最後のブラウン管

 先日のエントリでチラッと書いた、ソニーのCRTディスプレイの話である。なお、これを購入した時点では、既に少年ではない(笑)。給料で買ったものだし……。

 初任給でNECのノートPC「PC-9821Aile」を買ってから、しばらくしてのこと。自室でビデオ再生用に購入したテレビデオが壊れ、私は新しい(ビデオ再生機としての)テレビを買う必要に迫られた。テレビデオを買い直すつもりはさらさらなかった──ビデオ部分が壊れただけで、無傷のテレビ部分も実質使えなくなるに等しいと学んだからだ。
 では、普通のテレビが欲しかったかというと、そうでもない。当時のノートPCの液晶は今より低品質だったので、必要に応じて外部ディスプレイに接続して使いたかった。でもテレビとディスプレイを二つ部屋に置きたくはない。となると、現在の視点で見ると選択肢は二つある。PC接続可能なテレビを買うか、ビデオ接続可能なPCディスプレイを買うか、である。しかし、今でこそHDMI端子を持つノートPCは珍しくないし、DVI端子を持つテレビも珍しくないが、当時はD-SUB15ピンくらいしか映像の外部出力端子はなく、それを持つテレビはほとんどなかった。
 必然、選択肢はスキャンコンバーターを介するか、ビデオ端子付きのディスプレイを買うかどちらか。ただ、今のように小型のスキャンコンバーターはほとんど存在しなかった。
 そんな時、この製品に出会った。


高解像度トリニトロン管、デジタルスキャンコンバーター搭載(中略)17型トリニトロンマルチスキャンディスプレイ



 スキャンコンバーターを内蔵し、スピーカーも外部接続する必要がない。筐体は当時PCG-505からVaioのブランドカラーになりつつあった紫で、デザインも悪くない。即購入を決め、随分長いこと使い倒させてもらった。ノートPCの性能はどんどん上がっていったので、ノートPCの外部ディスプレイとして使うという用途については思ったより出番がなかったが、普通にS-Video端子出力の映像の発色が素晴らしかった。また、ディスプレイとして使った時、解像度を下げても液晶のようにボケることがないのは非常に便利だった。
 最後は、故障対応期間も過ぎ、電源がおかしくなったところで買い換えざるを得なかったが、その時点でも画面そのものは正常だった。後継機は一機種しかなく、さすがにもうCRTディスプレイは取り回しが悪すぎるということで液晶ディスプレイに買い換えたが……今もなお、思い入れのある品だ。まだソニーに夢があった頃の逸品である。