これは正直意外だった


 そういえば、先日紹介した「想像力の帝国」の一節で意外だった部分がある。D&DをAD&Dに改訂したのはアーネソンに版権料を払わないようにするためだ、というくだりだ。本書167〜172ページがそれにあたる。250ページ欄外でもそれが示唆されている。
 いかにもアメリカらしい、というべきだろうか。これまでに日本で版上げしたゲームの中で「前作の著作権者に報酬を払いたくないから」という理由で版上げしたゲームは寡聞にして知らないし、*1少なくとも訴訟騒ぎは起きていないはずだ。ソードワールド2.0に偽名で関わった前作のデザイナーも、今はもう堂々と前作と同じ名前で制作に関与している。日本がアメリカほどの訴訟社会ではないから、というのももちろんあるだろうが、日本のTRPGは著作権料の支払いで訴訟騒ぎを起こすほどの市場が築けなかったからだ、とも言える。コンピュータゲームであれば、訴訟は珍しいものではない。
 しかし、だとしたらなんという運命の皮肉か、怪我の功名か。AD&Dと区別するために再編纂されたCD&Dは、レベル帯ごとに横に輪切りされた構造になっており、AD&Dより遥かにとっつきやすかった。日本人が初めて触れるTRPGがAD&Dだったなら、その市場は今よりも遥かに狭かったかもしれない。何しろ、日本で翻訳されたAD&Dのセカンドエディションは、本国でも失敗といわれるほど売れなかったのだから。


 ちなみに、ガイギャックスがその後制作した「デンジャラス・ミサス」シリーズだが、ホビージャパンの翻訳予定に入っていたことがある。が、これもまた翻訳されなくてよかったのかもしれない。何しろ、うろ覚えだが当時の売り文句は「キャラクター作成でいとこを100人作れる」だったから……。

*1:一つだけそれっぽいゲームがなくもないが……。ちなみにソードワールドではない。