押井といいこの人といい

ゲームデザイナー「孕ませ孕ませと悪乗りしてたあの作者は、僕らのライターチームではまじに嫌がってた」


 表題は割とどうでもいいんだけど、遡っていったらいくつか気になるツイートがあった。

マジレスすると、この中で原作もアニメも共に見てるのって、市川さんだけじゃないかしらん。僕が共に見てないって、ホントよ。

ボクはそもそもあの手のオタク丸出し系って、全部嫌いなんですよ。「オタク」という言葉自体に怨念をもってる世代ですので。

 原作も読まないでアニメも見ないでメディアミックス展開のゲーム作ってるんだ。それって業界の標準なの?

 ハルヒ長門が人質だったから我慢しただけですよ。全く。

 原作も読まずにアニメも見てない人が、作者でもないのに作中の登場人物を「人質に取られる」なんてどの口が言うんだろう。人質も何も無関係でしょ? そこまで嫌なら、というより嫌なことを表明するくらいなら仕事受けなければいいだけの話。「ゲーム作りを楽しくしたい」とか言ってるけど「次それ言ったら、マジ殺す」なんて言葉が飛び交う職場、楽しくなるとは到底思えない。メディアミックスの裏側にはこんな人間もいる(もちろん元の作品を愛してるちゃんとした人もいるんだろうけど)ってことか。偏見かもしれないけど、角川系のメディアミックスってこういうの多い気がするんだよね。規模が大きいからなのかなあ。
 艦これにはこういう類の人が関わってこないといいんだけど、ハゲタカは金の匂いがするところに寄ってくるというし、まぁ、無理だよね……。

古い本を今さらの話

【押井守】「めぞん一刻って五代が響子さん押し倒せばすぐ終わる話じゃん。何やってんの」


 これも表題のつけ方が正確じゃない。実際押井は「宮崎駿がそう言った」という言い方をしている。卑怯だわ。
 実はリンク元には書かれていないのだが、これは「日本人は現状を維持するためのコミュニケーションはするが異文化と接触するコミュニケーションはしない」という主旨の発言のようだ。
 そうは言うけど、押井自身がかつて自分が関わった作品の作者やその価値観を、高橋さんといいゆうきさんといい出渕さんといい、こうして盛大に否定した上に、勝手に新作作ろうっていうのにろくに連絡も取ってないじゃん? 士郎さんの作品について無断であれこれ語ったり宮崎監督のことをもう老人だとか言ってるわけじゃん? 相手の価値観に対して何ら変革していない、つまり、全然コミュニケーションできてないじゃん。

ようするに未熟なのだ。未熟であるがゆえに生起するドラマはドラマとは呼ばない。ドラマとは「価値観の相克」のことだ。俺はあんたが好きだ。あんたも俺が好きだ。でも、なぜか二人は一緒になれない。これならドラマたりえる。だから、好きだということを言わないで永遠に続くドラマはドラマとはいえないのだ


 この人絶対めぞん一刻読んでないと思うんだけど。裕作は物語の相当早い段階で響子に好きだと言っている。*1裕作は酔ってたけど響子ははっきり聞いているし、認識もしている。「好きです」「私もです」で終わる話なら、あそこで物語は終わっている。だけど響子はそれに対して「裕作と口を利かない」という反応をした。それは、響子は未亡人であるという自分に負い目を感じていて、裕作はその負い目に遠慮しているから。それこそが「価値観の相克」じゃないの? 私の読み方も相当表層的だと思うけど、二人の価値観の違いが作品のテーマの一つなのははっきりわかるよ?
 もう一つ言わせてもらうと「未熟だから相手に好きといえないから続くドラマはドラマじゃない」っていうなら「惚れた相手に『好きだ』と言えないからといって代償行為で自宅でバセットハウンドを飼い、再会してもやっぱり好きと言わない」イノセンスのバトーは相当優柔不断で未熟だと思うんだけど、原作に微塵もないあの恋愛要素のどこにドラマがあったの。(これまた原作無視で)幼女の義体に素子入れるくらいなら、そのまま押し倒せばそこで話は終わりだったんじゃない?
 前にドワンゴ会長の言葉を引用してきた時にも思ったけど、多分押井の言葉は誰かの言葉を借りてきただけなんだろうな。だからこれだけ盛大なブーメランになってるのに自分で気付いてない。彼の言葉をありがたがって聞いてしまう周りの人間にも問題はあるが。監督なら作品で語れよと言いたいけど、その肝心の作品がアレだからな……。
 ヘッドギアに参加した時のエピソード見れば判るように、彼は自分のオリジナル作品が全っ然売れなくて干されて、食い扶持を稼ぐために他人の企画に乗って、自分のカラーはできるだけ抑えて世間の流行に合わせてくださいねって言われて、仕方なく作品作ってるくらいの状況が一番面白い作品を作れていた。そういう意味じゃ、変に売れて持ち上げられてしまった時点で命運は尽きていたのかもしれない。偉い偉いと持ち上げている人間こそが、一番彼の才能を殺しているってのはどうにも皮肉な構図だけれど。
 

*1:例えばワイド版第1巻182ページなど。