の迷宮3とアリアンロッド

 世界樹の迷宮3のエントリが全然ないからといって、プレイしていないわけではなく、前にも書いたとおり「大航海を一切やらずにどこまで進めるかチャレンジ」の途中である。今はメイン、控えのメンバーともに「2回目のレベル70」に向けて鍛錬の真っ最中だ。またちょっとギルドカードを集めてみたら、全員レベル99というギルドが二つ、そして今までは一枚もなかった「ショーグンもしくはアンドロをメンバーに入れているギルド」が両方ともあった。さすがに発売からこれだけ時間が経つとやり込んでいる人も増えるなぁ。

 さて、その世界樹3の目玉のシステムの一つ、サブクラスシステムについて、ちょっと変わった視点から考察してみたい。

 実は、このサブクラスシステムはアリアンロッドというTRPGのシステムによく似ている。パクったとかインスパイアされたとかオマージュだとかそういう話ではなく(それをいったらアリアンロッド自体が…あわあわ)、恐らくたまたま似たのだろう。似たようなシステムになったのにはちゃんとした理由がある。

 まず、キャラクタークラスを複数取れるTRPGというと、実は日本で三番目に古く、日本で一番有名なTRPGであるソードワールドTRPGが、いきなり一人のキャラクターで複数のクラスを取れるシステムである。コンピュータRPGではあまり類を見ない「複数クラスのシステム」だけど、TRPGだと黎明期から存在するわけだ。
 理由は実に単純。キャラクター作成システムを持つコンピュータRPGの場合、プレイヤーはパーティメンバー全員を作成できる。つまりプレイヤーごとのオリジナリティを出そうとするなら、一人のキャラクターが一つのキャラクタークラスしか持てなくても、その組み合わせ、パーティ編成でオリジナリティを発揮できる。
 ところがTRPGの場合、当たり前だがプレイヤー一人につきキャラクターは一人しか作れない。つまり、キャラクター作成における選択の余地は「一人のキャラクターのキャラクタークラス」しかないわけで、一人一つしかクラスを持てなければ実質はキャラクタークラスの選択だけでキャラクター作成における選択は終わってしまう。それではキャラクターを演じる上でもその他の面においても、プレイヤーごとのオリジナリティを発揮しづらい。これがTRPGで複数クラス制が普通な理由である。

 さて、一人のキャラクターが複数のクラスを持てるTRPGは確かに珍しくないが、スキルシステム制を導入していて持っているクラスの中から自由にスキルが選択できるゲームとなると、かなり後になるまで出てこない。私の記憶にある限り、その嚆矢はトーキョーNOVAである。NOVAは一人のキャラクターにつき三つまでクラスを持つことができ、その中から自由にスキルを選択できる。NOVAが先鞭をつけた理由もはっきりしている。NOVAには「技能の組み合わせ」という概念があったからだ。
 トーキョーNOVAは判定にトランプを使うゲームである。技能には自由にトランプのスート(ハートとかスペードとかのあれ)を割り振ることができ、判定の際には使用する技能とスートのあっているカードを場に出し、能力値を加算することで判定を行う。ということは、普通に考えればスートはバラバラに取ったほうが有利になる。手札にどんなスートのカードが来ても活用できるからだ。
 しかし、それでは選択の余地がなくて面白くない──と製作者が考えたかどうかはわからないが、トーキョーNOVAにおいては「スートが合致している技能は組み合わせて使用することができる」というルールがあるのだ。
 例えば(昔の版であるが)<メレー(近接戦闘)>+<ファイヤーアーム>+<二刀流>+<走破>+<回避>で「敵の銃弾を避けながら銃を撃ちつつ走ってマンホールの蓋を蹴飛ばし、その中に滑りこむ」(これ全部で一回のアクション)なんてこともできた。
 カードのスートの種類をバラけさせて様々な状況に対応できるようにするか、それともスートを絞っていわば自分だけの必殺アクションを編み出すかという概念が、この時生まれた。

 次に同じ会社から「ブレイド・オブ・アルカナ」というTRPGが発売された。こちらは判定に使うのはカードではなくダイスだ。従ってNOVAの時のようなジレンマは起こしようがない。では、どこに考える余地、選択の余地があるかというと、今度は技能に「代償」がつくようになった。HPが減ったり尊厳値(正気度みたいなもの)が減ったり、支払うべき代償とのバランスで使用する技能を決めるようになったのだ。
 ダブルクロスというゲームもこれと似たようなシステムを持っている。

 そしてその次に現れたのが…アリアンロッドRPGだった。(次回以降に続く)