日本のTRPGは黎明期から、マルチクラス、マルチ能力のキャラクターが珍しくない環境でプレイされてきた……しかしそのマルチクラスには、必ずしもロールプレイの指針が用意されていないケースが少なくない。
例えばソードワールドTRPGで、表題のようなファイター5レベル、ソーサラー5レベル、プリースト5レベルのキャラクターがいたとしたら、それは一体どんなキャラクターなのか。他人からは戦士に見えるのか? 魔法使いに見えるのか? 僧侶に見えるのか? 演じる上では戦士としてロールプレイするべきなのか? それとも魔法使いなのか、僧侶なのか? そういったガイドラインがないのだ。
トーキョーNOVA The Detonation (ログイン・テーブルトークRPGシリーズ)
- 作者: 鈴吹太郎,ファーイーストアミューズメントリサーチ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2003/09/01
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 27回
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先日「スキルの組み合わせという概念の嚆矢となったゲーム」として挙げたトーキョーNOVAは、この疑問に最初に答えを出したゲームでもある。
トーキョーNOVAでは、キャラクターはタロットカードに対応した22のクラスの中から、3つまでクラスを選択できる。そしてその3つの中から
他人から見た自分=ペルソナ
自分自身の本質=キー
自分自身でも意識していない自分=シャドウ
を一つずつ選ぶ。
同じ「フェイト(探偵)、クグツ(企業工作員)、カブトワリ(狙撃手)」というキャラクタークラス(NOVAではスタイル/生き方、と呼ばれる)のキャラクターがいたとしても、ペルソナとキーをどれに設定するかによってまったく違うキャラクターになる。
フェイトがペルソナ、カブトワリがキー、シャドウがクグツなら「他人からは探偵と見られているが、本当は標的を狙撃する狙撃手であり、組織に従属的な一面もある」。
クグツをペルソナ、フェイトをキーにするなら「他人からはサラリーマンに見られているが、実は根は善人で、あまり意識していないが射撃が上手い」となるのだ。
これによって、キャラクター表現は格段にやりやすくなり、そのバリエーションもさらに広がった。
ブレイド・オブ・アルカナ The 3rd Edition (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
- 作者: 鈴吹太郎,F.E.A.R.
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/04/03
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 12回
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トーキョーNOVAの後に発売された「ブレイド・オブ・アルカナ」は、NOVA同様タロットカードに符合した22のクラス(このゲームではアルカナ)のなかから3つを選び、それぞれを「過去」「現在」「未来」に設定する。
コロナ(支配者)=ルナ(盗賊)=ステラ(英雄の介添人)であれば、領主の家に生まれたが盗賊に身を落とし、やがては英雄の行く末を見届ける人間になるキャラクターになるし、ルナ(盗賊)=ステラ(英雄の介添え人)=コロナ(支配者)であれば、物心付いた時には盗賊として荒れた生活を送っていたが、今は英雄と共に旅をする仲間の一人で、いつかは自ら人々の上に立つ支配者となる、というキャラクターである。まったく違うキャラクターであるのはいうまでもない。
トーキョーNOVAとブレイドオブアルカナのキャラクター表現の幅は、ことキャラクタークラスだけに限っても数千通りにも及ぶ。しかし、その幅のゆえに今度はシナリオがやりにくくなった面がある。バリエーションが豊かすぎて、導入や途中の展開を制御しづらくなったのだ。そのために二つのシステムは、後からさまざまな工夫を凝らしてシナリオの展開を制御しやすくしている。
では、アリアンロッドTRPGの場合はどうかというと……。