とても嬉しいが、しかし……


 ゲーマーズ・フィールドの最新号に、ブレイド・オブ・アルカナ・クラシック(仮)の広告が出ていた。
 打ち切られたと思っていたブレカナで新作(旧作の復刻?)が出るのは嬉しいし、さらにそれがクラシックという名前で初代を復刻した形で出るというのも、個人的には嬉しいニュースだ。ちょっと気になるのは、広告記事に集大成と書いていて「これを出して最後」みたいな話にならないか、そこだけが心配だ。

 ブレカナの初代が好きだというのは、実は3rdエディションに実装されていた「エピックプレイ」というオプションルールが割と苦手だったからだ。殺戮者(マローダー)化というシステムや経験点チケット制とうまく嚙み合わず、解決手段が自分の中では全く思いつかなかった。



 どういうルールかというと、歴史の中のそれぞれのプレイヤーキャラクターの立ち位置を描いていくようなイメージで、特定の年代から年代までの、任意のタイミングでシナリオを作ってよいというものだ。最も大きな特徴は、未来を描いた後に過去に戻り、また過去を描いた後にさらに未来へ行くといったような、年代をジャンプするようなシナリオでキャンペーンができるというのが売りなのだが、これが基本的に不可逆な「尊厳値を失ったPCはマローダー化する」というシステムと相性が良くない。
 例えば1060年に最初のシナリオで登場したPCが、1070年の2本目のシナリオをプレイした後、1065年の3本目のマローダー化した場合、2本目の1070年にはそのPCは既にマローダー化していたはずで、取り扱いをどうするかという話になる。また、その後4本目の1068年のシナリオには当然参加できなくなるし、逆に時間を遡って1062年のシナリオをやった場合、マローダー化は1065年と確定しているのだから、1062年には絶対にマローダー化しないという話になってしまう。
 これはマローダー化だけではなく、死亡時にも似たような状況にはなり得るが、ブレカナの場合世界観として転生が存在するため(アルカナ「フィニス(不死者)」を除く)、マローダー化の方がキャンペーンに与える影響が大きい。マローダー化すると転生することもできず、キャラクターが完全に失われる。もちろん、ルール上もそれは想定されているが、ルールブックには「マローダー化したらそのキャラクターは二度と使用できない」と記載されているだけなので、キャンペーン上、ストーリーをどう扱えばいいのか整理がつかなかった。



 その点、初代は非常にシンプルだ。普通のゲームと同様、時間の流れは過去から未来に向かって進み、遡ったり飛んだりすることは基本的に想定しない。私も過去話とかをやったことがあるが、PCは全て変更してもらい、関係者のエピソードなどにしていた。
 もちろんキャラクターが死ねばそこまでだし、マローダー化も同様である。ブレカナは経験点チケット制がシステム化されたかなり初期のゲームで、チケットの扱いがかなり厳格だった。PCが死亡すると、GMがレコードシートに死亡した旨の記載を行い、添付されている経験点チケットの半分の値の経験点チケットとして、次のPCを作成することができた。逆にマローダー化すると、キャラクターレコードシートはGMに没収されて戻ってこない。エピックプレイと違い、この扱いは非常にシンプルで分かりやすい。



 あと初代ブレカナの思い出というと、PCの転職(アルカナの変更)システムも非常にインパクトがあって記憶に残っている。
 トーキョーN◎VAの転職システムは、例えばクグツ(企業工作員)のキャラクターがエグゼク(企業重役)に出世したら、クグツの特殊技能が封印されてスタイルがエグゼクになり、エグゼクの特殊技能が習得できるようになる。転職できるかどうかはストーリーの流れ次第で、ルーラーが認めるかどうかによる、つまり封印技能の扱い以外はシステム的な縛りはないルールだった。
 しかし、初代ブレカナの転職は異なる。
 ブレカナのPCは「聖痕」の運命に縛られている。PCは、キャラクタークラスに当たるアルカナを表す聖痕を体のどこかに持ち、その運命がPCの身に降りかかってくる。通常のPCは過去・現在・未来の3つの運命を持ち、マローダーはPCのような聖痕を持つ「刻まれし者」から奪うことによって、無数の聖痕を持つ。従って、単にシナリオ上の立場が変わったというだけでは転職できない。ブレカナの「アルカナ」はまさに運命だからだ。
 では、どのようにアルカナを変更するかというと、マローダーを倒した時、奪われていた聖痕が解放されて天へと還っていく。この時に、代わりに自分の運命(アルカナ)を差し出すことで、自分のアルカナと天へと還っていくアルカナを入れ替えるということができる。しかも面白いのが、本来過去・現在・未来という形でアルカナが存在し、それぞれの運命がある以上、転職というと未来のアルカナが入れ替わるようなイメージだが、ここにルール的な縛りがなく、演出的に説明さえできれば如何様にでもなってしまう。
 例えば指輪物語アラゴルンのように、過去を放浪者である「ウェントス」というアルカナにしていたとしても、実は自分が王家の血統ということが分かった時点で、過去を入れ替えてウェントスからコロナ(支配者)に変えてもいい。あるいは例えば現在が魔剣使いの「ディアボロス」というアルカナを持っていたとしても、魔剣を捨てるという選択肢によって、ディアボロスをグラディウス(剣士)のアルカナに入れ替えるというのもありだろう。その際、未来と過去は一切変わらないわけだ。
 あるいはこういう考え方もできる。マローダーから聖痕を一つ受け取ったら、それを未来に配置し、自分の過去のアルカナを捨て、現在のアルカナを過去に、未来のアルカナを現在に移動する、という方法だ。つまり1つずつズレていくという形だ。
 そして最もスタンダードな、未来のアルカナだけを入れ替える、つまり運命を変えるという方法もある。例えばそのままなら王家を継ぐはずだった王女が、王家の血に縛られることをやめ、己の祖国を復興することを諦めて、英雄の介添人として生きることを決心すれば、その時点で未来のコロナ(支配者)の聖痕が消え、ステラ(英雄の介添人)の聖痕が現れるということもあり得るわけだ。
 この辺りが、ストーリーの展開によって何でもありではなく、倒したマローダーが持っていた聖痕に縛られる、というのが非常にゲーム的で私は好きだった。

 もう何度も書いているが、ブレカナはファンタジー世界を舞台にしたビッグゲーム、つまり「ファンタジー世界で、冒険者ではないキャラクターをプレイできる」という意味では非常に希少なゲームであり、中でもクラス制を採っているゲームだとほぼ唯一と言ってもいいゲームであるので、是非ともこれに終わらず展開を続けて欲しいと思っている。