昨日のエントリの続きである。
クラシックD&DからTRPGを始めたオールドゲーマー(ルビ・老害)としては、神々の世界というとどうしてもクラシックD&Dの「イモータルルールセット」を思い出してしまう。ベーシックルールセットが赤、エキスパートが青、コンパニオンが緑、マスタールールが黒い箱だったクラシックシリーズの最後を飾る、36レベルのPCの前に広がる神々の世界のルールセットの箱の色はなんと「金色」。D&D以外のゲームが指折り数えるほどしかこの世になかった頃の私は、この金色の箱の日本語版が発売されるのを切望していたが……結局それは、翻訳されることはなかった。
まぁ、今にして思えば無理もない話なのかもしれない。レベルが上がると活動範囲が広がっていく*1ファンタジーRPGの世界において、(アリアンロッドやアルシャードと違い)D&Dの神々の世界というのは本当に人間の世界とは何もかもが異なる世界だった。ただでさえ現代地球とは異なるファンタジーの世界の法則に加えて神々の世界の法則が加わり、理解するのは本当に大変だった。
マスタールールセットの記述と私のおぼろげな記憶によれば、PCたちがいる世界はプライムマテリアルプレーン、その隣にイセリアルプレーンと呼ばれる世界があり、そのさらに外側にアストラルプレーンと呼ばれる「宇宙」が広がり、そこに4大エレメンタルプレーンなど異世界がぷかぷか浮いているようなイメージだったと記憶している。で、天使だの悪魔だのはさらにその外側の世界(アザープレーン)からやってくるという、壮大な設定だった。サプリメントによっては魔法のシールドを張った帆船でアストラルプレーンの宇宙をスペースオペラよろしく航海していくようなキャンペーンもあったはずだ。
確かに凄い世界なのだが、そこまで到達できたプレイグループが日本語環境で果たしてどれだけあったのだろうか。インターネットもない時代、自分以外のプレイグループがどんなプレイをしていたかはわからないが、D&Dでプレイしていた初期のロードス島戦記でもレベル15を超えたことはない(イモータルルールセットの対象はレベル36超)。イモータルルールを使ったリプレイというのも寡聞にして知らない。
というのも、そのイモータルに到達するための方法が4通りあるのだが、どれも欧米製らしい大味さで、大帝国を築き上げるとか伝説に残るマジックアイテムを作るとか、記憶を捨ててレベル1からやり直す×全ジョブとかライバルをみんな薙ぎ倒すとか、どれもこれも難易度が半端ない……というかそれ以前にどうすればいいのか見当がつかないものばかりなのだ。
つまり、イモータルルールセットを翻訳販売しても、あまり需要がないと判断されたのではないだろうか?
実はその前の黒箱もレベル25〜36と対象は超高レベル環境*2なのだが、高レベル向けルールだけではなくレベル1から導入可能な重要ルールが追加されていたので、低レベルしかない環境でも買う価値はあった。
それが、どんなにレベルを上げても固定ダメージだった武器のダメージを習熟度によって変える「ウェポンマスタリールール」(武器習熟度)である。クラシックD&Dに詳しい人によれば「D&Dで一番面白いのはレベル3〜7でガゼッタ、ウェポンマスタリールールを適用した環境」なのだそうだ。
閑話休題。私自身は金箱の中身がどのようなものであったのか正確には知らないまま今日に至っている。しかし和製TRPGにおける神々の世界が「アインヘリアル酒場でアインヘリアル村人がアインヘリアル村娘をさらったアインヘリアルゴブリンを倒してくれと依頼してくる」(ここまでは大袈裟だが……)ような内容になっているのは、冗談や揶揄ではなく、分かりやすさという観点からは、意味のあることなのかもしれない、と感じた次第である。
- 作者: 井上純弌
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- メディア: おもちゃ&ホビー
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