ドラゴンランスの話、続き

 昨日のドラゴンランスの話にちょっと補足しておこう。

 ダンジョンズ&ドラゴンズの背景世界について、ミスタラとドラゴンランスフォーゴトンレルムを同列に書いたが、本当は、特に日本語展開においてはこれらの背景世界は同列に語れるものではない。
 今まで何度か書いてきたように、ダンジョンズアンドドラゴンズというTRPGは、3rdエディション以前はクラシックダンジョンズ&ドラゴンとアドバンス&ドラゴンズという2つの系列に分かれていた。この「クラシックダンジョンズ&ドラゴンズ」というのすら、展開されていた当時この名前で呼ばれていたことはなく、ただダンジョンズ&ドラゴンズと呼ばれていた。クラシックと呼ばれるようになったのは、3rdエディションが出た後、旧来のものと区別するためにつけられた言葉だ。



 さらにややこしいのが、ダンジョンズ&ドラゴンズとアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズという2つのタイトルがあると、あたかもダンジョンズ&ドラゴンズの方が先にあったように感じるけれども──そして日本では実際その通りなのだが──本国では、当初発売されたダンジョン&ドラゴンズが複雑化していくに従い、改めて初心者向けを作り直したのがクラシックダンジョン&ドラゴンズで、当初のタイトルはそのままアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズになっていく。
 そして、それがサードエディションになって統合され、再びダンジョンズ&
ドラゴンズという1つのタイトルになるわけだが、この3rdエディションはアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズの系譜を引いているから複雑だ。なんとなく、Windows95の後継がWindowsMEで、WindowsNTの後継がWindows2000だったのに近しいものを感じる。



 アメリカ本国の展開はこのように複雑だが、日本語版の展開は単純だ。本国で初心者用として再編集されたクラシックダンジョンズ&ドラゴンズが、日本で翻訳された最初のダンジョンズアンドドラゴンズだからだ。そしてその後上級者向けにアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズが発売され、その後出版社を変えて3rdエディションが発売された。つまりクラシックダンジョンズ&ドラゴンズは、日本語版の最後の展開となったマスタールールセットを持って終了というのが日本での展開だ(ただし、後に出たメディアワークス版は、新和版と違いアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズと同じ分冊形態で発売されている)。



 これを踏まえた上でいうと、ミスタラというのはあくまでもクラシックダンジョンズ&ドラゴンズ用の背景世界だ。そしてドラゴンランスフォーゴトンレルム、グレイホークはアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズの背景世界。エベロンについては2つのシリーズが統合された後に追加された世界設定なのでここでは除く。
 つまりクラシックダンジョンズ&ドラゴンズは、背景世界を選ぶことはできず、世界は一つだけだった。そしてアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズは、複数の背景世界の中から選択することができた。しかしこれすら本国の展開の話であって、日本語版では背景世界のガイドブック等が発売されたことはない。従って、新和及びメディアワークスが出版していた頃の公式の背景世界は、ミスタラ以外に存在しなかった。

 昨日の記事を書いたあと、新和から発売されたアドバンスドダンジョンズ&ドラゴンズのサポート雑誌の記事も読み返したが、ドラゴンランスの記事はかなり少ない。当時小説版やゲームブック版のドラゴンランスの翻訳権を別の出版社が持っていたせいなのか、それとも別の事情があったのかわからないが、言及されている範囲は非常に狭い範囲にとどまっている。その意味では、昨日書いた35年前の段階では、たとえ展開が順調にいっていたとしても、ゲームを発売している側からも、小説を発売している側からも、正式なサプリメントが発売される可能性は極めて低かったのかもしれない。
 そして、実際には展開も順調にいっていなかったことが、この35年間の状況を生んだ、というわけだ。ただし現在も、ルールブックと小説やコミック版で出版元が違うという点では、当時と日本語版の状況は変わっていない。

ワールドガイドはもう出ない?

 もう一つ興味深いのが、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のサプリメント展開が旧来の版と異なっていることだ。旧来は、ワールドガイドという形でDMとプレイヤーがともに見れる、世界設定だけを記載したサプリメントが発売されていたが、今回出版がウィザーズ・オブ・ザ・コースト社に戻ってからは、そのようなワールドガイドの類は全く出てきていない。



 逆に、アイテム集や追加のシナリオ集などで少しずつ部分的に、追加のキャラクタークラスや背景世界の設定を載せたサプリメントを連続で出すという形になっている。この方針の違いは、どういった理由によるものなのかはわからない。かつてダンジョンズ&ドラゴンズに公式誌があった頃は、それらで展開方針などが語られていたが、今はそうではない。従って今回のドラゴンランスについても、今後どのような展開を見込んで今回のようなシナリオ集の発売に至ったかは、プレイヤーの視点からは知りようがないことなのだ。
 個人的には、背景世界のワールドガイドを異世界を旅行するトラベルガイドのように読むのが好きだったので、それが出ない方針になったのであれば残念だ。