私は、クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズのベーシック・ルールセットの冒頭に登場する、クレリックのアレーナ・ハラランか、コメント欄で指摘してる人がいるとおり、ドラゴンランスに登場するゴールドムーンが原型だと思う。
ロードス島戦記の大小ニースとフラウスにこだわってる人がいるけれど、水野氏は当時グループSNEに所属していて、そのSNEがドラゴンランスを翻訳していたのだから、ドラゴンランスの存在を知らなかったというのは考えにくい(ドラゴンランスは1984年作品、ロードスは1986年作品)。もちろん、これは大小ニースはゴールドムーンをパクった、と言っているのではなくて、ダンジョンズ&ドラゴンズに登場する「女性のクレリック」というキャラクタークラスの、一つのステロタイプが違う形で現れたのが、ゴールドムーンでありニースだと思う(もちろん、大ニースはロードス島がD&Dだった時代の、六英雄パーティのクレリック役である)。
他の話題でも時折出てくるが、このクレリックというクラスは非常にゲーム的な存在だ。古い時代のTRPGがよく参考にしたとされるファンタジー作品、指輪物語やコナン・ザ・バーバリアン、ストームブリンガーなどにはこのキャラクタークラスに相当する人物がほぼ出てこない。ましてやトピック主が「聖書に出てくる聖女は除外」というなら、その概念はRPG、すなわちTRPGが生まれた後、その周辺作品から生まれた存在でしかありえないと、私は思うのだが。
特殊神聖魔法の話
情報収集判定に関するスモールトークは楽しみだが、今日はそちらの話題ではなく、最初の話題の「特定の神を信仰することによって習得できる特殊呪文」の話をしようと思う。
実は、クラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズには、特定の神を信仰することによって特殊な呪文が使える、という要素は存在しない。クラシック・ダンジョンズアンドドラゴンズは、少なくとも基本ルールセットの範囲内では、特定の背景世界を持っていなかったからだ。
では、公式の背景世界ガセッタではどうなるかというと、少なくとも翻訳されている範囲でいうと、信仰している神が異なることによって、違う呪文が使えるというよりは、例えばガゼッタ2の「デルビッシュ」の場合、信仰の体系そのものが通常のクレリックと異なることによって、呪文系統そのものが元々のクレリックと全然違う、という感じだった。
しかし、ソードワールドは一応基本ルールブックでは汎用ルールということになっていたけれども、この時点ですでに6大神が存在しており「基本の呪文は同じだが、特定の神を信仰することによって、ごく一部だけ特定の呪文が使える」という概念が存在していた。先日紹介した、神性呪文を中心に魔法系統を組み立てているルーンクエストとも違う扱いだ。アリアンロッドも、基本的には同じ考え方を踏襲していると言っていいと思う。
汝は邪悪なり(?)
この特殊呪文は、割とGM泣かせの存在だ。今のゲームはちゃんと考慮されて設計されていることが多いが、昔のゲームはその辺りの配慮が少なかった。例えば、GMがファリスの特殊呪文「センス・イービル」があることを前提にシナリオを組んだのに、マーファのプリーストを選ばれたりすると、その時点で話が詰んでしまう可能性がある。
それは他のキャラクタークラスでも同じじゃないのと思われるかもしれないが、事情が異なるのは、例えば「特定のキャラクタークラスのレベルが足りない」ことが原因なら、レベルを上げれば解決するし、「特定のスキルを習得していない」のが原因なら、該当のスキルを習得すれば解決するのだけれども、「特定の神を信仰していないとその能力を持てない」という話になると、成長しようがどうしようが解決ができない。
なので、本当はこういった能力は戦闘能力に限ったものであるのが望ましいが、それはそれで有用性が高いと、この能力を持っていないと戦力にならないみたいな話になるので、バランスが非常に難しい。
ちなみにこのジレンマは、ことフォーセリアに関してだとクリスタニアで一番顕著になる。このため、私はクリスタニアのキャンペーンを遊ぶ時は、PCに対して「どの神獣のビーストマスターをやるか」を必ず指定するようにしていた。それでもキャラクタークラスは自由に選べるからだ。この柔軟性の高さこそ、クリスタニアの最大の長所だったと思う。