これは貴方の物語


 さて、昨日のエントリはブレイド・オブ・アルカナを知っている人向けの記事だった。今回はブレイド・オブ・アルカナというタイトルをご存知ない方の向けの記事で、何故私はブレイド・オブ・アルカナというゲームが好きなのか、このゲームのどこが好きなのかを語りたいと思う。過去のエントリと内容が被ってしまう部分もあるが、ご容赦願いたい。

 一言で言ってしまえば、このゲームがファンタジーRPGの中で数少ない、鈴吹社長がいうところの「ビッグゲーム」にあたるからである。
 例え話をしよう。今巷のファンタジーを題材にした作品、特になろう小説から翻案されたものなどは、主人公たちが冒険者という立場で始まる作品が多い。しかしそうではない作品、あるいはそれより昔の作品で「主人公はとある国の王子あるいは王女で、邪悪な大臣によって両親を含めた家族を皆殺しにされて国を追われ、いつか両親の仇を討ち、国を取り戻そうと頑張る」などという、非常にスタンダードでオーソドックスな作品があったとする。これを、例えばソード・ワールドRPGで再現できるか、と言われると答えはNoである。
 何故なら、これらのゲームにおいてはPCは必ず「冒険者」だからだ。これらの作品のPC達は、他人の困りごとを解決して報酬を得るという立ち位置にある。自分たちに冒険者として以外のモチベーションがあるということはほとんどない。あるいは、立身出世して王になりたいという農夫がいたとしても、これらのゲームでそれを実現するためには一旦冒険者になるという経過を挟む必要がある。
 しかし、ブレイド・オブ・アルカナのPCは冒険者ではなく、ハイデルランドに暮らす全ての人々である。農夫でも、世間知らずの王女でも、占い師でも、貴族に仕える紋章官でも、誰でもだ。
 先日の「ラクシアライフ」でソード・ワールドにおいてもこれらの職業につくことが可能になったことを評価した。しかし、シナリオはあくまでもPC達が冒険者であることを前提に組まれる。
 ブレイド・オブ・アルカナはそうではなく、運命を刻まれた者であれば、誰でもPCになり得る。そして、私にとって非常に重要なのが、PC自身にとって当事者性が強いシナリオが作れることだ。
 先述の王国の復興を目指す話も、冒険者を主体として作ろうとすると、あくまでも本人が当事者でなく、当事者から依頼されてそれを助けるという立場になりがちである。しかしブレイド・オブ・アルカナならば、PC自身が王国の復興を目指す存在としてシナリオが作れる。その違いが私にとってはなかなかに大きい。
 そして前にも書いたように、ブレイド・オブ・アルカナにおける「アルカナ」は、単なるマルチクラスではない。PC自身の過去と、現在と、未来を表している。セッションに臨むPC達のキャラクターレコードシートを目の前に並べ、全てのPCの過去、現在、そして未来を眺めているだけでも、キャンペーンのアイデアが沸々と湧いてくることも多い。これは、「PCは冒険者である」と立場が決められているゲームでは湧いてこないインスピレーションだ。それが、私がブレイド・オブ・アルカナの好きなところなのだ。