追記2


 野尻さんが「自分の思うセカイ系」を語ったからというわけじゃないけど、私も上で書いたとおり、自分なりのセカイ系の定義を持っていた。代表作は野尻さんと同じで最終兵器彼女、っていうことになっちゃうんだけどw


 私の定義は簡単で、社会を描いてないとか主人公が無気力だとか戦闘美少女がどうとかまったく関係ない。「雲の向こう、約束の場所」がセカイ系だといったのと繋がるんだけど、作中の台詞にこんなのがある。

「セカイを取るか、彼女を取るかだ!」

 ……この選択肢が作中に存在するのがセカイ系だと思っている。加えていうなら「セカイと彼女どっちをとる?」という局面で彼女を選んじゃう/選ばされる作品、というべきだろうか。
 だから「雲の向こう、約束の場所」「最終兵器彼女」は当然入る。「イリヤの空UFOの夏」は入るかどうかギリギリ。「マトリックス・リローデット」も私の中ではセカイ系だ。マイナーなところだと「なるたる」とか「沙耶の唄」が入る。
 ブギーポップエヴァほしのこえやAirは入れるつもりはない(麻枝作品で入れたいのはエンジェルビーツだけ。これも今後の展開次第だけど、後の作品はとりあえず、世界全然関係ないよね)。

 私は「セカイ系って何なの?」と考え出した最初のきっかけは、最終兵器彼女を読んで、結末に納得がいかなかったことが発端だ。
 読んでいる若者がどうこうとか社会問題にまで無理矢理結びつけるつもりはさらさらなく、ただ「この作品、オチぶん投げかよ!」という印象だった。私は元々バッドエンドが嫌いだし、最後にセカイが滅んで終わりだなんて完全に話投げちゃってるようにしか見えなかったのだ。私にとってのセカイ系作品として他に挙げたものは全て、結末まで読んで/観て「えええええ」という感想を抱いた作品ばかりである。
 イリヤが微妙だといったのは、あのオチは私の中では凄く納得のいく終わりだったためだ(浅羽はイリヤと世界のどちらを取るかと言われてイリヤを選ぶけど、結局残ったのは世界の方。もっといえば選択肢そのものが罠だったんだが)。
 
 そんなわけで、セカイ系という作品にいい印象を持っていないのは私も野尻氏とあんまり変わらない。でも、だからこそ野尻氏がツイッターでああいう発言をした以上、どんな作品をセカイ系だと考えているのか、なぜ若者がそれに耽溺するのをまずいと思っているのか知りたかった。いや、もっといえばそれを主張したいならツイートじゃなくて作品で語って欲しかったというのが本音だ。


 作家は言葉を操る職業だ。それがどんなに強力な武器となるか、どんな影響力を持っているか知っているという意味ででは人後に落ちない職業のはずだ。だから私もその発言にはどうしても厳しい評価を下す。強力な武器であるからこそ、無闇に振り回してもらいたくない。私たちのような、無数の有象無象のざわめきの一つとは訳が違うのだから。