DQWといえば……


 こういう「どこかへ出かけてみてDQWやってみました」系の動画は割と好き。もっと増えろ。

これは評価できる

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 今回のドワンゴの対応は評価できる。迅速で適切だと思う。

だから違うって……

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 「これだからマスコミは酷い」とか「ネットは酷い」とかみたいなことを言ってる人は見当違い。一人だけほぼ正しいことを言ってる人がいる。後はコメント欄で適切な指摘がされているのでそこは少し安心した。

 高橋留美子ビューティフルドリーマーに激怒した」って話がなぜ広まったかっていうと、押井監督自身がそれを吹聴してるからだ。


「記憶に残ってるのは『DUNE』だけ」「『007』にはがっかり」押井守監督が振り返る“2021年のエンタメ”(文春オンライン) - Yahoo!ニュース

「私は『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』(84)で、“永遠の日常”を終わらせたかった。決定的な作品を作れば終わらせることができるかもしれないと思ったんだよ。でも、結果としては原作者の高橋留美子さんに嫌われただけ。いや、嫌われたどころじゃなく、もう忌み嫌われたからね(笑)。まあ、一介の雇われ監督がそんなことできるはずもないんだけど、あの頃は私も若かったから(笑)」


 「あの頃は私も若かった」というが、この人はその後もずっと姿勢を変えなかった。やりすぎて総スカンを食ったのが実写版パトレイバーだ。
 前にも書いたけど、この発言の厄介なところは「自分は高橋留美子の作品が嫌いだ」という言い方をせず、「高橋留美子が私を嫌っている」という相手を下げる言い方をするところだ。そりゃ雑誌だってネット記事だって当事者の片方がそう言うなら記事にもするだろう。で、実際酷いことはしてるんで、パトレイバーの時には本当に相手を怒らせている。前にも取り上げたが再掲する。


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(実写化にあたって)プロセスは踏んでいただきたかった。反対するわけじゃないんだけど、なんでプロセスを飛ばすのかなって。面倒な事とか、いろいろあるのはわかるけど、プロセスを踏んでほしかったです。


 注目すべき点は、ここでも怒らせている原因はストーリーなんかではなく、実写化にあたり取るべきプロセスを飛ばしたことの方である点だ。
 そしてこれに関しては椎名氏もよくない。高橋留美子さんについての世間の風評を払拭したかったのかもしれないが、露骨に推察できるような書き方をするなら押井氏の否──高橋留美子さんが怒っていないのに怒っているという嘘をインタビューなど各所で吹聴していること──を指摘するべきだった。もし立場上それができないのなら、推察できるような書き方をすべきではなかった。
 結果として「ネットで嘘が広まるのは怖いねー」と言ってる人たちが「この話は根も葉もない噂だ」という「嘘」を広める結果になっている。上記のようにはっきりとしたソースがあるにもかかわらずだ。この件に関してはネットもマスコミも悪くない。原因は100%押井氏にある。

ビューティフルドリーマーの話

 ちなみに、もう書く機会もないと思うのでビューティフル・ドリーマーの話をしよう。原作は「永遠の日常」が続くなんてことはなく、普通に最終回を迎えている。
 その最終回に繋がる、運命製造管理局の因幡にまつわる重要なエピソードがある。

別に……
ただ、今のまんまみんながかわらないといいな……なんておもってたんだけど……
あたしが間違ってたわ……


うる星やつら」31巻170ページ「明日へもういっちょ」より


 これはラムの科白ではない。しのぶの科白である。日常を続けたいという思いを吐露したのはラムではなくしのぶだ。しかし、ビューティフルドリーマーでは日常を続けたいと願ったのは何故かラムである。

うち、ダーリンが好きなんだもん
ダーリンと、お母さまやお父さまやテンちゃんや終太郎やメガネたちと、ずーっとずーっと楽しく暮らしていきたいっちゃ
それがうちの夢だっちゃ


 因幡のエピソードはビューティフル・ドリーマーの2年後なので、このエピソードを踏まえて映画の脚本を書くことはできない。とはいえ、原作のラムはあたると結ばれたいという目的が首尾一貫しており、こんなセリフを言うとは思えない。因幡のエピソードに登場する「未来」は、なんと原作2巻の「系図」というエピソードに伏線が張られており、ラムはあたると結ばれたい、しのぶは日常を続けたいというのは、原作の集大成的なプロットである。
 ちなみに、同じ場面のしのぶの科白はこうだ。

あたしもうダメ!
毎晩毎晩バカ騒ぎ、挙句の果てが徹夜で後始末でしょ?
年頃の娘が連日泊まり込みだなんて、お母さん電話でカンカンよ
もうイヤッ!


 見比べればわかるとおり、キャラクターへの理解が浅いせいで見当違いのキャラに見当違いのことを言わせている。要するに「原作を軽視している」のだ。

 押井氏の場合、この「原作を軽視する姿勢」はほとんどの作品において変わらない。攻殻機動隊で原作に出てこない格言を垂れ流し、鉄人28号にケルベロスサーガの設定を持ち込み、009でゼロゼロナンバーを軒並み殺そうとし、ルパンをただの幻覚にしようとする。挙句の果てが他のヘッドギアメンバーに無断での実写化だ。
 押井氏が原作者を怒らせたというのは、これらをすべて踏まえた上で、なおかつ押井氏自身の口から出た発言だ。相手を怒らせるようなことをしたという自覚がありながら、謝罪も反省もなく、むしろさらに相手の評判を下げるようなことを口にする。これをネットやマスコミの捏造と言ってしまうのは、言動の責任をうやむやにする事実誤認だと私は思う。