歌わせてもらえないカナリア

歌を忘れたモバイルPC


 うーん。
 確かにWifiの使えない場所では即3G回線で繋がるモバイルPCっていうのがあれば便利だとは思うのだけど……。
 山田さん自身もちょっと触れているように、モバイルPCにSIMスロットが搭載されない理由は、ベンダー側の都合というよりキャリア側の問題が大きいような気がする。

 まず、そもそもSIMカードそのものが物理的に頻繁な抜き差しを想定しているハードには見えない、っていうのがある。ペラペラで脆そうだし、基盤も剥き出しだし、抜いたり差したりしてるうちに傷だらけになるか折れるかしてしまいそうな不安を感じる。

 次に、キャリアの料金体系が複雑すぎる。少なくとも大手3社のデータ通信用料金体系を見る限り「月額この料金さえ払えばどんなに使ってもいいよ!」という料金コースは見当たらない(私に見つけられなかっただけかもしれないが、それもどの会社も料金体系表が複雑でいろいろなコースがありすぎるせいだと思う)。使い放題を謳っていても実際にはデータ転送量に従って制限がかかったり、定額じゃなくて段階的定額制だったりする。もちろん、現状のトラフィックで使い放題にされたら困るから必然そうなるのかもしれないけど……。
 今のウェブページはブロードバンドを前提にして、データ量がどんどん大きくなっている。画像を使った広告枠がいくつもあるのは当たり前、広告で全画面動画を流すページもあるくらいだ。ただHPを見ているだけで、あっという間に転送上限に達してしまうだろう。まだまだ移動回線は固定回線に及ばないのが現状だ。

 携帯電話としての使用を前提とするスマートフォンは別として、例えば重さ600gのiPadの3G版とWifi版は、どちらがどれだけ売れて、どれだけ通信回線が利用されているものなのだろうか?(私の周りでiPadを買った人は皆Wifi版ばかりだ)今の業界のトレンドだと(私にとっては残念なことに)たいていのモバイルPCは600gより重い。重い分だけ移動中に使おうとする人の数は少なくなるだろう。移動しながら使うのでなければ、移動途中にWifiがなかったとしても、移動前と移動後の場所にだけWifiがあれば用は足りる。

 これは非常に個人的な印象なのだが、もし「3G回線でいつでも通信可能なモバイルPC」に高い需要があるのなら、NECのLifeTouchNoteや東芝のDynabookAZがもっと売れて、今頃後継機種が出ているはずなのでは? と思うのだ。どちらの機種もその気配がないどころか立ち消えになってしまいそうだということは、ヘビーユーザー以外需要がないということなのかな、というのが、私の正直な印象だ。非常に残念でならないのだが……。