久しぶりにツッコミ


 久しぶり(?)のツッコミエントリ。

 まず、皆さんはこのタイトルを見てどう思うだろう。「異世界冒険ガイド きみならどうする!? はじめての冒険」だ。サブタイトルまで含めて、タイトルはこれですべてである。ちなみに、表紙にも裏表紙にも帯にも、特定のTRPGのタイトル名は記載されておらず、前書きの冒頭には「本書は、オーソドックスな“剣と魔法のファンタジー”世界を冒険する際の、『こんなときどうしたらいいのかな?』に答えていく本」とある。
 ところが、この本の進行役となる(読者自身を除く)3人のキャラクターのうち一人は「ドワーフ密偵戦士」である。「密偵戦士」という言葉、馴染みがあるだろうか。密偵というのは、いわゆるファンタジーTRPGのシーフだと想像がつくが、多くのゲームでシーフはその特技を生かすために軽装である必要があり、重武装を求められる戦士と相性がいいゲームは決して多くない。私が思いつくゲームは一つだけだ。
 しかもドワーフである。ドワーフがシーフ向きというゲームも限られる。シーフに必要な敏捷性にマイナス補正がつくゲームもある。この時点であれっと思うかもしれないが、実は前書きの最後に「なお、本書は『ソードワールド2.5』というTRPGをベースに執筆されています」とさらっと書かれているのだ。


 しかしこの話は「じゃあサブタイトルにソードワールド2.5ガイドブックって入れろよ!」というオチでは終わらない。そもそもソードワールド2.5を対象としているのであれば、メインタイトルそのものに違和感を覚えないだろうか。
 「異世界冒険ガイド」である。
 Wikipediaにもあるとおり、異世界という言葉には元々「我々のいる世界と異なる世界」という意味もあるが、現在主に使われているのは「我々のいる世界から異なる世界に移動し、そこで物語が進行するという世界観」としての意味合いである。なろう系小説が代表的だが、主人公などが現代地球から異なる世界に何らかの事情で転生したりする世界観だ。
 ソードワールドはどうか。確かに我々の世界とは異なる世界だが、PCたちにとってそこは生まれ育った世界であり、異世界でも何でもない。アリアンロッドは流行を貪欲に取り込み、追加ルールで地球から移動した人間を「アーシアン」という別種族として規定した。だがソードワールドは、そんなルール絶対に作らないだろう。トロイカ体制の人が認めると思えない。


 また、この本全体が、ソードワールド2.5しか想定していない内容になっているなら「この本おかしいよ」で終わる話だが、そうではない。ちゃんと他のゲームに配慮された、評価すべき内容になっている部分も所々にある。むしろソードワールド2.5に合わないんじゃないかという記述すらある。それでいて、明らかにソードワールド2.5しか考慮していない個所もある。
 なので、全体から受ける印象としては、かなりちぐはぐな感じなのだ。往年の○○コレクションシリーズのように、意図的に中立の立場を取ろうとする内容にはなっていないものの、ソードワールド寄りだったり、中立的だったり、色々な記述が交じり合った不思議な本である。


 さて次は、何故上のような印象を受けたのか、個別に書いていきたいと思う。長くなりそうなので次回へ続く。