コットンシリーズって12作もあったんか!? そのことに一番驚きだよ……。
スライムは強いか、弱いか?
昨日のエントリを書いていて、思い出したことを一つ。
「スライムは強いか、弱いか?」
というと、ある程度知っている人ならこう言うかもしれない。「本当は強いモンスターなのに、ドラクエやドルアーガで弱いモンスターとして出てきたから弱いと思われてる、っていう話だろう。知っているよ」と。
今日の話は逆である。「果たして『スライムは本当は弱くない』のか?」だ。
スライム実は弱くない説を唱えている人の代表はこの人だろう。
『ウィザードリィ』以前にも、1974年発売のTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』でスライムは登場していたのですが、今のような弱いキャラではなく、手強いキャラとして描かれていました。
遠藤氏がダンジョンズアンドドラゴンズをどれだけプレイしていたかは寡聞にして知らないが、これを読んだうえでD&Dを直接知らない人は「本当はスライムは強いんだ~」と思うだろう。
しかし、私の手元にあるD&Dの原典に一番近いバージョン、クラシックダンジョンズアンドドラゴンズのグリーンスライムはヒットダイス2(レベル2)のモンスターである。ヒットダイス2は、ウルフ(野生の狼)より低い。狼より弱いモンスターである。「手強い」という言葉には主観も混じるが「狼より弱い」モンスターを、PCたちが「強敵」と判断するだろうか。しかも、グリーンスライムの出現数は常に1で、狼のように群れることもない。
ただ、特殊能力は厄介だ。その点、記事本文の「倒しにくいモンスター」というのは、意識したかどうかわからないが、正確な表現に近い。炎か冷気でしか傷つかず、犠牲者に張り付くと同化してグリーンスライムにしてしまう。
「強敵じゃないか!」と思うかもしれないが、魔法の武器を持っていないと傷つけられないクリーチャーに比べれば、恐らくPCがほぼ持っていると思われる松明で倒せるわけだから、脅威すぎるということはない。
海外でも日本版スライムは「日本らしい多様性だよね」と受け入れられはしますが、やはりあちらのスライムのイメージはドロドロして毒があって剣で斬れない、中に取り込まれて窒息する……なんですよ。しっかり棲み分けされています。
ここに挙げられている特徴の中で、CD&Dのスライムに通じるのは「剣で斬れない」だけで、毒も持っていないし中に取り込まれて窒息することもない。しかし、遠藤氏ははっきりと「私も『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に関する文献を海外から取り寄せて読んだ時にその存在を知り」と述べているので、原典はD&D以外の作品ではありえない。
そこでふと思ったことが一つ。
もしかして、同系統のモンスターであるゼラチナスキューブやオーカージェリーの特徴を混ぜて話している……?
CD&Dエンサイクロペディア・モンスターズにはこれらのモンスターはいないが、D&D3rdのモンスターマニュアルに登場するこれらのモンスターには、確かに類似する特徴を持つものがいる(毒がどこから出てきたかわからないが)。言われてみれば、ドルアーガのスライムがカラフルなのも、ブラックプディングやグレイウーズなどをオマージュしてそうした、と見えなくもない。
ただ、私の中ではこれらは同系統だが別種のモンスターなので、なんだか「D&Dのゴブリンは傷が常時再生し炎か酸でしか傷つかない強敵」と言われているような気分になるのだが……。
最初のモンスターが……
とはいえ、遊んでいた当時は遠藤氏がこんなことを言っているとは知らなかった(そもそも発言自体が後年?)ので、そこに違和感は覚えなかった。私が違和感を覚えていたのは別の部分である。
実は上記の記事にも遠藤氏の発言ではなく地の文で書かれているが、CD&Dのグリーン・スライムはモンスターであると同時にトラップとしての意味合いもある(だからこそ「強い」と言われると疑問が浮かぶのだが)。不意を突いて犠牲者の頭上から襲い掛かり、同化するというのが脅威の主たるものであって、普通に目の前で対峙したら決して強敵ではない。だから、ウィザードリィでは雑魚だったというのも理解できる。ゲームシステム上、罠としての側面を出せないからだ(小説という媒体なら、「風よ龍に届いているか」の「ゼノ」はスライムのような生態だが滅茶苦茶強敵に描かれていた)。
そして、CD&Dのグリーンスライムは、洞窟や廃墟に生息するものである。洞窟や廃墟にいるから頭上から襲い掛かれるのだ。だから、ドルアーガのスライムはすんなり受け入れられた。動いた瞬間に触れると死ぬのも、トラップとしての側面を表しているようで納得感がある。
「え?」と思ったのはハイドライド、そしてドラクエのスライムである。何故なら、これらの作品のスライムは「草原のど真ん中にいきなり出てくる」からだ。元々緑色だったスライムがこれらでは青いのも、草原と混じって見づらいからだろう。そもそも、平原のど真ん中に棲息できるような生態ではないのだ。
とはいえ、ドラクエの最初のモンスターがスライムである理由は、なんとなくわかる。推測だが、人間型の何かを倒させたくなかったのではないだろうか。印象だけでいうが、FFに比べてDQは人間型の敵が少なく、しかも序盤には出てこないイメージがある(FFは最初の敵がゴブリンだ)。作品が意識しているユーザー層の年齢に配慮したのではないだろうか。単なる推測だが……。
そして不思議なのはハイドライドである。1だけではなく3でもスライム型のモンスターが最初の敵である。ドラクエのようにシンボリックな存在という訳でもないのに、何故1も3も不定形のモンスターを最初の敵に据えたのか……何か理由があったのだろうか。