ウィザードリィの話

ウィザードリィ系ゲームについて語らうず(リンク切れ)


 このブログでウィザードリィについて語るのはこれで何度目だろう(笑)。とはいえ、いきつけのサイトでウィザードリィの話題が出たとあっては、語らねばなるまい。

ウィザードリィは難しい?

 ウィザードリィというゲームが紹介されるとき、たいてい難易度の高さが特徴の一つに挙げられる。リンク先でもそう主張している人がいるし、ウィザードリィルネサンスプロジェクトに関わった人たちもそう考えていた節がある。しかし、いきなり混ぜっ返すようで申し訳ないが、私にはウィザードリィの魅力は「難易度が高い」点にあるとは思えない。そもそも、ウィザードリィシリーズで難易度が高いのは正規ナンバーの4くらいではないだろうか。*1
 ウィザードリィで「まともにやると倒すのに数時間」(FF12のヤズマット)とか「初見はほぼ必ず殺される」(FF5の神竜)、「知らないでセーブするとほぼハマる」(FFTのリオファネス城)みたいな状況はほとんどない。ただ、開幕ラバディからのマダルト直撃とか、ティルトウェイトで爆散とか、おおっとテレポーターで石の中といった「偶発的に死ぬ」状況が起きやすいだけだ。これらも対処法ははっきりしており、リセットの覚悟、あるいはマニアックモードを選びさえしなければ回避は不可能ではない。チョコボに乗って雷を100発避けるよりよほど簡単だ。
 では、ウィザードリィの面白さとは何かといえば、それは難しさではなく、自由にパーティを作成し、思いのままに成長させられることにある、というのが私の意見だ。思い通りに成長したパーティを使い、プレイヤーの望むままに状況を制御する。真っ裸の忍者6人でアイテム欄が全部埋まるまで宝箱を開け続けてもいいし、ティルトウェイト54発で敵を原子に分解してもいい。全ては自由だ。
 そう、“自由”なのだ。どんな風に作ってどんな風に進めてどんな風に終わらせてもいい。それこそがウィザードリィだ。前にも書いたとおり、だからこそ「ワードナを倒す」「タイロッサムを倒す」「宝珠を持ち帰る」という明確な理由が必要なのだ。ちなみに、評価がそれなりに高いとされるPC版の「戦闘の監獄」に私が今一つハマれなかったのは、パーティが何のために迷宮に潜るのかよくわからなかったからである。

1が一番面白い?

 次に、この手の話題が出ると必ず現れる「ウィザードリィは初代こそが至高」という意見について。初代が元祖にして原点であることはもちろん疑いがないのだが、一番面白いのは初代、という人には「他やったことあるの?」と聞きたい。もちろん、シリーズ後発作品の多彩(かつ複雑)なスキルの存在や、めいっぱい増えた職業については好みが分かれることは重々承知の上だ。
 後発作品をプレイしてから初代に戻ると、一番ストレスが溜まるのが「パーティメンバーの4人目以降が、呪文以外戦闘中にやることがない」ことだ。武器に射程距離の概念がないため、後列から敵に攻撃することができないからだ。弓などの遠隔射程武器もないので、武器で意味のあるステータスは「ダメージ」のみとなり(低レベルでは攻撃回数にも重要な意味があるが、こちらはレベルが上がるとどのみち頭打ちとなるので高レベルでは死にステータス)、結果的に選択の余地もない。
 しかし、外伝1、2や5のように武器に射程距離の概念が導入されると、ダメージは低めだが敵後列を攻撃できる武器を選ぶか、ダメージは高いが敵前列しか攻撃できない武器を選ぶかという選択の余地ができる。敵も大型サイズになるとこちらの後衛を容赦なく殴ってくるので、後衛のアーマークラスも死にステータスにならない。

 その他様々な要素を合わせて考えても、シンプルなウィザードリィが好きな人にとって最高のウィザードリィは「外伝1」だと私は思う。外伝2も面白いが、私は1の方が好きだ。舞台がお馴染みのリルガミンだし、初代をリスペクトしている点もポイントが高い。

では、そうではない人は?

