ブレイドオブアルカナのシナリオの話(7)


 殺戮者は自らのアルカナに従って、3発の奇跡を持つ。前述の殺戮者でいえば、クレアータの「戦鬼」、イグニスの「天の火」、エルスの「心友」だ。ここまではPCと同じだが、さらに殺戮者は自分以外の刻まれし者から奪った聖痕の分の奇跡を持つ。

殺戮者にどんな聖痕を持たせるか?

 では、どんな奇跡を持たせるのが適切か。まずは、殺戮者の攻撃方法に見合った奇跡だ。白兵攻撃ならアルドールの「絶対攻撃」、射撃攻撃ならイグニスの「天の火」。魔法攻撃ならエフェクトスの「大破壊」である。これはルナの「不可知」(リアクション不可)とレクスの「制裁」(判定をクリティカルにする)を合わせた効果に等しく、殺戮者にとってはいわば必殺技だ。PCが対抗で奇跡を使われない限り、回避されることなく命中させることができる。これにグラディウスの「死神の手」を乗せればプレイヤーに殺戮者の強大さを感じてもらえるだろう(ただし、必ず単体攻撃になる)。
 注意すべき点として、作成直後のPCを対象にしたシナリオの場合、PC達が使用できる打ち消し系の奇跡の数よりも多く「死神の手」を持たせた場合、それは「PCを殺します」と言っているのと同義である。10D10のダメージは、通常のPCは奇跡なしでは防ぐことができない。
 また、PC達の奇跡を防ぐためにアングルスの「天真」、アダマスの「絶対防御」などを持たせるのも良いが、あまり多く持たせすぎるのは望ましくない。打ち消し系の奇跡をたくさん持たせるのは、加減を誤ってPCを死なせることもなく、また殺戮者もあっさりと殺されることがないという意味で安全牌のように見える。しかし、プレイヤーからみると、自分たちの切り札である奇跡を片っ端から無効化されるのは、見せ場を奪われているのと同じである。無効化するぐらいであれば、一般特技の苦痛耐性を持たせて、高いヒットポイントを徐々に削った方が、やっていることを無駄にされる無力感はない。
 ただし、殺戮者を倒した後に起こる聖痕の解放のことを考えると、苦痛耐性ではDPは1ポイントも回復しない点は注意である。

奇跡「拡大」の注意点

 また、奇跡の中で特に取り扱い注意となるのがアクシスの「拡大」だ。アクションの対象範囲を広げる奇跡である。
 同じFEARのトーキョーN◎VAの「神業」の場合、神業同士は必ず一対一対応であり、どのような神業もそれを打ち消すには別の神業一発で済む。ところがブレカナは違う。同一のエンゲージ、つまり範囲内にPCが4人いて、殺戮者が「制裁」を使った攻撃を「拡大」で広げたとする。「拡大」を「天真」で打ち消す場合には奇跡一発で済むが、攻撃を受けたのちに「再生」で復活させる、あるいは「絶対防御」で防御するなどで防ごうとした場合、一人しか助からない。
 つまり、「拡大」という奇跡一発に対して、それを打ち消すのに必要な奇跡が一発で済まない場合がある。よって、殺戮者が「拡大」を複数持っていたりすると、PC達が持つ奇跡の組み合わせによっては、全滅が不可避になってしまう。
 この拡大という奇跡のさらに厄介なところは、ある種の非対称性があることだ。殺戮者側は徒党を組んで出てくることがあまりなく、仮に取り巻きを全滅させられても、戦闘力という意味ではそれほど痛くない。よって、拡大という奇跡をPC側が持っていても、それほど有効に扱えない。それに対し、PC側はほぼ複数おり、しかもアダマスの防御特技を活かすために近くに集まっていたりすることが多く、「拡大」の効果が致命的な結果を及ぼしてしまうことがある。
 非対称性という意味でいうと、ウェントスの「転移」なども、PC側が持つと自分が攻撃を受けた時にしか有効にならないのに、殺戮者側が持つと、攻撃を受けるのはほぼ殺戮者自身なので非常に有効に扱うことができるなどという差もあったりする。

殺戮者にいくつの聖痕を持たせるか?

 殺戮者には一体いくつの追加奇跡を持たせるべきなのか。ロールアンドロールのサンプルシナリオを見ると、PC3人で+6、PC4人で+8、PC5人で+10となっている。PC1人に対して追加分の奇跡が2発だ。殺戮者自身の奇跡と合わせると、PC3人だと9、4人で11、5人で13ということになる。
 とはいえ、前述のとおり、奇跡についてはいくつ出せるかというだけではなく、何を持たせるかによってもプレイヤーにとってどれだけ脅威になるかが変わってくるので、必ずしも数だけでは語れない。PC達を「うっかり全滅」させないためには、「死神の手」と「拡大」は持たせすぎないこと、「死神の手」の数はPC達の持つ打ち消し系奇跡の最大数より少なくしておくべきだろう。