うーん……?

「シャドウ・オブ・モルドール」のプレイレポートを掲載。敵それぞれが個性を持つほどに作り込まれた指輪物語の世界に飛び込もう


 これ、たぶん原語版じゃなくて翻訳がまずいんじゃないかなぁ……。英語圏には指輪物語の熱狂的なファンがいるから設定は徹底的に洗うはずで(映画版ロードオブザリングスの監督もそうしていた)、用語のチョイスがまずいのは日本語版の問題だと思うんだけど……。

 まず、レンジャーってRangerのことだよね? これは指輪物語の小説版では「野伏」と訳されているはず。野伏を「レンジャー」とカタカナで書かれると、原作を知っている身としてはかなり違和感がある。なっちの翻訳で馳夫が「ストライダー」にされたような感じ。「黒門を守護する」とも書かれているので、まるで森林レンジャーの親戚みたいだ。実際原作の野伏は流浪のドゥーネダインの総称で、アラゴルンも野伏だし、多分主人公もそうなんだろう。
 次に「幽鬼」(Wraith)。これ意図的なのか、それとも何も考えてないのかわからないんだけど、普通指輪物語で「幽鬼」って言ったら「指輪の力に囚われた九人の人間の王たち」、つまりナズグルのことだよねぇ。ナズグルがサウロンを滅ぼすのに力を貸すっておかしくないか? これがもし別の存在のことを指しているのなら幽鬼という訳語をあてていいのかって話だし、指輪の幽鬼そのもののことを指しているのであれば──それこそがこの作品の伏線ってこと? 一つの指輪に支配されていながらサウロンに叛意を抱くことができるとは到底思えないんだけど、主人公の「相手を洗脳して支配する能力」って指輪の派生っぽくもあるし、サウロンの指示でナズグルの一人が主人公を利用してるとか? まぁ、原文がWraithで小説もWraithを幽鬼って訳してるんだからしょうがないだろ! と言われればそこまでなのだが。
 あと、「サウロンの黒の手」っていうネーミングもどうなのかなぁ。「黒の乗り手」とすごい紛らわしい。「乗り手」はRiderだけど「黒の手」っていうのはどう考えてもRiderではないだろうから、もうちょっと違う響きの訳語を当てた方がいいんじゃないだろうか。「この作品はモルドールを舞台にしてて敵はサウロンだけどナズグルは一切出てこないから紛らわしくないんだ!」っていうなら別に構わないが──ゲーム的には凄く萎えるけど(ナズグルの設定ってトールキンじゃなくて権利を取得したICEが独自に作ったものだから、他社は使いづらいのか?)。
 

 他の作品だったらこんなにあれこれ細かいことを気にしたりしないんだけど、こと指輪物語だけは、映画でなっちに酷い目に遭わされてから、どうにもナーバスになってしまう。