天羅WARに関する限定状況下における私的考察・1

天羅WAR (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

天羅WAR (ログインテーブルトークRPGシリーズ)


 天羅WARはSRSシステムを採用したTRPGである。しかし、そのゲームシステムは最近発売されたアルシャードSなどとは根本的に異なる部分が多い。以下は天羅特有のシステムに関する私的な考察であるが、条件が極めて限定されるため一般的な(つまり「貴方の」)天羅WARに適用できるとは限らない。

少人数の場合

 天羅WARには基本クラスが4つある。しかし、例えばアルシャードSの基本クラスのような役割分担はされていない。4つのうち3つのクラスは種別が違うだけで特技の効果はほぼ同じであり、全て攻撃系である(ダイナストだけは異なる)。ではどれを選んでも同じかというとさにあらず。実はこの基本クラスの選択がPCの生死を左右することも有り得る。

 天羅WARは攻撃と防御のバランスでいうと、攻撃側に著しく偏ったバランスのゲームである。何故か。攻撃の達成値は「鷹の目」「踏み込み」「呪文詠唱」で気合1点につき1上昇できるのに比べ、防御の達成値を上昇させられる特技はほぼ皆無であり、共通特技「裂帛の気合」を使い気合3点につき1点上げていくしかないからだ。攻撃と防御ではレートが3倍違うのだと言ってもいい。このため、一番やってはいけないのは「敵の先制攻撃を受けて裂帛の気合を使用し、自分の攻撃に使う気合が足りなくなって負ける」というパターンである。
 これを防ぐために重要なのが「突き返し」だ。突き返しとは相手の攻撃判定に対して防御ではなく攻撃判定を使用し、成功させることで相手の攻撃を防ぎつつこちらの攻撃を当てることだ。これはクラスごとの特技を使用することによって可能となる。自分の攻撃手番を使うことなく攻撃ができ、しかも相手の攻撃も無効化できる一石ニ鳥の防御/攻撃手段であり、天羅WARの最大の特徴の一つであると言ってもいいだろう(旧天羅から伝統的に存在する攻撃手段である)。
 さて、ここで最初に述べた「基本クラス」が関わってくる。基本クラス「ファイター」「シューター」「マジシャン」はそれぞれ白兵攻撃、射撃攻撃、魔法攻撃のためのクラスであるが、それぞれ自分が得意とする攻撃手段と同じ種別の攻撃でないと突き返しできる特技がない。ファイターであれば白兵のみ、シューターであれば射撃のみ、マジシャンであれば魔法しか突き返しができないのだ。つまり、敵の攻撃手段が自分のそれと異なった場合、突き返しが発生せず裂帛の気合で耐えるしかなくなるのである。

 PCの人数が少人数だった場合、PCたちが突き返し手段を持たない種別の攻撃で何度も攻撃されればいくら気合があっても間に合わない可能性がある。

一人で複数の種別を「突き返し」できるか?

 もし、一人のPCが複数の種別の攻撃を「突き返し」できれば、前述のようなジリ貧の状況に追い込まれる可能性はかなり低くなる。
 もちろん、一人で複数の基本クラスを持っていればそれぞれの攻撃種別に対し対応が可能だが、現実的ではない。というのは、基本クラスには本当に最低限の特技しかなく、いわゆる設定もまったく存在しないため、PCの肉付けが不可能になってしまうからだ。一人のPCで何種類のクラスを習得できるかはハウスルールによって異なるが、基本クラス一つと個性付けのためにもう一つ別のクラスを習得するとすると、基本クラス2種でクラスが4つ必要になる。これはレギュレーションによっては禁止される組み合わせだし、例え許されたとしても双方に経験点を割り振ることになるため相当な器用貧乏になる。天羅で魔法戦士は不可能ではないが、相当にハードルが高いといっていいだろう。
 では、基本クラス以外に、しかも自分の得意な攻撃種別以外の攻撃に対し突き返しを行えるクラスはあるか? ある。「サムライ」と「ガンスリンガー」がそれだ(実はあと一つあるが詳しくは後述する)。天羅WARの表紙はサムライとロケットレンジャーが飾っているが、本当の主人公はサムライとガンスリンガーなのだ(テラ・ザ・ガンスリンガーの時代から、タイトルどおりテラ世界の主人公は「ガンスリンガー」だった)。
 サムライの「閃角」、そしてガンスリンガーの「クイックドロウ」。これらはそれぞれ「射撃攻撃に対して白兵攻撃でリアクション」「白兵攻撃に対して射撃攻撃でリアクション」が取れる特技である。ただリアクションが取れるというだけでなく、自分の得意な攻撃種別でのリアクションが許されることになるので、鷹の目や踏み込みで達成値を上げることも、対決に勝てば差分値ダメージの特技を使用することすらも可能だ。
 ところでこの二つ、効果が微妙に異なっている。サムライの「閃角」は射程が視界であるため例えオメガライフルの狙撃を受けても反撃ができ、しかも使用する武器の制限もない。これに対しガンスリンガーの「クイックドロウ」は武器がシングルアクションの銃に限られてしまう(この時点で天羅系の銃はほとんど使えない)。ならばサムライの方が上位互換かというとそうでもなく、サムライ自体にクラスの重複制限などがあるため誰でも取れるというわけに行かなくなる。
 ここが天羅WARの面白いところで、例えば天羅側でいえば金剛機やヨロイ乗り、テラ側でいえばロケットレンジャーのような派手なクラスはこれらの制限のため「閃角」も「クイックドロウ」も非常に生かしづらい。つまり、多様な状況に対応できるようにサムライやガンスリンガーを選ぶか、対応できる状況は限られるがその中で性能を特化したクラスを取るかという選択を迫られるわけだ。

 最後に「後述する」と述べたもう一つのクラスを挙げておこう。「流派:是ダイ(木偏に帝の字)流」である。これはスターウォーズジェダイがモデルになっているといわれる流派だけあって、他のクラスにはない強力な特技を多く持つ。その代表が「輝臨陣」(クウ=ツアラ)である。この特技はなんと、白兵、射撃、魔法全ての攻撃に対して突き返しが行える。「ロストヘブン」までの環境では、魔法攻撃に魔法攻撃以外で突き返しが行えるのはこの特技しかない。極めて強力な特技であるが、それだけに条件も厳しい。
 一番厳しいのは、習得レベルが6と高いことだろう。ゼダイ流の習得には「クラス/ル=ティラエ」が必須となるため、レベル1だけ取ったとしても合計レベル7、それだけで初期作成PCの限界レベルになってしまう(当然この状態では差分値特技どころか気合使用のための特技も習得できず、裂帛の気合を使うしかなくなるので本末転倒である)。

 よって、ゼダイ流を使って複数種別の攻撃に対応するのは、初期状態からいくつかレベルが上がってからということになるだろう。