コンチェルト考察2

 アリアンロッドの面白いところの一つは、ギルドという運命共同体があるため、バランスをギルド単位、パーティ単位で考えられるところにある。


アリアンロッドRPG  スキルガイド


 先日の話で、シーフが前衛になるか後衛になるかは他のメンバー次第だという話をした。実はそれは上級ルールで導入される上級クラスを見れば一目瞭然なのだ。


基本クラス・ウォーリア
 上級クラス・ウォーロード
        ナイト

基本クラス・アコライト
 上級クラス・プリースト
        パラディン

基本クラス・メイジ
 上級クラス・ソーサラー
        ウィザード

基本クラス・シーフ
 上級クラス・エクスプローラ
        スカウト


 このうち、ウォーリアとそれから派生する二つの上級クラスはすべて前衛であり、メイジとそれから派生する二つの上級クラスはすべて後衛である。
 鍵を握るのはアコライトとシーフだ。アコライトの上級クラスのうちパラディンはウォーリア系に匹敵する前衛職業であり、アコライトの支援能力を保持しつつ近接戦闘能力も高いクラスである。反対にプリーストは支援能力に特化し、前衛に立つのは厳しい。
 シーフはどうかというと、エクスプローラーは(ブレイクシリーズのナーシアがそうであるように)近接攻撃を得意とするトリッキーアタッカー、スカウトはベネットが代表するような遠距離攻撃能力の高いクラスである。
 つまり、前衛2人、後衛2人というパーティを作るなら、アコライトがパラディンになるならシーフはスカウト、プリーストならエクスプローラーというように、パーティメンバーの能力に合わせて選択肢を選ぶ必要がある。コンチェルトのPTでいえば、ラミリーズのサポートクラスがレンジャーであるため、ゆくゆくはスカウトを目指すのだとすれば、主人公のセシルはパラディンを目標にするのがいい、ということになる。


 ──ラミリーズのバランス感覚によれば、だが。


 ラミリーズの言っていることは至極一般的ではあるのだが、実はアリアンロッド・サガシリーズにおいてはこの法則、つまり前衛2人後衛2人というバランスに従ったパーティになっていない(笑)。


 サガ・パーティはウォーロード、プリースト、ウィザード、スカウトというワントップの編成である。ウォーロードであるアル以外、前衛に立てる人間がいない。よってアルは「アタッカー兼防御役」という役目にある。驚くべきことに、このパーティには防御を得意とするクラスのPCが一人もいない。アルの高火力とピアニィの超火力によって倒される前に敵を撃滅することに特化したパーティである。ピアニィ王女が殺意が高い高いというのは演出上の理由だけではなく、ギルドそのものの傾向がそれを体現している。


 逆に、サガブレイク・パーティはサガ・パーティで選ばれなかったクラスが選ばれているため、ナイト、パラディンソーサラーエクスプローラーというスリートップの編成になっている。こちらの特徴は、恐るべき防御能力の高さだ。何しろ防御専業クラスが2人もいるのだ。ゼパ爺の「ダメージは、ゼロじゃ」という決め台詞もいわば当然で、ワイドプロテクションを駆使したダメージ軽減手段の豊富さゆえ、並みの相手では噛ませ犬にもならない。そのため、GMである鈴吹社長はほぼ毎回、戦闘に仕掛けを施し緊迫感のある戦闘を演出できるようにしているのである。リプレイを読むと、ブレイク・パーティは「正面から敵と殴りあうだけ」の戦闘はほとんどしていないことがわかるはずだ。


 これがもしオンラインRPGであれば「最適解以外はなし」になるかもしれない。しかし、TRPGはそうではない。卓のコンセンサスを得ることさえできれば、あえて最適解を外してみるのもまた、面白さの一つなのだ。