 ウィザードリィシリーズのもう一つの魅力は、見覚えのある武器、聞き覚えのある呪文が登場し、過去作と同じフィーリングで扱える安心感だと思う。この点では、ドラクエシリーズすらウィザードリィに及ばない。基本システムが固定されていること。後発作品は、この基本システムを変えずに、いかに新しい要素を追加できるか。古いものを壊さず、新しいものを死に要素にせず、そして全体のバランスを崩さない。ここに制作者のセンスが問われる。創造性や革新性ではなく、バランス感覚こそが最も重要となる。
 その意味で、エクスとエルミナージュはファンの期待に答えた双璧だ。私の好みに合ったのはエルミナージュの方だったが。

 エルミナージュで特に感心したのは、外伝シリーズや正規ナンバーシリーズの後半で問題になった「武器攻撃と魔法攻撃のバランス」が補正されていたことだ。ぶっちゃけそれまでは、レア武器の発掘とともに上がり続ける武器攻撃の威力と、修得時から変化することのない魔法攻撃の差が開きすぎ、かつ後半の敵のほとんどが高い呪文抵抗を持っているため、なおさら魔法攻撃を使う機会がなく、魔術師呪文で使うのはデュマピックとマロールとリトフェイトだけ、みたいな状況になっていた。
 これをエルミナージュでは、「呪文無効化能力を無視できる能力」と「魔法の威力を上げられる護符」で解決した。護符については、装備ジョブを限定することで「侍や司教に転職せずあえて魔術師のままでいる」メリットも残した。このバランスは絶妙だと思う。
 また、エルミナージュではお布施で経験値を稼ぐことができるため「冒険に出ないでレベルを上げる控えのメンバー」が作れること、そしてウィザードリィシリーズと比べると完全な追加要素にあたる練成システムも、結果的にパーティ編成の幅を広げ、元々のウィザードリィの「自由」度をさらに増していた。続編のゴシックで評価が爆落ちしたのも、その辺を勘違いしていたからだろう。ウィザードリィの魅力が、単にゲームとして難易度が高いことにあるのなら、自由度を削ぎ落として不自由にしたゴシックの評価は上がらなければおかしいが、実際はそうはならなかった。ウィザードリィファンは難しいだけのクソゲーを遊びたいわけではないのだ。

 エクスについては評価を避けたい。持っているし遊んでもみたが、ランダム生成されるダンジョンについていけず途中で放り出した口だからである。

ウィザードリィ世界樹

 ウィザードリィ世界樹の関係についても一言触れておこう。

 ウィザードリィ世界樹シリーズは、同じ3DダンジョンRPGだが中身はかなり異なる。しかし、そもそもキャラクター作成のできる3DダンジョンRPG、というタイトル自体が少ないので、2つをくくって挙げられることが多いのだろう。
 世界樹シリーズの面白さはたぶんに「パズル的」あるいは「シミュレーションゲーム的」であり、取得経験値とレベルアップの必要経験値の関係から、あえてレベルを適正より上げて敵を粉砕するなどの選択肢が採りにくいケースが多い(FOEを避けるのがかなり重要になる2に顕著)。パーティ編成には幅があって戦術はプレイヤーによって違いがあるものの、攻略の幅はウィザードリィほど広くなりにくい。
 象徴的なのが迷宮マップで、世界樹は隅々まで歩かないと次のフロアに行き着かない構造になっているため、誰が踏破しても大体同じルートを辿るしかない(宝箱を取るか取らないかの違いくらい)。ダンジョントラベラーズもこのタイプだ。これに対し、ウィザードリィのマップは玄室タイプであり、部屋とそれを繋ぐ通路によって構成されており、必要なところ以外は無視もできる。
 言い方を換えると、ウィザードリィのマップはすごく「TRPG的」なのだ──TRPGにおいてはダンジョンシナリオにおける一方通行の扉はPCの危機感を煽るために存在する。「2回目に来たときショートカットできるように、最初だけは反対側からしか通れない」なんて扉、TRPGで登場することはまずあり得ない。
 恐らく、ウィザードリィタイプ以外の3DダンジョンRPGの多くにマロールやティオメンテのような「移動魔法」が登場しないのも似たような理由によるのだろう。そもそも、MPというステータスがあって魔法によって一定量を消費するタイプのRPGと、ウィザードリィのように特定の階位の呪文が一定回数のみ使える、というタイプのRPGでは、個々の魔法の位置づけも異なるだろうが。──個人的には、マロールがなく同じ道のりを何度も歩かされるのは非常にきつい(笑)。


ウィザードリィってなんでヒットしたの?

*1:たまにディンギルのダイヤモンドドレイクみたいな頭のおかしい敵もいるが。